22話:王都ダージリン
短編を書いたりしてたら思いのほか間が空いてしまいました。
今回からが王都騒乱編ということで。
また新たな気持ちで頑張っていきます。
「起きて…マサヤ起きて…」
「母さん…もう少し寝かせてくれよ…大丈夫、朝ごはんは食べないで学校行くから…」
「マサヤ…なに寝ぼけてんだよ…マサヤ!」
何者かに強く揺り動かされてマサヤは目を覚ました。
目の前にはエプロンをした母親ではなくガッチリした体型の皮の服を着た男、オーランが立っていた。
「ああ、オーラン、びっくりした、どうしたの?」
「母親の夢を見ていたのかい? しっかりしてるようでマサヤもまだ子供っぽいところもあるんだな」
「いや、それは…」
さっきまで居た現実世界と記憶が混同しながらもマサヤは照れくさそうに答えた。
「王都のダージリンに着いたから別れの挨拶をしにきたのにぐっすり寝てるんだもんな、まあ無理もないか、昨日はあの騒動で徹夜だったもんな」
「えっ、もう着いたんだ?」
確かシロとお弁当を奪い合うようにして食べたところまでは覚えているが、その後の記憶は曖昧である。
見るとシロはまだぐっすりと眠りこんでいる。
「ほら、シロ! シロも起きて、起きないと置いてくよ!」
「もう着いたのかニャ? ワガハイとしたことが寝過ごしてしまうとは…」
「大丈夫、シロが起こしてくれるなんて期待してなかったから」
荷物をまとめるとマサヤ達は列車を降りた。
オーラン達も一緒に列車を降りて見送ってくれるようだ。
そもそも現実世界の電車のように焦って降りる必要はなく。
燃料の補給や運転手の交代などで停車時間は一時間ほど余裕があった。
ホームでオーランとマサヤは別れの挨拶をする。
「マサヤ、今回はほんとに世話になったよ、なんてお礼を言ったらいいか…」
「ほんとマサヤ君は私達の命の恩人ね、あなたが居なければ私達こうして旅を続けることができなかったもの」
オーランの妻アナスタシアもマサヤに頭を下げる。
「二人ともやめてよ、そんなかしこまって、たまたま色々うまくいっただけで、そんなに感謝されたら恐縮しちゃうよ」
「そういう謙虚なところもマサヤらしいな、わかった、じゃあ元気で、このまま西に旅を続けるってことはグワダルの街にも寄るんだろ? ギルドに手紙届けておくから、ぜひ寄っていってくれよ、とびきりの料理ごちそうするからさ!」
「おっ、それは楽しみにしてるね!じゃあオーラン、いい旅を」
「うん、マサヤもお姉さん見つかるといいね、ほんとうに、ほんとうにありがとう」
オーランの目には涙が浮かんでいる。
二人は熱い抱擁を交わして別れた。
王都ダージリン
そこは砂漠の都とも呼ばれ、豊富な資源から得られる莫大な富により作られた巨大な都市。
マサヤが生まれた名も無き村とは比べるまでもなく、これまでにマサヤが訪れた大陸鉄道終点の地ノムゴンとも比べ物にならない規模の都市であった。
その広さもさることながら、建築に使われている高品質の大理石や中には宝石で装飾を施された建物まである。
駅を出るなりマサヤはその光景に目を奪われた。
「わー、凄いなぁ、まるで映画のセットみたいだ」
「ご主人、エイガとはなんニャ?」
「いや、なんでもない、こっちの話だよ」
「きっと美味しい食べ物の話だニャ、ワガハイにはわかるのニャ」
「はいはい、じゃあそうゆうことで、エイガは美味しい」
シロの疑惑を受け流したマサヤはまずはギルドに向かうことにした。
駅から数分の立地にそれはあった。
おそらくはかなり高度な測量技術で高く積み上げられた石。
使う者の利便性を追及し入り口は広くまるでビルを思わせるような立派な建物、さすがは王都のギルドである。
一階はノムゴンと同じく市民の職業斡旋所。
二階が冒険者用の窓口。
三階が酒場と宿の受付。
四階以上が客室と巨大な複合施設となっていた。
マサヤはまず二階の窓口に賞金首を討伐した証の書類を持っていった。
「兄ちゃん、なんか用かい? どれどれ砂漠のジャッカル団討伐証明書、なるほど憲兵のサインもちゃんとあるな、ってこれあれじゃないか、今噂になってる大陸横断鉄道の無差別虐殺事件、これを解決したのが君なのかい?」
「ええ、まあ…」
「これなんだけどね、お城の王様から是非とも会いたいとのことで、ギルドに通達があったんだ、悪いんだけどそんなわけで賞金はここでは渡せないんだ」
「ええっ、お城ですか?」
「きっと事件が事件だ、賞金の増額も検討されてるって話だし、悪い話じゃないと思うよ、それに王様に謁見できるなんてそれはそれは名誉なことなんだから、今ギルドの方でも書類書くから、それをお城の門番に渡すといいよ」
「はぁ…また書類ですか…」
なんだかたらい回しにされている気分である。
だがマサヤはせっかく異世界に来たのだから城を見学しておくのも悪くないかとギルドを後にするのであった。
さて城はどこかとギルドを出たマサヤだが、この街では城に行く道を迷うものなどいない。
なぜなら街の中心に位置するシンボルとして全ての道は城を中心にして城に通じている。
屋外の開けている場所であればどこからでも見渡せる場所。
それがこの王都ダージリンの王宮だからである。
マサヤは街の中心の通りを歩き出した。
「お城に招待だなんてなんか緊張しちゃうよ」
「いやいや、やがてこの世界の神になるご主人にはふさわしい扱いだニャ、この国の王様はなかなか見どころがあるようだニャ」
「神になんてなるつもりないから、僕校長先生と話すのだって苦手なのに」
「コウチョウセンセイとは誰のことニャ? 王様より偉いのニャ?」
「まあ考えようによってはそうかな、逆らうと別の学校に飛ばされちゃうらしいからね」
「ご主人はあまり物を知らないようで、時々ワガハイの想像もつかないような知識があったりもするのニャ、なんだかちぐはぐだニャ」
「そうかな、きっと気のせいだよ…」
そうこうしているうちにお城に到着したマサヤ達。
遠くから見えて居たのはほんの一部だったらしく。
目の前には砂のようにも石のようにも見える薄茶色をした材質の巨大な城がそびえ立っている。
「凄いな、これは、東京ドームよりでかいんじゃないか…」
「ご主人、トウキョードームとは…」
シロの発言は聞こえなかったふりをして。
マサヤはギルドで発行してもらった書類を巨大な門の前にある警備兵の詰所に持っていった。
「これは…大陸横断鉄道の無差別虐殺事件の…おまえみたいな少年が信じられんな」
若者の警備兵が疑いの目を向けるが
「おい! この方は王直々にご指名の客人であるぞ、無礼は許されん」
上役の警備兵らしき壮年の男が若者の警備兵を叱りつける。
「すまない、この通りだ、部下の非礼を詫びさせてくれ」
部下の頭を無理矢理に押さえ付けて深く下げさせると。
自身も丁寧に頭を垂れる。
「いえ、いいんです、慣れてますから」
「我が王が是非ともお会いしたいとのことだ、案内させて頂こう」
そう言うと大袈裟なポーズで抜刀した剣を掲げて。
「王の客人が参った! 門を開けよ!」
そう号令をかけるなり。
鎖の絡まり合うようなカラカラとした音と共にゆっくりと扉は開かれる。
恐縮しつつおそるおそる足を踏み出すマサヤと堂々とした足取りのシロ。
二人は王宮へと足を踏み入れるのだった。




