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18話:レベル4

 盗賊団をほぼ壊滅に追いやったマサヤ、そして人質を救出することに成功したオーランの一行だったが、カシムの暴虐は更に続く。


「さあお待ちかねのショータイムといこうか、手元が狂うといけないからな、動くんじゃないぜ」


 そう言うとカシムはナイフでアナスタシアの衣服を切り刻み始めた。

 アナスタシアは無言でカシムを睨み付け耐えている。

 その眼差しは強くまだ心は折れていないようだ。

 世が世ならモデルや女優にでもスカウトされたのではないかという美貌はカシムが大勢の人質の中から彼女を選び出したのもうなずける話である。


 既にフリルの付いたワンピースの大部分が切り裂かれ豊満な上半身が(あらわ)になっている。

 栗色の少しウェーブのかかったロングヘアでかろうじて胸元が隠れている状態である。


「ほう、これは思った以上の上玉じゃないか、今夜は楽しい夜になりそうだな、ヒャッハッハッハ」


 アナスタシアは覚悟を決めた、こんな男に汚されるくらいならいっそ舌を噛みきって……。

 そう決心をつけたが実際は恐怖でアゴが震えていて力が入らない、当然舌は噛みきれず、口元からはうっすらと血が足れてくる。


「おい女、どうだ? 舌は噛みきれたかい? 訓練もしていないような素人がいきなり道具もなく自害するなんてできないもんさ」


 そう言って無理やりアナスタシアの口をこじ開ける。


「おうおう、ずいぶん深くまでいってるじゃないか、大した根性だ、そこまでに旦那が大事かい? 人の女をいたぶるってのはゾクゾクするね、一度味わうとやめられないぜ」


 カシムは口をこじ開けたまま唇を奪い、更に無理やりアナスタシアの口内を舐め回す


(絶対に…絶対に……声なんか出すものか)


「いい味だ、さあそろそろメインディッシュといこうか」


 カシムはナイフで既にボロ布のようになったワンピースを切り刻みアナスタシアを一糸(いっし)まとわぬ姿にしてしまった。


(あなた…、オーランごめんなさい…わたしはもうあなたに会わせる顔が……)



 その時だった。

 突如ドアを蹴破り一人の少年が現れた。


「なんだ、今取り込み中だ、後にしてくれ」


 そう言いながらカシムはドアの方を振り返る。

 そこに立っていたのは思い浮かべていた部下ではない、マサヤである。

 カシムは乱暴に壁際にあるソファーにアナスタシアを突き飛ばすと言った。


「コウモリの小僧、お前どうやって……外のやつらはどうした?」


「外の人達ならみんな始末しましたよ」


「なんだと、何人居たと思っていやがる!」


 いかにも小物の悪党といったセリフにマサヤはため息を吐き。

 カシムを無視してアナスタシアの元に歩み寄ると、裸体が目に入らないように顔を反らしながら着ていた防塵用のマントを脱ぎ掛けてあげた。


「大陸横断鉄道のホームで一度お会いしてますよね、僕はマサヤといいます、オーランさんと一緒に助けに来ました」


「夫も、オーランもここに来てるんですか?」


「ええ、別行動をしていますがたぶんすぐに駆けつけてくるはずですよ、僕の相棒も一緒なのでここがわかるはず、すぐにアイツを片付けるのでちょっと下がっていてください」


「そんな! あなただけでは無理ですよ! あいつは…」


「大丈夫、今なら負ける気がしない」


 生きることに興味がなく、日頃から感情の薄いマサヤだったが、この世界に来てからは本来これくらいの年の少年が人並みに持つ感情を取り戻しかけていた。


 なのでマサヤは怒っていた、この悪党の命令の元に一方的な虐殺が行われたことを、心を通わせたオーランの妻に非道な行いをしたことを。


「あんたは、なんでこんな酷いことができるんですか」


「全ては大義のためさ、小僧にはわからんだろう、血が、血がいるのさ、変わったトリガーを持っているな、お前の流す良質な血はさぞかし神もお慶びになるだろうぜ」


 そう言ってカシムは緑色の石がはめ込まれた腕輪型のトリガーに念じ、小さなナイフで手のひらを刻む、流れる血が形になり真っ赤な刀身の剣が現れた。


「小僧、コウモリは呼び出さなくていいのかい?」


「あなたなんかには能力を使う価値もありませんよ」


「そうかい、このカシム様も舐められたもんだな」


 強力な力を得たマサヤだが、圧倒的な経験不足を自覚していた、もっと上手く立ち回ればカシムと名乗る男を逃がすこともなくアナスタシアに怖い思いをさせることはなかっただろう。

 能力に頼ることなく強くならなくてはいけない、それはソエルの館でも言われた事だった。

 なので直接血の魔術師(ブラッドマスター)と戦えるこの場は自分の力だけで切り抜けなければならないと考えていた。


 対してカシムは得体の知れぬ不気味な物を感じていた。

 長年修羅場をくぐり抜けた感覚で相手を見れば、構え、間合いの取り方、どれを取っても目の前に立っているのはろくに実戦経験もないような小僧であるのは明らかだ。

 なぜこんな小僧が大勢の部下を始末してここまで来れたのか。

 そしてこの少年の雰囲気が数時間前とは明らかに変わっていることを。


 その不気味さに耐えきれず先に斬り込んだのはカシムだった。

 マサヤはその一撃、一撃を丁寧にトリガーで捌いていく。


「なぜだ、なぜ攻撃が当たらない!」


 カシムの持つ血の魔術師(ブラッドマスター)の能力で生み出された剣はまるでカーボンのように軽く、切れ味は鉄をも切り裂く、そして強度は何人斬っても全く刃こぼれのしないというこの世界な文明を超越した代物だった。

 だが攻撃が当たらないどころか、捌いている武器すら壊せない。

 それもそのはず、マサヤのトリガーも同じ材質で出来ていた。


「くそ、なぜ当たらないんだ、攻撃が全て見切られている」


「当たり前だニャ、そんな紛い物のトリガーを持っただけのチンピラがレベル4へと到ったご主人に勝てるわけないニャ」


 見るといつの間にか現れたシロが立っていた。


「ちょっと待ってくださいよシロさん」


 後から息を切らしながらオーランも現れた。

 オーランは部屋の隅で戦いを見守っていたアナスタシアを見つけると駆け寄った


「アナスタシア、無事だったか!」


 だがマントの下が一糸纏わぬ姿なのを見ると


「すまない…俺が遅くなったせいで……」


「いえ、あなた、ギリギリのところであの方が助けてくれたの」


「そうだったのか、でも怖かっただろう、ごめんな、遅くなって…」


 オーランは強くアナスタシアを抱き締めた。



 戦闘はカシムが一方的に攻撃を繰り出しているように見えるが、全てがマサヤのトリガーによって裁かれ有効打には至っていない。

 まるで道場で門下生が師範を相手に打ち込み稽古をしているかのようだった。


「なぜだ、このトリガーが紛い物だと言ったか? これは信仰の証としてあのお方に頂いた物、そんなはずが…そんなはずが……」


 そんなカシムにオーランが言った。


「あんたは昔の俺とおんなじだ、紛い物のトリガーを手にしたときの万能感で力に溺れたんだよ、それはそんなに便利な物じゃない、そのトリガーじゃレベル1までしか能力を引き出せないのさ」


「だったらあの小僧はなんだと言うのだ、レベル4と言ったか、なぜそんな力が」


「オヌシの目は節穴のようだニャ、だからチンピラだと言うのだ、ご主人のトリガーは古の大賢者の遺産と言われた選ばれし12のトリガーの一つ、能力に上限はないのニャ」


「そうゆうことかい、ますますあれが欲しくなったぜ!」


 するとカシムは剣を戻し気合いを溜め始めた。


「これならどうだ、死ね、奥義空刃斬!」


 その瞬間、カシムが剣を振り切る前にマサヤは懐に飛び込み剣を止めた。

 そして腹部に拳を叩き込み崩れ落ちた頭部に膝が入る。

 反対側の壁まで吹き飛びカシムは受け身も取れず叩きつけられた。


「その技は一度見てます、斬撃を飛ばすタイプの技なんでしょうが、モーションが大きすぎます、それに間合いを錯覚させるような技は初見じゃなきゃ効果が薄いですよ」


 マサヤが冷静に語りかける。

 カシムは口から血を吹き出し立てそうもないが、まだ息はあるようだ。


「さすがに、丈夫なんですね、いい練習になりましたよ」


「練習? 練習だと、俺との戦いが練習だったとでもいうのか…」


 この先旅を続けていればまたどこかで血の魔術師(ブラッドマスター)と戦いになるかもしれない。

 最初の数発の攻撃で実力の差は明らかだった、経験ではカバーしきれないほどレベルによる身体強化の差は歴然だった。

 なのでマサヤは防御に徹してどの程度攻撃に対応できるのか試していたのだった。

 そして最後の攻撃で怒りはすっかり冷めていた。


 その時だった。

 外の火災は勢いを増し、館にまで煙が周り始めた。


「マサヤさん! 外があちこち燃えて居るんですよ、もうじきここにも火の手が、外に砂トカゲに繋いだ荷車を用意してあります、人質の人もそこに」


「ありがとうございます、じゃあ行きましょうか」


 ドアの方向に歩きかけたマサヤは倒れたままのカシムに目を向けた。

 ダメージは大きく立ち上がることはできないようだ。


「そんなやつは放っておいて行きましょう! 早く!」


 オーランが声をかけてくるが、マサヤはカシムに肩を貸し外に連れ出すことにした。


「ご主人! なぜそいつを連れて行くのニャ、そんなチンピラはここで丸焼きになるのがお似合いだニャ」


「いや、なんとなく、ほら、焼け死ぬのって苦しそうだし、さっき見てられなかったんだよ、あとこの人には色々聞きたいこともあるから…」


「甘い! 全くもって甘いニャ! その甘さはいつかご主人の命取りになるニャ!」


「まあまあ、その時はその時、ほら、行こ!」


 館を出たマサヤはカシムを軽々と担ぐと砦の外に向かって駆け出した。


 外には砂トカゲ車とでもいうのか、人質が全員乗り込んだ車が待機していた。


 マサヤ達が乗り込むと車はゆっくりと走り出した。


 砦は尚も燃え広がり、死の砂漠の空は赤く染まり。

 まるで空が燃えているかのようだった。






前半のこういう描写はあまり得意ではないようで今回もとても苦労しました、このような凌辱シーンみたいなものってどこまで書いていいもんなんでしょうね

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