3話:血の魔術師「ブラッドマスター」
いよいよ戦闘です、人がどう動いてるのか書くのは難しい・・・
その男達は、いきなり目の前に現れた。
「よう!兄ちゃん、そんな大荷物抱えてどこ行くんだ?」
「重そうだなぁ、なんなら俺たちが貰ってやろうか?」
「おい、お前ら、人を呼ばれると厄介だ、さっさと口を封じろ」
こいつら、最近山を荒らしてるっていう山賊か。
まずい、相手は三人、しかも武器まで持ってる。
山賊の手にはナイフより一回りでかいナタのような物が握られている。
(これは逃げるしかないな、これでも山育ちだ、足には自信がある)
マサヤは振り返り駆け出そうとするが読まれていたのか、すぐさま後ろに回り込まれる、そして一人の山賊がナタを振り下ろす。
とっさに腕で防いだ、踏み込みが浅かったようで骨まで届いてはいなそうだが、傷口からは血が吹き出す。
「おーっと、逃げようったってそうはいかないぜ、村に逃げ込まれると厄介だからな、お前にはここで死んでもらうぜ」
興奮状態でそれほど痛みは感じないが。
切られた腕が熱い、ヤバイな、かなり血が出ている……。
山賊はなおもおもちゃを与えられた子供のような薄ら笑いを浮かべ切りかかってくる。
「久々に生きのいい獲物だ、たっぷりいたぶってから殺してやる、兄ちゃん、運が良かったな」
死にたくない、こんなところで…
そもそもゲーム内で死んだらどうなるんだ?
スタート地点からもう一度?
まさか永遠に出られなくなるとかはないよな…。
ゲームならなにか打開策はあるはずだと必死に考える。
その時腰に下げてあるドラゴンのお守りの宝石が光った。
苦し紛れに握ると不思議と力が湧いてくるような
それでいてどこか懐かしいような感覚が流れ込んでくる
俺はこれを知っている。
知っているはずだ…。
お守りを握りしめ血まみれの手で強く握ると刃が飛び出す。
飛び出し式のナイフのようになっている刃の部分を
マサヤは傷口に当て血を吸わせていく。
「兄ちゃん、そんな小さな得物だしてどうしようってんだ」
このようなギミックが組み込まれたナイフは持ち歩きには便利だが刀身が短く相手のナタの半分もない、戦闘向きではないし力も向こうが上だろう。
しかしマサヤは怯まない、何かを思い出すかのように宙にナイフで紋章のようなものを刻む。
すると周囲に滴り落ちていたマサヤの血が紋章と反応し地面から一つ目の顔のような化物が涌き出してくる。
その数は三体、マサヤはその化物に命令する。
「あの山賊達を食い殺せ」
その顔だけの化物は頭からコウモリのような翼を生やし山賊めがけて飛んでいく。
何が起きたのかと呆然としていた一人の山賊は
危機を察知し悲鳴を上げ必死に振り払おうとするが。
その全ては振り払えずその化物の顔の大部分をしめる鋭い歯の生えた口で、腕といわず足といわず噛まれていく
痛みに転がり倒れ込むとそれらは群がるように山賊を食い尽くしていく。
ボロボロになった山賊はやがて動かなくなった。
退路を塞いで居たもう一人の山賊は恐怖のあまり逃げ出した。
が、それを見ていた山賊の頭に切り捨てられる。
「逃げ出すような腰抜けはうちには要らないんだよ、どいつもこいつも使えないやつばかりかよ、しかしまさか、血の魔術師、こんなところで出くわすとはな、俺もついてないぜ…」
山賊の頭はそう呟くと、今切りつけた山賊のナタも拾い、二本で飛び掛かる化物たちを振り払う。
さすがに山賊の頭だけあってなかなかの腕前のようで
化物を何度か叩き落とすがダメージを受けている様子はない
それを見ていたマサヤは山賊の頭の足元に更に血を撒き散らして紋章を刻む。
土から這い出してきた小人のような化物が二体、山賊の足に食らいつく。
足の肉を食いちぎられ立っていられなくなり倒れ込んだ山賊を五体の化物が一斉に襲い掛かる。
数分の後、かつて山賊だった者達の形跡は跡形もなくこの世から消えていた。
役目を終えると五体はそれぞれ土に戻っていった。
それを眺めていたマサヤはふと我に返る、そうだ傷の手当てをしなくちゃ、幸い大きな怪我は最初に切りつけられた腕だけのようで、包帯で巻いて止血する。
再び台車を引き歩み始めたマサヤは考える。
(母さんに何て言おう・・・)
結局のところ血まみれの服を見た母親にごまかすことは出来ず
帰り道山賊に襲われたこと。
お守りが光って不思議な力を使えたこと。
なぜか自分がそれができるのが当たり前と思えたこと。
などを話した。
母親はため息をついて、やがて話始める。
「そのお守りはね、父さんの物なの、あなたは小さかったから覚えていないでしょうけど、父さんも不思議な力を使えたのよ。
ただそのせいで色々な争いに巻き込まれてね、あなたが小さいときに家を出てしまったの。
姉さんもよ、あなたのお姉さんのユカも同じ力の素質があった、それを制御するために西にある妖精の森に住む魔女のところに修行に行ったのよ。
そこで力を身につけた後、あの子はそのまま父さんを探すといって旅に出てしまったの、あなたには街の学校に留学してると言っていたけどね」
とてもばつが悪そうに母さんは言った。
「まさかあなたにまでこの力が覚醒するなんて、やっぱりあの人の子供なのね、もうあなたも15で成人する歳だもの、これからのことはあなたが自分で決めなさい」
「でも僕が居なくなると母さんは一人になってしまうだろ?」
「わたしの事なら大丈夫よ、羊達が居るしこんな小さな牧場くらい一人でやっていけるわ、それに麓の村長さんたちもよくしてくれるもの、あなたはどうしたいの?」
「正直わからない、ただ、姉さんには会いたい…」
「そうよね、一度手紙を寄越したっきり三年も経つんですもの、どこでどうしてるのかしら」
「僕は姉さんを探すよ…。姉さんにあって、そして一緒に父さんを探す、そして二人とも連れて帰ってくるよ、そしたらまた昔みたいに四人で暮らそうよ!」
「あら、頼もしいわね、じゃあ頼んだわよ」
母さんはすこし目を赤くしている、泣いているのかな。
「とりあえず今日は傷の手当てをしてもう寝なさい」
そう言って雑に縛ってある包帯を取り、奥から出してきた赤い液体を塗ってくれた、よく効く傷薬だそうだ
「わかった、おやすみ」
包帯を巻き直し寝室へ行く
次の朝傷はすっかり治っていた、普通は何週間もかかりそうな傷だが、この世界の傷薬はどこか違うらしい。
母さんと朝食を食べる、今日は卵も付いていていつもより豪華だ、これが母さんと食べる最後の朝食かと思うとうまく喉を通らない…
食事を終えると母さんが布袋に入った硬貨を差し出す。
「これは今日のために貯めておいたの、旅の資金にしなさい」
「母さん、ありがとう」
「まずは西の妖精の森の魔女のところへ行きなさい、そこで力の使い方を教えてくれるはずよ、これからどんなに辛いことがあっても必ず生きて帰ってくるのよ、それとあの子とお父さんに会えたらよろしく伝えてちょうだい」
「うん、母さんも元気で、体に気をつけてね、絶対無事に帰ってくるから」
外に出て歩き出す、まずは麓の村に寄ろう。
結局ルリには会わないことにした、会うと決心が鈍りそうだし
村長さんに挨拶だけして手紙を託し。
村から森に向かう道を進む。
こうしてマサヤの旅は始まった。




