5話:妖精の森
軽く説明回です、設定を考えながらなのでとても苦労しました
ルビの使い方も覚えましたレベルが上がった気分です
人里離れた森の奥の更に奥深く、そこには一軒の館があった。
その森は妖精の森と呼ばれ数多の妖精達が住み、時には生き倒れた旅人に森の恵みを与え。
また時にはいたずらをして驚かせ。
そして時には迷う旅人に森の出口を教えたりと。
この世界に住む人間達は妖精を神の使いと崇め共存していた。
そして館には魔女と一人の妖精が住んでいた。
「ソエル様こちらに一匹人間が向かってきてますよ、どうします?おいらが行って追い返してきましょうか?」
おそらく高度な魔術が練りこまれた年代物のローブ、そのフードを深々と被った老婆、ソエルと呼ばれた魔女はこう答えた。
「まちなさいシルク、むやみに人間に危害を加えてはいけないよ、いつも言っているだろう、この前も森に入ってきた人間を脅かして追い返したろう、アタシの目を欺けるとでも思ったかい」
シルクと呼ばれた妖精、背丈は小学生くらいだろうか、樹木のような皮膚にとんがった耳、植物を編みこんだ帽子を被り性別はどちらとも言えない中性的な顔をしている。
シルクはこう答える。
「おいらは人間は嫌いだ、人間は自分勝手な理由で争いを始めて森を焼く、この森はおいらたち妖精達の森だ」
「そうさねぇ、おまえがそう思うのも無理はないね、人間というのはとても曖昧なものでね、育った環境で善にでも悪にでもなる実体のないもんだからね、それ故に人間には神にでも悪魔にでもなれる無限の可能性があるのさ、おまえさんはまだ生まれて間もないからわからんかね」
ソエルはそうシルクを諭しながら。
「さあもうすぐ客人が訪れるよ、もてなす準備をしとくれ」
そう告げるのだった。
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その頃マサヤは森にあるという魔女の館を目指しひたすら森の中を歩いていた。
当然スマホのナビなどはない、地図もない、案内板すらもない。
森の中の獣道をひたすら歩く、疲れたら木陰に腰を下ろし休み、沢の水で喉を潤し、木の実や野草で腹ごしらえをする。
森は思ったより恵みに溢れていた、そして一昼夜歩き続けマサヤは自分の体力が以前より向上していることを感じていた。
「これは…、あの力のせいなのかな」
そして森の奥深くにあるとは思えない立派な館にたどり着いた。
ドアをノックしようとすると後ろから声をかけられる。
「おい人間!ここになんの用だ?」
振り返ると小柄な一人の妖精がこちらをにらんでいた。
「僕はマサヤと言います、妖精の森に住むという魔女を訪ねて来ました、魔女様はこの館にお住まいでは?」
「ソエル様はきさまとはお会いにならない、帰れ!」
どうやらここが魔女の館でまちがいないようだ。
しかしなにか怒らせてしまたのだろうか、妖精は鋭い眼光でこちらを睨んで取り次いでくれる気はないようだ。
「何か失礼があったのならあやまります、ただ僕はどうしても魔女に会わなくてはいけないのです」
「用件はなんだ?人間」
「僕は不思議な力の使い方を教えてもらうために・・・」
「やはりこの森に争いを持ち込もうとするか、邪悪な人間よ」
話を最後まで聞かずに妖精は念じると腕に巻きついた樹木の枝を突剣のような形に変化させ襲い掛かってきた。
やむを得ず腰に下げたお守りから刃を出し応戦しようとしたその時…
「待ちな!シルク!」
シルクと呼ばれた妖精の刃はマサヤの眉間を貫くギリギリのところで止まる。
気づくとドアが開きそこにはいかにも魔法使い然とした老婆が立っていた。
「あたしゃもてなすようにと言ったはずだがね、シルク、これがあんたのもてなしなのかい?」
「いえ、ソエル様、これはその、なんというか・・・」
「まあいい、坊や、こんな辺ぴなところまで尋ねて来たんだ、お茶くらいだそうじゃないか」
ソエルと呼ばれた魔女が手を叩くと更にもう一回り小さな羽根の生えた妖精がティーセットの乗ったお盆を運んできた。
手際よくテラスに置かれたテーブルにお茶をセッティングすると妖精は館に戻っていった。
「掛けるといいよ、うちのものが失礼したね、この子は昔から人間嫌いで許してやっとくれよ、あたしゃソエルという、こっちの子はシルク、見てのとおり妖精だよ、ところで坊や、面白い武器を持っているね、よく見せてくれないかい?」
僕は刃を引っ込めてソエルに差し出す。
ソエルは何かを確認するように眺め問いかける。
「坊や、これはどこで手に入れたんだい?」
「これは、昔父さんが持っていた物らしくて、ずっとお守りとして持っていたんです、そしたらこの前山賊に襲われたとき、なにか光って不思議な力が・・・」
「これはトリガーといってね血の魔術師が力を行使するとき時に必要になるアイテムさ、その証拠にほら、ここの竜の目の所に宝石が埋め込まれているだろ?これは魔法石といって血の魔術師の使うアイテムには必ずこの魔法石が使われている、石によって能力は色々、埋め込まれている道具も様々だがね、これは一点物のかなり珍しい品のようだね。」
そういってトリガーから刃を出したり引っ込めたりしている。
「これはなにも能力を持たない人間が持てばただのお守りにしか見えないだろうさ、坊やのように素質があるものが念じると刃が出てくる仕掛けになっているようだね、おまえさん、力はもう使ってみたのかい?」
「ええ、一応、ここに来たのはそのことで、ソエルさん、あなたは昔僕の姉さんに力の使い方を教えたと聞きました、僕にもこの力の使い方を教えて欲しいのです」
「姉さん?ほう、おまえさんはユカの弟なのかい、通りで面影があるわけだよ」
「はい、お願いします、僕には力が必要なんです」
「マサヤ、血の魔術師というのはね、能力の発動には自分の血液を使う、それは使えば使うほどに死に近づいていく呪いの力さ、何故にそこまで力を望む?」
「姉さんを、家族を探すためです、父さんは血の魔術師だったと聞きました、その父さんを追うには同じ力が、この血の力が必要になる気がする、それに姉さんには力を教えたんでしょう?なぜ僕にはダメなんです?」
「マサヤ、おまえさんはまだ引き返せる、こんなトリガーや力のことなんか忘れて母親と羊を育てながらこれまで通り平穏に暮らす、そんな人生もあるんじゃないのかい?」
「その姉さんからしばらく連絡が来ていないってことはもしかしたら今どこかで僕の助けを必要としてるのかもしれない、姉さんだけに大変な思いを負わせるわけには行かないんだ、そのために僕は・・・力を望む」
ソエルは俯き言葉を詰まらせている、しばし考えた後。
「それじゃあおまえさんの覚悟を確かめるためにテストをするよ、シルク!」
先ほど叱られ隅のほうで座り込みふて腐れていたシルクを呼びつける。
「マサヤ、あんたにはこの子と戦ってもらう」
待っていたとばかりに呼びつけられたシルクは
「おまえ、ユカの弟だったのか、それはすまなかったな、弟が死んでユカが悲しまないように思いっきり手加減してやるから安心しな」
と余裕ぶりながら館の前の広場へ歩き出す。
見てろよ。僕はソエルから受け取ったトリガーを握り締める。
こうして戦いが始まった。




