表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/27

第20話 「救出Ⅲ」

19話のアリス視点になっています

 

「貴方は一体……………?」


 彼に驚きの目を向けます。


 亜竜とは学生の身で勝てる魔物ではありません。

 それも、こうもあっさりと…………。


 私はここで確信します。


 彼はただの学生ではないと。


 前々から彼の事は気になってました。

 造形魔法を使いこなし、魔法を斬り防ぐ剣術の持ち主。先程見せた流麗な体捌き。


 そして、なにより氷系魔法の最上位<永久凍結世界(ニブルヘイム)>の発動。


 これは完全に学生の域を逸脱しています。

 無詠唱での上級魔法。

 単独での竜種の討伐。

 これはもう、宮廷魔法騎士をも凌駕しているのではないでしょうか。



 彼に問いかけますが―――――――


(っ!)


 拒絶されてしまいます。


 食い下がりますが、私はセンテカルド家に誓いました。

 彼の事を詮索しないと。

 それは私にとって、絶対に破ってはいけません。


 彼の事は気になりますが、ここは一旦引くことにします。


 その後、ここから出ようと彼から提案がありました。

 私としても早くここから出たいです。

 この場所にいると嫌な事を思い出してしまいます。


 彼は私を抱いたまま歩き始めます。

 しかし、いつまでもこのような格好は私の沽券に関わります。


 私は彼に言って離してもらい、一人で立とうとしますが


「っ!?」


 体勢を崩してしまいます。


 転びそうになったところで、優しくルクスが受け止めてくれました。


(うぅ………)


 先程までは気にしていませんでしたが、今になって意識してしまいます。


(硬いです…………)


 貴族の夜会などでダンスを踊ったことはありますが、手を繋ぐくらいです。

 ここまで身体と身体を男性と密着させるのは初めてです。


 顔が赤くなるのを感じますが、頑張って耐えます。


 すると、彼がいきなり制服を脱ぎ始め、私に向かって脱いだ制服を差し出してきました。


 私は不可解な彼の行動に首を傾げてしまいます。

 その時、彼が自分の身体を指差し始めます。

 まるで自分の格好を確認しろと言わんばかりに。


 私は不思議に思いながら、視線を下に向け自分の格好を確認します。


(っ!!)



 そこには、純白の下着に白い肌が露出していました。


(そういえば!)


 先程の戦闘で忘れてはいましたが、彼が助けに入ってくれた前に男達に服を破かれたのでした。

 私としたことが先程の戦闘があまりに衝撃的だったため、そこのところを失念していました。


(そんなことより!)


 身を隠すことが先決です。

 すぐに両手で露出している部分が見えないように隠します。


(み、みられてしまったでしょうか………!?)


 いえ、制服を差し出してくるあたり、見られたことは確定です。彼の反応からしても一目瞭然です。


(ということは…………)


 私は肌や下着を見られただけでなく、戦闘中は直接肌を触られていたことになります。

 貴族令嬢というのは、結婚する相手にしか肌は見せてはいけないものです。

 ましてや触られるなど…………。


 不可抗力だと分かってはいるのですが、恥ずかしさのあまり睨んでしまいます。


 すぐに彼から制服を受け取り、素早く着ます。


 そして、彼の方に向き直った私は彼に問いかけます。


 見たのかと。


 答えは分かってはいますが、聞かずにはいられません。

 彼は動揺しながら、考えるような素振りを見せます。


 服を着た今ですら、恥ずかしい思いは収まっていませんが、不思議と不快感はありません。

 男達に肌を見られた時は不快感しかありませんでしたが、不思議です。

 何故、同じ異性に見られたのに、彼は大丈夫なのでしょうか。

 よく分かりませんが、一つ彼に対して不満があるとするならば――――――


(何故、そんな平然としているのですか!)


 私がこんなに恥ずかしい思いをしているのに、彼は普段と変わらぬ装いです。

 彼は私の格好を見て、恥ずかしがる様子も顔が赤くなる様子もなかったです。


 私とて一人の女性。


 少しは慌てふためかれないと不満に思ってしまいます。


 そんな事を思っていると、ルクスが決然とした顔つきで口を開きました。


「ああ!がっつり見てしまったけど、とてもいい胸だっ……………」


(っ!!)


 バチンッ!


 彼が最後まで言い終える前に、彼に平手打ちをしました。

 見られていたことは分かってはいましたが、問題はその後の言葉。


(とてもいいむ、む、むね…………っ!)


 さっきまで女性として見られていないことに不満に感じていましたが、こうも率直に言われると恥ずかしすぎます。


 それに…………一番見られたくなかった部分をしっかりと見られていたようですし。


 彼の事をまともに見られなくなってしまったので、その後は抱えてもらうのではなく、背負ってもらって外に出ました。







 ◇







(こんなところに……………)


 外に出たらまず目に入ってきたのは、木です。いや、周りには木しかありません。

 つまり、私が監禁されていた場所は森の中だったのが今気づきました。


(よく見つけられたものです)


 私はそう思い、彼の背中に目を向けます。


 そこで、ある事に気づきます。


(っ!!)


 彼はかなりの速度で走っているので、振り落とされないように必死にしがみついています。


 しかし、そのせいで私の胸が彼の背中に押し潰されてしまっています。

 まるで、私がわざと押し付けているみたいではありませんか。


 離れたくても、離れられません。彼の迷惑になってしまいます。


 彼の様子が気になり、覗き見るように後ろから彼の顔を見ると、少し顔が赤くなっていました。


 その様子を見ると彼が意識していることが分かります。

 すると、少し嬉しい気持ちになります。自分も意識されているんだと。


(嬉しい?)


 こんな密着しているのに嬉しい?恥ずかしくなったり、嫌な気持ちになるのは分かりますが、嬉しい気持ちになるのはおかしいです。

 しかも、相手の反応を見て嬉しいと思うなんて……………。


 自分の感情の変化に戸惑ってしまいます。


 しかし、戸惑っている場合ではありません。

 この機を逃すわけにはいきません。

 疑問に思っていたことを彼に聞きます。



「何故、私を助けてくれたのですか?」


 私自身彼に好かれてると思っていません。

 何故なら、彼にはたくさん迷惑をかけているからです。

 身勝手に決闘を申し込み、わざと冷たい態度をとり、好かれているわけがありません。


 なのに、何故危険を犯してまで助けに来てくれたのか疑問でした。


 私の質問から少し沈黙が続きます。

 ルクスは考えているようでした。


「クラスメイトだからかな」


 少し経ったあと、彼はそう言いました。


 彼の言葉に納得した後、少しだけ気分が沈むのを感じました。

 彼は私でなくてもクラスメイトなら誰でも助ける。

 彼にとって私が特別なのではない。


 そう考えると、胸がズキンッと痛みを感じさせました。

 こんな痛みを感じるのは初めてです。

 男達に乱暴された時に痛めたでしょうか?


 私が胸に痛みを感じていた時に、ルクスから言葉をかけられます。



「そういえば、決闘はどうするんだ?」


 その事については私自身も考えていました。


 私はセンテカルド家令嬢にして、誉れ高き騎士。

 今まで同世代の誰にも負けたことがありませんでした。

 彼との決闘は私自身の成長のために必要なものです。助けて貰った恩を忘れてはいけません。

 その上で彼と決闘するのがいいでしょう。

 それが自分のためになります。


 ですが、ですが――――――


 私の口から出てきた言葉は自分の意に反したものでした。


「もう、大丈夫です。」

「大丈夫?それって…………」

「ええ、決闘は行わないという事です。」


 彼は驚いたような声音を発します。


「いいのか?」

「ええ。貴方の言っていた事が分かりました。確かに私では貴方に絶対に勝てないようです。私も現実を見ないといけないようですね。同世代に自分より強い人がいる現実を。」


 違います。

 これは私が思っていることではありません。

 まったく違うというわけではありませんが、本心ではない。

 本当は分かっているのです。

 彼と戦えない理由を。



 昔から読んでいる物語の絵本。



 "敵に捕まったお姫様を颯爽と助ける勇者様"



 私はお姫様にはなれない。分かっていました。

 男達に捕まった時も助けに来てくれる人はいない。

 そう思い、絶望しました。


 しかし、ルクスは助けてくれました。



 あの時、重ねてしまったのです。


 ()()()()()()()()


 その瞬間から彼とは戦えない。

 お姫様と勇者様は戦わないのだから。




 結局、決闘はしないということで話は落ち着きました。


 彼の背中で揺さぶられながら思います。



(早く夜になってほしい…………)



 彼にばれたくありません。


 今の空の色は茜色。

 そう、私の顔色と同じ……………


 私は自分の顔色を誤魔化すように明るい声音で言います。



「これからもよろしくお願いしますね?()()()


 彼の背中のなかで、これからの彼、ルクスとの学園生活に思いを馳せました。





評価、ブックマークよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ