第8話 「結果」
あの出来事から一週間が経ち、今日は合格発表の日。
この一週間は冒険者の活動を控え、自室に閉じこもる日々が続いた。
時には気分転換に外に出かけたりもしたが、特別何もしていない。
同じような過ちを犯さないように徹底した結果、このような一週間の生活となった。
そんな俺も今日ばかりは早起きをし、身支度を済ませ、学園に向かう準備をする。
数分で支度が終わり、学園に向かう。
向かう途中、多くの人を見かけた。
おそらく、俺と同じく合格発表に向かう人達だろう。学園は貴族街にあるので、学園に向かう途中馬車の姿がちらほら確認できる。
宿屋は貴族街とそこまで離れていなく、貴族街を歩いていたらあっという間に学園に着いた。
(懐かしく感じるな)
この一週間、ある意味濃い時間を過ごしたからか、学園の豪華な門を見ると懐かしく感じる。
皆門を通り、敷地内に入っていく。
俺も人の流れに沿って同じように入っていく。
すると、既に合格発表が始まっていたのか、大きく張り出された紙の前に人混みができている。
泣いている者、喜んでいる者、様々な者がいるが、俺はどうなることか。
俺は人混みの中に入っていき、合否を確認する。
沢山の受験番号が並んでいるので、自分の受験番号を探すだけで一苦労だ。
(えっと、444番………………あっ、あった。)
俺の目には444番の数字が。つまり合格だ。
確認するとすぐに人混みから抜け出す。喜び、悲しみ、いっさい表情に出さない。
顔にでやすい俺がだ。
それは当然だ。
筆記試験は完璧。
配点の高い実技試験では平均的。
俺は見事に演じきった。
この結果は必然的。
合格者の中では、中の上くらいの成績だろう。
俺は入学手続きをするため、学園本部へと向かう。
「すみません、入学手続きをお願いしたいのですが」
「はい、分かりました。それでは、受験番号を教えてください。」
「444番です。」
「受験番号444番ですね、分かりました。少しお待ちください。」
そう言うと、担当者が諸々の手続きをしていく。
数分間で手続きは終わり、担当者が俺に向き直る。
「手続きが終了しました、合格おめでとうございます。ルクス様のクラスはSクラスです。制服は後でご自宅まで郵送します。細かい事に関しましては、この書類を見てください。他に何かご質問などはありますか?」
「えっと……?Sクラスというのは?」
「当学園では、クラスが四つに分かれています。Sクラス.Aクラス.Bクラス.Cクラスとなっており、入試結果の成績順でSクラスからとなっております。ルクス様は入学試験では次席という結果でしたのでSクラスとなります。他に何かご質問はあるでしょうか?」
「…………………い、いえ。何もないです」
担当者とのやり取りを終えると、学園本部から離れる。
学園敷地内には、休憩できるようなベンチが数箇所に設置されている。
俺は本部から離れると一旦落ち着くために設置されているベンチに座る。
そして、深く深呼吸。
(学園にそういった制度があったとは………いや、それはひとまずいいとして、問題は俺がSクラスということだ。)
入試成績順。
つまりSクラスは優等生の集まり。
この学園に入学できる自体優秀だ。
その中でも更に優秀。
試験成績は中の上。
正直、そこら辺だと思っていた。
だが、まさかのSクラス。
しかも次席という結果。
あまり目立ちたくない俺からすれば、最悪なクラスだ。
「なんで、俺がSクラスなんだ……」
とぼそっと言う。
はぁとため息をついて。
しかし、いつまでも気にしていても仕方ない。一旦気持ちを切り替えてベンチを立とうした時――――――
「おい!そこのお前!!」
「…………………………」
「無視するな!!」
「あっ、俺のことですか?」
「そうに決まっているだろう!他に誰がいる!!」
いや、周りにたくさんいるんですが。
いきなり怒声を浴びせてきた相手に対し、俺はそう思った。
「まあ、いい。それよりお前、Sクラスなのか?」
と聞かれる。
相手は見るからに貴族。
着ている服は上物だし。
そんな相手がなんの用かと思えば…………。
クラスを聞いてなんだというのだ。
こちらは早く帰りたいというのに。
正直に答えればいいんだろうけど、それじゃあすぐに解放されない気がする。
刹那の思考の結果、俺は――――――
「いえ、違いますよ?」
と不思議そうに答えた。
何故、俺がSクラスなのかと言わんばかりに。
すると相手は、
「さっき、ベンチに座りながら自分の事をSクラスと言っていたではないか!!」
と顔を真っ赤にして言ってきた。
(いや、知ってるなら聞いてくるなよ……)
「どうなんだ!!」
「………ええ、Sクラスに入る事になりました。」
俺は観念して言った。
ここは誤魔化すよりも正直に言った方が吉だと思ったからだ。
それに後々ややこしくなりそうだし。
「お前のような者見たことないが、一体どこの家の者だ?」
「どういう意味でしょうか?」
「家名を言えと言っているのが分からないのか!!」
相手の言葉の意味が分からない。
家名?そんな物はないし、何故そんなことを聞いてくるのだろうか。
「見たことなくて当然かと。私は平民ですので、貴族の方と関わりもありません。家名も当然ありません」
「お前平民なのか?……では、その見た目は一体」
家名がない理由を納得させられたようだった。
最後の方はぼそっと言ったので何を言っていたか聞こえなかったが。
平民だから家名がないことは当然なのに、何故そんな事を聞いてきたのか本当に疑問だ。
「お前が平民だとしたらなおのことだ!何故、四大貴族の一つ、オーランド家の子息たる俺、セドリック・オーランドがSクラスではなく、Aクラスなんだ!!平民のお前ごときがSクラスだというのに!!!」
(なるほど、そういうことか)
何故いきなり俺に絡んできたのか分かった。
おそらく試験の結果、自分がAクラスだと判明し、不満を抱えていた時に俺と遭遇。
その時にちょうど俺がぼやいている事を聞き突っかかってきたということか。
「そのような事を言われましても……」
「何かズルをしたのだろう!そうでなくては平民ごときがSクラスなわけがありえない!!」
だめだ。こいつは話しを一方的に進めるタイプだ。貴族は横暴。
平民ではそんなイメージを抱いている人も多いだろう。
そんな貴族像をそのまま描いたような貴族だ。
意味ないだろうが、一応弁明しとくか。
「試験は公平に行われ、不正がないように厳重に行われます。俺は誓って不正などしていません」
「言葉ではなんとでも言えよう!なにより、お前がSクラスという事が不正をしたと物語っているではないか!」
(予想通り、いや予想以上か。予想以上に話が通じない。)
「どうなんだ!!」
「どうと言われましても……」
こいつは俺が不正したかどうかなんて本当はどうでもいいんだ。
貴族である自分が平民より下という現実を認めたくないだけ。
(何を言ってもだめそうだ。周りからも注目され始めたし、早く帰りたいんだが………)
人の視線を感じ始めた俺は辟易としていた。
何故こんな奴に俺の時間が奪われているのだろうかと。
もういっそのこと逃げるか? そんな事を考え始めた時だった。
「そこまでです」
一人の女性が人混みの中を掻き分けて出てきた。
綺麗な金色の髪を揺らしながら歩いてくる。
その姿は威武堂々。
セドリックは歩いてきた彼女を見て驚いた面持ちをしている。
有名人なのだろうか。というか見たことがあるような……………。
「話しは全部聞きました。この学園は実力主義。貴族、平民関係ありません。セドリック、貴方がAクラスというのならそれが貴方の実力なのでしょう。」
「お久しぶりですね、アリス嬢。それは、私がこの平民より劣っていると言いたいのでしょうか?」
「ええ、そうです。」
と彼女はセドリックに言い放つ。
俺はセドリックが彼女の名前を言ったことで思い出した。
アリス、彼女は俺が入学試験で闘った相手だ。
綺麗な金色の髪が印象的だ。
「それはいくらアリス嬢でも取り消して頂きたい!」
「取り消してどうするのですか?それが現実です。」
「ッ!?」
「注目を集めすぎましたね。これ以上続けるというのならこの私、アリス・センテカルドがお相手になります。」
「くっ、………分かりました。アリス嬢に免じてここら辺にしておきましょう。おい、平民!覚えておけよ!!」
そう言って、セドリックは去っていった。
彼とはもう会いたくない。
彼女には感謝しなければ。
彼女が来なかったら、もっと面倒くさいことになっていただろう。
俺は彼女に近づいていき、感謝の気持ちを伝える。
「ありがとうございます。貴方が来てくれなかったら円滑に話しを終えることができなかったです。」
俺はそう言って頭を下げる。
彼女の言葉が返ってくるまで頭を下げ続けるが、いつまで経っても返ってこない。
俺は少し頭を上げて、ちらりと彼女を見る。
「ッ!?」
すると、彼女は俺を見ていた。
ただ、見ているのではなく、明らかに睨んでいる。
俺、何かしたかと自問自答してみても答えはでない。
というより、彼女と関わったのはこれで二回目だ。
それも二回ともほとんど向き合って喋っていない。
怒らせる要素が存在しない。
「あの、どうかされましたか?」
睨まれている理由が分からないので直接聞いてみるしかない。
一応彼女は恩人だ。失礼をしてしまったなら謝るのが道理。
なのだが、まったく反応がない。
睨み続ける一方だ。
すると、少し経つと彼女は無言のまま去っていった。
(いったい、なんだったんだ)
一難去ってまた一難。
セドリックとのやり取りが終わったと思ったら、彼女に睨まれ続ける。
まあ、やっと終わったようだし、俺もこの場から立ち去ることにする。注目を浴びているようだし。
ただの試験発表だと思って気楽に来た俺からすれば怒涛の一日となったのだった。
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