白いページの中に-最終話
突然、彼が二人の腕を振り払った。
駆け出す彼と、不意を突かれてよろめく二人。彼は公園を抜け出して走り去った。
二人は追った。まるで、犯人を追うかのように、緊迫した雰囲気で。
あたしも駆け出した、彼を追って。
助けることなんてできない、救うことなんてできる訳がない。
それでも、ひと言でも、言いたかった、彼は無実だと。
あたしは、二人の刑事を追っていた。
通りに飛び出すと、自動車が駆け抜けた。
一瞬怯んで、立ち止まってしまったあたしの目に映ったのは、遠くへ駆ける彼と、その後ろを走る刑事。
あたしも、追った。
踏み切りの警笛が鳴る。
彼は、線路に向かって駆けていく。
踏み切りに差し掛かる。
一瞬、ためらいながら、振り返る。
刑事は追っている。
彼は、遮断機をくぐった。
列車が悲鳴を上げて停止した。
あたしの叫び声は、その音にかき消されて霧散した。
一瞬目に飛び込んだ空は、真っ白に輝いていた。
* * *
風は、穏やかに、カーテンを翻している。
やすらかな眠りを誘うかのように。
立ち上がって窓に身を預ける。
高台のマンションの眼下に広がる風景は、強い陽射しの下で、鮮烈な輝きを湛え、シルエットを失って淡く浮かび上がる。
見慣れた風景が、いつか見た光景に見えてしまう。
そんな気分で深幸は街を眺めた、頬を伝う涙にも気づかず。




