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白いページの中に-2

 話し掛けなければよかったかもしれない。

 二年になってから会うこともなかった男子と、たまたま見掛けただけの理由で声を掛けても話をする内容なんてある訳がなかった。どうして、そんなことしたんだろう。そう思いながら、ただ、ブランコが懐かしかっただけかもしれない。

 ブランコは、キィキィ、音を立てている。

 でも、それだけでも、ない。ブランコと学生服の少年とがミスマッチで目を惹かれた。きっと、そう。そして、それが顔見知りだった、だけ?


 「俺……、何にもしてないんだ」

「え?」

急に耳に届いた言葉に正確に反応できなかった。

「俺、何にもしてないんだ」

「え?何のこと?」

「聞いてくれるか?」

泣きそうな顔でそう呟いた石川君に、あたしは無意識のうちに頷いた。


            *


 ぽつりぽつりと話し出した彼の言葉は、はっきりと聞き取りにくかった。

「俺……警察に、つれていかれたんだ」

あたしの耳は、彼の言葉を理解できなかった。

「え?、なに?」

「……俺、警察に取り調べ受けてるんだ」

「なに?それ?何かしたの?」

「何もしちゃいないよ。…なのに、あいつら……」


 一週間ほど前に、突然警察の人が石川君を訪ねてきた。そして、半年前の事件を知っているかと訊いてきた。

「俺、知ってるよ、って言ったんだ。ほら、夕雲町のマンションでおばあさんが殺された事件。すぐ近くだからさ、結構話題になったんだ」

「…半年前?」

「そうさ。それで、知ってる、って言ったら、話を聞きたいからって警察に連れて行かれたんだ」

「連れて行かれた?」

「あぁ。一応、参考人って言ってたけどさ……、あいつら……、俺のこと犯人だと思ってる」

「え?」


 無言で連行した警察は、そのまま無味乾燥な取調室に連れ込んだ。それから、ゆっくりと、温和な口調で語り掛けてきた。

「半年前の○月○日三時頃、君はどこにいたか、覚えているかい?」

 「俺、はっきり覚えてない、って言ったんだ」

火曜日だって言われて、去年の時間割思い出して、それで、六時間目はなかったって言ったんだ。じゃあどこにいたんだ、って言われて、よく覚えてないって言ったら、夕雲町の公園にいなかったか、って訊かれたんだ。で、確か近藤と一緒だったような気がするって答えたら、その通りだって言われたんだ。

 「あいつら、もうそんなことは調べてあったんだ。ぞっとしたよ、なんか、何でもお見通しっていう感じでさ」

それで、二人で公園にいたんだな、って念を押されて、そうだって答えたんだ。そしたら、急に雰囲気が変わったんだ。

「その後、君たちは、マンションに忍び込んだね?」

そんなこと、してないって言ったんだ。だけど、あいつら、重い口調で迫ってきたんだ。

「忍び込んで盗みをしているところを見つかって、おばあさんを殺したんだろう?」


            *


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