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7話:初仕事

オープニングとチュートリアルも終わりやっとここからが本編という感じです!

 見渡すといつもの雑居ビル、現実に帰って来たようだ。

 ゲーム画面にはまた『11:59』の表示、次に続きをプレイできるのは12時間後のようだ、前回もそうだったことを考えると毎回そうなのだろう。


 見つからないように用心してビルを後にする、すっかり日の暮れた商店街を抜け家路につく。

 帰るなり母親が心配した様子で。


「おかえりなさい、ご飯できてるわよ、最近帰りが遅いのね?」


 などと話しかけてきた。


「ああ、うん、学祭の準備とかあって、これからも遅くなるかも」


 とりあえずマサヤはでまかせを言って誤魔化しておいた。


「行事もいいけど勉強に遅れないようにね、新しい学校の授業はついていけてる?食べたら勉強するのよ」


 食事中も母親は口うるさく話しかけてくる。


 はいはいと、ご飯を流し込んで部屋に戻りマサヤはため息を吐いた。

 学校にも、家にも、安らぎのない毎日にマサヤはうんざりしていた。

 仕事で家に帰ってこない父親とは会話もなく、母親は口を開けば成績の話しかしない、テレビをつければ暗いニュースばかりで将来の希望すらない。


 生きているのか死んでいるのかわからないような毎日を過ごしていたマサヤにはゲームの世界はとても魅力的に思えた。

 絶対の安全の保障などない、一歩判断を間違えば命を落とすかもしれない世界、しかし全ての行動は自分で選択することができる世界。

 誰が誰の責任も負わない代わりに自由がある世界。

 マサヤは皮肉にも死を身近に感じることによって、自分が生きてるのだということを実感していた。


 明日は学校が休みだ、起きたらゲームの続きをやりに行こう、そうマサヤは心に決めると、開くだけ開いた教科書を閉じて、早めに床につくことにした。


  翌日、朝食を済ませ母親に。


「図書館で勉強してくる」


 とだけ告げて出かける。

 行き先はもちろん図書館ではない。




 ―――――――――――――――――――――――




 ソエルの館を出てから数日、辺りは日も沈みかけた頃、森を抜けマサヤはノムゴンの街にたどり着いた。

 ノムゴンの街、そこは大陸の東に位置する大陸鉄道終点の地。

 東を妖精の森、西を死の砂漠に挟まれ辺境に位置する炭坑の街。

 更に東に位置するマサヤの育った名も無き村とは文明のレベルも活気もかけ離れていた。


「まさか鉄道があるとはな、この世界ではすでに蒸気エンジンが開発されているのか」


 炭坑で採掘された鉱石を中央へ運ぶそれはマサヤの居た世界のものより一回り大きく、無骨に蒸気を吐き出す様は見るものを圧倒させる。

 始めて見る異世界の街並に興奮しつつマサヤはギルドを探すことにした。

 駅前の富裕層が住むと思われるエリアから歩くこと数分、街の広場に面した巨大な建物、どうやらギルドと宿屋、酒場も兼ねた複合施設のようだった。


 入口をくぐり、正面のカウンターに声を掛ける。


「あの、僕、田舎から出てきてこうゆうところは初めてなんですが……」


 雰囲気に圧倒され、たどたどしく話しかけるマサヤにカウンターの男はにこやかに話しかけてくる


「よう、兄ちゃん、出稼ぎに来たのかい?兄ちゃんはヒョロイから炭坑夫は向いてないだろうなぁ、今紹介できるのだとこんなところだけど」


 男は帳簿を見せてきて、二、三、仕事の内容を読み上げる。


「マルコス亭の庭の草むしり、町外れのおばあさんの家の買い物の代行、丘の上の子沢山の家の子守りってのもあるな、どれにするよ?」


「く、くさむしりですか……。もっとこう、魔物退治とか宝探しとかそうゆうのはないんですか?」


「ハハッ、バカ言っちゃいけねぇよ兄ちゃん、命は大事にするもんだぜ」


「あの僕こうゆうものなんですが……」


 マサヤはソエルにもらったカードを見せる、血の魔術師(ブラッドマスター)の証であるライセンスなのだが、確かこれを見せると冒険者として優遇されるとソエルが言っていた


「おお兄ちゃん! あんたライセンサーだったのかい、しかも三つ星じゃないか! だったら早く言っとくれよ、ここはな旅人が旅費を稼ぐための簡単な仕事なんかを紹介する場所なんだ、ライセンサーなら上だよ、二階の受付に行きな」


 どうやらここは一般人に仕事を斡旋するハローワーク的なとこだったらしい。




 二階に上がると、なるほど一階とは雰囲気がうって変わって、本格的な鎧を来た冒険者や、フロア内のほとんどの者がなんらかの武装をしている、命のやり取りをするものの纏う覇気とでもいうのだろうか、なにか張り詰めた空気が漂っている。

 皮の服にズタ袋を下げただけの普段着の延長のようなマサヤは場違いのような感じである。

 刺さる視線を感じながらカウンターに声を掛けると下に居たフレンドリーな男とは違い、上等な制服を身につけたいかにも受付嬢然とした女性がにこやかに対応してくれる。


「いらっしゃいませ、こちらの利用は初めてでしょうか?」


「はい、そうなんです、あの、こうゆうものがあるんですけど」


 マサヤはライセンスを見せる。


「ライセンサーの方ですね、凄い! 三つ星じゃないですか!

 あ、すいません、取り乱してしまって……それで三つ星のライセンサーの方がこの辺境の街にはどういったご用件で?」


「あの、ここから更に西の方に行こうと思ってるんですがそれについて色々聞きたいことが、あとこれって凄いものなんですか?」


「はい、血の魔術師(ブラッドマスター)の方はたまにお見えになりますが、そのほとんどは一つ星で、妖精の森の加護で強い魔物が少ないこの辺境には二つ星以上の冒険者さんはあまりお見えになりませんね」


 受付嬢は笑顔を崩さずさらにこう加えた。


「それと、西に行くには死の砂漠を越えなくてはならないのですが、死の砂漠を徒歩で越えるにはその名の通り三度死を覚悟しなきゃならないという道程で、単独での渡航はおすすめできません、旅なれた行商のキャラバン隊に加えてもらうか、もしくは手っ取り早いのは鉄道ですね、その分旅費もかかりますが三つ星の冒険者様なら問題ないのでは?」


「ちなみにいくらくらいですか?」


「死の砂漠の先の国まででしたら500ゴールドです。」


 鉄道というのはまだ開発されたばかりの技術らしく、庶民には高級な乗り物のようだ、母さんが持たせてくれた旅費でギリギリ乗れるかというところだが、装備も整えたいし今晩の宿代もあるので少々心許ない。

 それに汽車に乗るだけのって見知らぬ街で無一文というのはさすがに厳しいだろう。


「あの、ちょっと手持ちが心許ない(こころもとない)んで仕事を紹介して頂ければと」


「かしこまりました、それではこちら、スライムの討伐などはどうでしょう?北の炭坑にスライムが発生して仕事ができなくて困っているということで、急ぎで冒険者を回して欲しいとの依頼があるんですよ」


「報酬はどれくらいなんですか?」


「300ゴールドですね」


 下で紹介された庭の草むしりが50ゴールドだったことを考えるとなるほど破格の報酬なのだろうが、今後のことを考えるともう少し割のいい仕事をこなしておきたいところだ。


「あのもう少し報酬の高い仕事はないんですか?」


「もちろんないこともないのですが、お客様はギルドでの仕事をこなした実績がないようなので、高収入の仕事はギルドへの貢献度の高い方から順に回しております、やはり三つ星の方とは言えど初めての方にそうゆう仕事を割り振るのは常連の方からの反感を買ってしまうので」


 更に申し訳なさそうに受付嬢はこう付け加えた。


「あと、その…。疑うわけではないのですが、そのライセンスも盗品という可能性も……」


 確かに見た目には武器も持たない皮の服を着た少年がいきなり高レベルのライセンスを出してきて信用しろという方がどうかしてる。

 信頼が得たければ力を示せということだろう。


「わかりました、その依頼お受けします」


「ありがとうございます!本日はもう遅いので出発は明日の朝ということでよろしいでしょうか?」


「ええ、こちらは宿屋も兼ねてるんですよね?ついでに宿もお願いします」


 急ぎの依頼を受けてくれたお礼とのことで宿代はサービスしてくれるそうだ。

 マサヤは簡単に食事を済ませ明日に備えることにした。


前半暗めですいません。

誰しも一度は閉鎖的な日常にうんざりしてアニメやゲームに憧れたことがあるのでは、そんな人にこそ、この物語を送りたいと思います。

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