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第22話 「王女」

新生活が忙しくて投稿が遅れてしまいました。

申し訳ありません。

 

 美しく煌めく銀髪。彫刻のように整った美貌。

 その場にいるだけで気品に満ち溢れている彼女を前にクラス全員が息を止めて固まっていた。


 セシリア・セントラム。


 その美しい銀髪と美貌により大陸中にその名を轟かせている王女。


 通称、白銀の美姫。


 その証拠に個人差はあれど、全員が何かしらのリアクションをとっていた。

 それは当たり前といっていいだろう。この国で彼女を知らない者などいないのだから。

 そう、それは俺も例外でないわけで……………。



(な、なんで彼女がここに………!?)



 他の人達より一足先に状況を理解した俺は顔には出さず、内心驚愕していた。

 すぐに重心を下げ、前の人に隠れるようにする。


 俺がそのような事をする理由は一つ。学園に入学する前に行った冒険者活動に起因するところが大きい。

 別に彼女に対して無礼を働いたわけでも、目の敵にされているわけでもない。


 ただ、襲われていたところを助けただけだ。普通に考えればむしろ誇らしいことだろう。


 だが、問題はそこではない。


 問題は彼女と関わってしまったことではなく、彼女に顔を見られたことだ。


 俺は彼女を助ける過程で学生の範疇を超える実力を見せてしまっている。

 山賊十数人をものの数十秒で倒してしまったのだ。

 普通に考えればそんな学生いるわけがない。


 顔がバレるとは思っていなかった俺は普通に実力を発揮してしまったわけだ。

 もし仮に彼女が俺の顔を覚えているとしたら、俺の事に気づくはずだ。


 そして、彼女はこう思うだろう。


 学生だったのかと。


 彼女は不審に思うはずだ。

 学生にしてはあまりにも強すぎると。そこまでいけば、後はどうなるのか容易く予想がつく。


 俺の事について調べるはずだ。


 そうなってしまうと俺は彼女の事を見過ごせなくなる。

 俺の正体がバレることは絶対に阻止しなくてはいけない。

 最悪、彼女を暗殺することになるだろう。


 だが、一国の王女を暗殺するとなるとリスクが大きすぎる。理想は彼女に気づかれないままやり過ごすことだ。

 だが、これは彼女が俺の顔を覚えてないことを前提となる。


 だから、結局の話、この局面を切り抜けるには運しかない。

 つい最近の出来事ではあるし、助けられた事は忘れてはいないだろうが、顔を覚えているかどうかは別だ。



 あの時が王女様との初対面だった。

 初対面の人間の顔を二週間ほど経った今でも覚えているだろうか。

 それも顔を見られたのは一瞬だった。もしかすると、彼女は俺の顔を忘れているかもしれない。


 そう考えれば、少しは余裕が出てくる。


 そうであって欲しいし、そうでなければ俺の学園生活は終わりだ。


 まさに天国と地獄だ。


 余程印象に残る顔でなければ、一回見ただけでは忘れられている可能性が高い。

 だから、彼女が俺の顔を忘れている可能性も高いだろう。


 俺の外見で目立つのは黒髪くらいだろう。だが、探せば黒髪なんてたくさんいるだろうし、髪を染めている者もいるだろう。いくらでもはぐらかすことはできる。


 ひとまず、自分を落ちつかせた俺は前に立っているセシリア・セントラムに視線を向ける。


 次第にクラス全員が状況を理解したのか、立ち直っていく者が多くなっていく。

 そうなると、ざわざわと興奮したようなざわめきが聞こえ始めてくる。


 一国の王女、それも大陸中で有名な王女がクラスに入るとなれば、落ち着いていられなくなるだろう。


 といっても個々人によってリアクションは変わってくるわけで俺のように無反応の奴もいれば、隣にいるケイヒルみたいなリアクションもあるわけで―――


「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」


 隣を見てみるとケイヒルは立ち上がってガッツポーズをとっていた。

 いや、ケイヒルだけではない。クラスの大半の男子は喜びを表していた。


 確かに王女様の容姿はとても優れているとは思うが、男子達の反応は理解できない。


 その一方で女子達の反応はというと―――――――


「負けた…………」「ライバルがさらに増えたよ……」「勝てないよ…………」


 何を言っているかは聞こえないが、大半の女子は落ち込んでいるようだった。

 何故、落ち込んでいるかは分からないが。


「お前ら静かにしろ!」


 その時、スネイル先生が全員に聞こえるように声を張り上げて言った。

 阿鼻叫喚の絵図だったクラスが次第に静かになっていった。


「話の続きだが、さっきも言ったとおりこの時間から授業に参加することになった。みんな仲良くしてやれよ」


 全員がスネイル先生に注目し、コクン、コクンと頷いている。

 この学園では身分は関係ない。

 普段、なかなか関わることができない王女様と関わることができる絶好の機会だ。


 先生が言わなくても、俺を抜いた全員が彼女と仲良くするだろう。


「ところでこれは何の時間なんだ?」


 俺達の席順を不思議に思ったのかスネイル先生が疑問を投げかけてきた。


「四人一班に分かれて、錬金術の実習ですよ」


 と一番前に座っていた生徒が答える。


「そうか。ということは一つだけ三人の班があるはずだな。」


 スネイル先生がそう言った瞬間、俺はまさかと思った。嫌な気がしてならない。


「そこにセシリアが入ればいいわけだな。おい、三人の班はどこだ?」


 とスネイル先生がクラス全体を見回し、三人班を探そうとする。


 予想が的中してしまった。話の流れからして、王女様が俺達の班に入る予想はしていたが、まさか本当になるとは………。


 顔すら見られたくもない俺からすれば、関わることなんて論外だ。

 どうにかして、彼女をこの班に入れないように仕向けたいが…………。


 いっそ自分達が三人の班って名乗り出なければいいんじゃないか?いや、だが実習が始まってしまえば、俺達が三人班というのは確実にバレる。

 その場しのぎにしかならない。


 そんな事を考えると―――――――――


「はい!!俺達が三人だけの班です!」


(おい、ふざけんな!!)


 勢いよく立ち上がり、手を挙げるケイヒル。

 全員が俺達の班に注目する。


「そうか、では、セシリアはそこの班で授業を受けるように。」

「はい、分かりました。」


 そう言って、スネイル先生は教室から出ていき、王女様は俺達の方に向かって歩いてくる。

 歩き方ひとつ取っても、とても優雅で美しく、見惚れていた男子も少なくはない。


 次第に近づいてくる微かな足音が俺には死のカウントダウンのように聞こえた。


 そして、足音がすぐ近くで止まったのを境に少し顔を上げてみると彼女はいた。


「改めまして、セシリア・セントラムです。王女だからといって畏まった態度は不要ですよ。どうぞ、よろしくお願い致します。」


 そう言って、俺達三人に礼をする王女様。



 もし覚えられていたら、俺の学園生活は終わりだ。

 そんな最大の危機に陥っているとき、王女様は突如、言った。


「あら?貴方は…………」


 その声を聞いた瞬間、俺は悟った。


(さらば、俺の学園生活………)


 ボスに申し訳ない気持ちで一杯になりながら、俺は目を瞑ったのだった。



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