癒し
「委員長~ 久しぶりにお店に遊びに来てくれたと思ったらぁぁ彼氏の紹介ですか? あーあ! ダンちゃん寂しいなぁ~ まぁ……お似合いですけどねぇ……そこが又悔しいと言うか何というかぁ~ だってぇー委員長ってえ女の趣味最悪じゃないですかぁ~ 付き合う子付き合う子最悪なのばっかし選んでて、あればマジでダメですってぇ~ 委員長の幼馴染みちゃんともそこに関しては意気投合しちゃってますもんねぇ~ だってぇー 最後に付き合ってた子なんてぇ!!!!」
突然、歩の目の前でダンが白眼で倒れた。ジャックがダンの側頭部を手拳で打ったのだが、あまりの速さに歩の眼では追いつけなかったらしく、歩のクリクリ黒目が驚き過ぎてうろうろしている。いきなり目の前の人間が白眼で倒れているのだから、びっくりもするだろう。
「ジャックさん……一体何があったのですか? 僕、何も見えなかったです」
「喋りまくってたから、疲れたんだろう。大丈夫だ直ぐに起こしてやるから。こちらも聞きたい事があるから、寝てられると困るからな。ダン起きろ!」
肩を一つ叩くと、何故か目がパチリと開いた。まるで子供の時に見た、姉の起き上がり人形を思い出した。
「いってえよぉ~ 委員長」
「煩い! 今日はお前に頼みたい事があって来たんだよ。店を閉めてこい」
「相変わらず横暴だなぁ~ 風紀の王様復活ですかぁ?」
「お前……もう一度意識失いたいか?」
「いえ! 今直ぐに店閉めて来ます。委員長は中に入って待っていて下さい」
「おう」
足音も立てずダンは素早く店の戸締りをし、表をcloseにした。そして奥で待っているであろう二人の元へと急いだ。奥の部屋へダンが行くと、委員長と歩は椅子に座って待っていたのだが、歩の方はカチャカチャ、リュックから瓶を取り出していた。何だか気になったダンは歩の元へ近寄り話しかけた。
「委員長の彼氏さん。それなに?良い匂いがするねぇ俺、鼻良いんだよ。嗅いだ事のない匂いがする……多分だけど」
「あの……僕。ジャックさんの彼氏ではないです。これからジャックさんの御宅でお世話になるもので、歩といいます。宜しくお願いします」
「歩ねえ……だったら、あゆちゃんだねー! 俺は、ダンちゃんって呼んでねぇ。それでさぁそれなに?スッゲー気になるんだけど、なにに使うの?どうやって作ったの?」
「あー…………」
どこまで話して良いのか困ってしまい、助けを求める瞳をジャックの方へ向けた歩とジャックの視線が交差した。ジャックは、安心する様に歩に笑顔を向けた後ダンに説明を始めた。
「ダン、まあ先ずは座れ。歩は知り合いの子だ。これから、うちで預かることになってな、仕事を始めるんだがこの瓶の中身が欲しいんだよ。お前作れるか?」
「どうだろう?ちょっと見せて」
「宜しくお願いします」
歩は、手に持っていたオイルの瓶をダンに渡した。ダンは匂いや中身を少し確かめて質問をした。
「ねえ! これって何に使うの?」
「頭部のマッサージに使います」
「マッサージって何?」
「えっと……説明するよりもやってみて良いですか?ダンさんの頭を触っても大丈夫ですか?」
「うん!大丈夫だよ。是非やってみてよ。使い道解んないと何となく作り方や材料は把握できたけど、見当違いのもの作っちゃったら駄目じゃん。俺なりにアレンジもしちゃいたいしね。色々頭の中に新たな発見や想像が回ってるんだ」
ダンが話してるのを聞きつつも、歩は準備を始めた。ダンをソファーみたいな場所に座らせて、少し寝かせるようにし首元に布をかけて、準備します。
「本当なら髪を濡らしてオイルでのスパなのですが、水で濡らせないのでドライスパにしますね。ヘッドマッサージと言われるものです。ちょうどおばあちゃんへの土産でアロマも持って来てたので、癒しとして僕の好きなオレンジの匂いを、ハンカチで簡単に使いますね。では、始めます」
歩は、ダンの髪と自身の指の間に布を挟みヘッドマッサージをはじめた。部屋の中にはオレンジの爽やかな香りが漂い癒しの空間が出来上がった。