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第1章 旅立ち

「なあ」

「嫌です」

「何も言ってないだろうが」

「それでも嫌です、どうせ碌でもない事でしょう」

「禄でもないかどうかは聞いてみないと分からないだろう」

「それでも嫌です」

「……温泉旅行」

「え」

「K県の、D温泉。1泊2食付き温泉三昧、山海の幸食べ放題、でも?」

「うっ……」

「取材は女将の話を聞く1時間のみ、お前は横でメモを取ってくれるだけで良いって言っても?」

「……」

「日当もつけよう」

「い、……行きます……」

 これで、藤崎柊輔の取材旅行に、谷本新也アラヤが同行することが決まった。


「それで、何の取材なんです?今回は」

 季節は2月も終わり。

 雪の残る目的地へ向かうレンタカーの車中で、新也は改めて旅の目的を訊ねた。

 車は緩やかに山道を上り、下り、また上り……を繰り返していた。

 目的地は山間にある温泉宿。

 谷底を流れる川の近くに露天風呂を構える老舗旅館だった。

 藤崎は新進気鋭の作家で、最近はホラーやオカルト雑誌での露出も増えていた。

 新也は藤崎の高校時代の後輩で、ちょっとした特異体質を持っているおかげで、藤崎に呼び出され、あれやこれやと用事を言いつけられることが多かった。

「旅館に現れる、座敷わらし……のようなものの取材だ」

 藤崎が運転席からちらりと新也の反応を伺う。

 新也は予想通り、嫌そうに眉間にシワを寄せた。

「なんですか、その『ようなもの』って」

 藤崎がくっと笑った。

「わからないから取材に行くんだ。……ただ、話によると、深夜、時折訊ねてくる子供がいる、らしい」

「訊ねてくる?座敷わらしが?」

 新也は首を捻った。座敷わらしというのは、その家や屋敷に居座るもの……ではないのだろうか。

「面白いだろう?ちょっと次作のネタに出来ないかと思って」

「……面白いというか、何も起こらなければ良いですけど」

「起こってほしいけどな、俺は」

 はは、と藤崎が笑って、新也ははあっといつものようにため息をついた。


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