6話:入門試験
登場人物おさらい(ゲーム世界)
「紅林マサヤ」
主人公、家族を探すために旅に出る。
古の賢者の力と言われる召喚[ルビー]のトリガーを使う。
「紅林ユカ」
主人公の姉、父を探すと三年前に家を出たきり行方不明。
能力は不明。
「ソエル」
妖精の森の魔女として広く世界に知られている。
マサヤとユカに稽古をつける。
「シルク」
ソエルの屋敷に住む妖精、森の植物を操ることができる。
人間を憎んでいる。
手加減する、と言ったシルクの言葉は自惚れではなかった。
基本的な身体能力の高さに森の植物を操る能力、ほとんど戦闘経験のないマサヤには手に余る相手であった。
向こうは準備運動のつもりだろうが、能力を使わないとやられそうだ、マサヤはシルクの攻撃を捌きつつ、トリガーで掌を切りつけると地面に数滴血液を垂らし紋章を刻む、コウモリのような翼を持った顔だけの使い魔が三体現れる。
マサヤの命令でそれらはすぐさまシルクに襲い掛かる
シルクは少し驚いた素振りを見せるが上手く攻撃をさける
それを見ていたソエルが呟く
「召喚、ルビーの血の魔術師の能力、古の12の賢者の力、やはりそうか、それがあの子に……」
戦況はマサヤが尚も劣勢である、シルクは植物製の特殊な武器で三体の飛行型を上手くいなし、懐に切り込んでくる。
マサヤは更に切り込んでくるシルクの足元に使い魔を召喚する
足止め用の小人型の使い魔が二体、シルクの足に絡み付いて完全に動きを止めた
「飛行型の敵を迎撃させて上空に意識を向けさせて、地面からの新手で足止めか、なるほど、たしかにこれは厄介だな」
マサヤは好機と見て懐に飛び込みトリガーで直接攻撃を仕掛けようとするが、それが甘かった。
突如背後の地面から飛び出す植物の根、それは完全にマサヤの脇腹をえぐる。
何が起きたか理解したときには勝負はついていた
「悪いね、能力を使えるのはお前だけじゃない、覚えておくんだな、妖精や魔物は人間とは違いトリガーなしで能力を発動できるんだ、特にこの森では植物は全ておいらの味方なのさ」
勝負の成り行きを見ていたソエルが駆け寄ってくる。
「勝負ありだよ、それよりシルク、模擬戦でユグドラシルを使うなんてやりすぎだよ」
「ソエル様、すいません、思いのほか強くて手加減が・・・」
段々と二人の会話が遠くなってくるユグドラシルと呼ばれた植物の根は脇腹を完全に貫いている、この傷では致命傷になるのではないだろうか。
ソエルは懐から短剣を取り出すと掌を切りつけその血を患部へと振りかける、なにやら呪文を唱えると、痛みは消え風穴の空いていた脇腹は完全に元通りになっていた。
おまけに穴の空いた服まで直っている。
「これは、治癒の力ですか?」
ソエルは質問には答えずこう言った。
「よし、じゃあ稽古は明日からだよ」
「えっ、でも僕は負けたんじゃ」
「あんたが何を勘違いをしたのか知らないが、あたしゃ勝ったらなんてことは一言も言っとらんがね、お前さんの覚悟が見られればそれでよかったのさ」
深々と被ったフードの中で老婆は笑っているようだった
こうして二週間ソエルの元で修行を受けることになった。
やったことと言えば、基本的な戦闘の基礎トレーニングに座学
あとはほとんどがソエルの身の回りの世話。
ソエル曰くこれも修行のうち、とのことらしいが
ほんとだろうか・・・
血の魔術師の能力は大きく分けると二つあるそうで、一つは血の活性化による身体能力の向上、山道を歩いても疲れにくかったのはこの作用だろう、完全に能力を引き出すと常人の数倍の力を発揮できるそうだ。
それともう一つが実際に血を使うことによる各々の固有能力の発動。
この二つの能力は連動しているらしく、より強く身体能力を引き出せるようになると固有能力も増していくらしい。
固有能力は個人の必殺技のようなものなので他人に教わるもんじゃない、とのことなので修行のほとんどは基礎トレーニングに当てられた。
進化の秘宝みたいなものでもっと手っ取り早く強くなれると思っていたのだがどんな世界でも近道はないらしい……。
一通り訓練を受けて最後にまたシルクとの模擬戦をする。
前よりは手応えはあったがやはり勝つことはできなかった。
すっかり自信を無くした僕に、シルクはこの森でも上位の妖精なんだ、お前さんが慢心しないように今回は本気を出させたがすでにその辺の冒険者よりは強くなっているだろうよ、とお墨付きをもらった
そして最後に一枚のカードを渡された。
これが正規の血の魔術師として然るべき訓練を受けた証となるらしい、魔法で自分の名前が印刷されその名前の上には3つの星のマークがついていた。
「この星は?」
「これはお前さんの強さを現しているのさ、このカードは特殊でね、血の魔術師の魔力に反応して星が浮かび上がるようになってる、現在はレベル3まで能力を発動できるってことだね、レベルが上がるごとに強力な能力が発動できるのさ、お前さんの召喚で言うと、呼び出せる使い魔に複雑な命令ができるようになったり数が増えたりだろうね」
なるほど、今まで呼び出せた使い魔は二種類、これからお世話になるやつらだ、それぞれ名前をつけることにする。
『レベル1、飛行型、イビルアイ』
『レベル2、小人型、ゴブリン』
3に上がってるってことは更に何か呼び出せるってことか。
「レベルはどうすれば上げられるの?」
「それはお前さんの才能と経験次第だね、強敵と戦ったり、感情が高ぶったり、とくにかくこの辺は不確定でね、覚醒した時から高レベルのやつも居れば何年かけても一つもあがらないやつもいる、さらにトリガーによって能力の成長限界もある、ちなみにあんたのこれは特別製だよ、レベルの制限はない、お前さんに才能があれば失われし大賢者の力を手に入れることができるかもしれない」
「姉さんはどれくらい強かったの?」
「あの子は……。ユカは特別さ、才能とでもいうのかね……。」
「もしかして何か知ってるんじゃないですか?」
「ホッホッホ、それは本人に聞くといいよ、きっとあの子を探す旅は楽じゃないよ、あの子はこの森を西に抜けた街に向かった、まずはそこを目指すといいよ。
街にはギルドがある、そこには情報が集まるし旅を続けるには資金も必要になる、そのライセンスを見せれば仕事も優遇してもらえるだろうさ。
それにきっとあの子も一度は顔を出してるはずだ、手がかりもあるだろうよ」
「わかりました、色々ありがとうソエルさん、いや師匠」
「師匠はやめとくれ、わたしはなんにもしとらんよ、ほらさっさと行きな」
ソエルに見送られ館を後にする、山道に入るところでシルクに呼び止められる、シルクはバッグを投げて寄越す、中には果物が入っていた。
「まあその、あれだ、途中で飢え死にされても気分が悪いからな」
「シルク、ありがとう!おまえほんとはいいやつだよな!」
修行の時に何度も世話を焼いてくれたシルクにも別れを告げる
こうして再びマサヤの旅は始まった、西へ、街を目指して
ここまででやっとチュートリアルが終了といいますか。
このお話の最低限説明しておくべきところが書ききれたんじゃないかなと思います。
ここからがほんとに書きたい物語の始まりです。
これからも末永くよろしくお願いします!




