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16話:最善の選択肢

主人公無双の回です、少々見苦しい点があったら申し訳ないです

「さて、どうしましょうか?」


 マサヤは目の前にそびえ立つ大きな石の壁を見上げる。

 砦は二メートルほどの石の壁に被われている、見たところ出入口は表と裏に一つずつ、正面の大きな門と裏側の小さな扉。


「マサヤさんわたしが囮になりますよ!」


 オーランがそう言った。


「囮ですか、やはりそれがいいでしょうね、ただし囮には僕がなります、オーランさん、貴方では大勢の盗賊を相手できないでしょう、僕が正面から敵を引き付けて騒ぎを起こしますから、オーランさんは裏口から人質を救出してください」


「そんな、マサヤさんに危険な役をやらせるわけには…」


「適材適所、というやつですよ。

 現時点で僕は武力以外には役に立てそうにありません、オーランさんの知識と経験、それが奥さんを救うんです、臨機応変にお願いしますね、シロ! シロもオーランさんと一緒に行ってサポートを頼むよ」


「任されたニャ、必ずやご主人の期待に応えて見せるニャ!」


 こうして作戦は決行されることになった。




 まずは正面に回り込んだマサヤが大扉を伺う、門番が二人両脇に構えている。

 マサヤは深々とフードを被ると門番の前へと歩き出した。


「おい! 止まれ! なんだ貴様は? ここに何しに来た?」


「ああ、よかった、わたしは行商人をしているのですが砂漠で道に迷ってしまって…すみませんがお水を頂けないでしょうか……」


 できるだけ弱々しく、いかにも倒れそうな行商人を装ってマサヤは近づく。


「団長が言ってた追っ手ってのはこいつじゃないか?」


「こんな弱そうな兄ちゃんが? それはないだろう」


「いや待て、お前行商人と言ったな、荷物はどうした? そのフードを取って顔を見せてみろ」


 どうやらここまでのようだ、だがもう十分に距離は稼いだ。

 マサヤはフードをめくろうとしていた盗賊の喉元に懐に隠し持ったトリガーで突きを入れる、刃を出すタイミングも完璧に喉を貫かれた男は倒れる。

 そしてすぐさまもう一人の男の懐に飛び込み心臓を貫く。

 男は抜刀する間もなく、何が起きたのかわからないと言った様子で倒れ込んだ。

(とりあえず二人か、中には何人いるやら、全力でいくか)


 マサヤは手のひらを深く刻み紋章を刻む、地面に染み込んだ血液からコウモリの翼を持ったイビルアイが10体召喚される。

(10体、これが今の僕の限界か…)

「よし、塀を越えて盗賊を食い殺せ!」


 イビルアイ達は闇夜に紛れて音もなく塀を越えていく、しばらくして中は大騒ぎとなった。

 それを聞き付けたマサヤは、蹴りで大扉をぶち破る。

 中はお祭りのような騒ぎで、盗賊達は突如襲い掛かったイビルアイの迎撃に必死であるかのように見えた。


 だが、1ヶ所に不自然にまとまって迎撃しているように見えた盗賊達に見張り台の上から網が掛けられた。

 盗賊ごとイビルアイ達は全て網に捕らえられて地に落ちてしまった。

 翼しか持たないイビルアイ達は網を抜けることもできず、地面でもがいてるところを後から現れた盗賊達に次々と叩き潰されていく。


「これは、能力がバレて対策を練られていたってことか…」


 網の中の盗賊達に致命傷を負った気配はない。

(誘い込まれていたんだ…)

 盗賊達はドアから入ってきたマサヤに目を向ける。


「団長が言っていたコウモリ使いのガキってのはあいつか、あいつを殺せば褒美は思うがままだ」


(やっぱり、僕にはまだまだ経験が足りていないってことか、だが能力がなくったって)


 マサヤは後悔していた。

 安易に能力を使ったせいで列車の戦闘では敵を逃がしたこと。

 オーランの妻と大勢の女性が拐われたこと。

 この状況は全て自分が招いた事だと感じていた。


 この先も命懸けの旅を続けていくにあたって最善の選択肢を選べなかったがために取り返しのつかない事態になるかもしれない。

(もっと…もっと強くならなきゃ……)


 マサヤは大きく深呼吸をした。

 体が熱くなり力が湧いてくる。

 頭は不思議なほど冴えている。

 敵は、網の周りに居るのが二人、網に絡まっているのが四人、見張り台に二人、計八人か。


 盗賊達にはマサヤの体が揺れたように見えていた。

 追い込んでいるのはこちらで、後はいたぶるだけの楽な仕事だと思い込んでいた。

 だが、少年の体が突如揺れるようにブレた後、武器を持った腕に熱い感触、見ると自分の腕は地面に落ちていた。

 盗賊は半狂乱になって残った片腕で殴りかかるがすでに少年の姿はそこにはない。


「どこだ?後ろか?」


 盗賊が振り変える間もなくマサヤは回転しバックブローのような形で正確に首の後ろを貫く。


(この力…これならいけるぞ)

 どう動けばいいか体が教えてくれるような、奇妙な感覚をマサヤは味わっていた。


 地上に居たもう一人の盗賊も大きな斧を構えるが振り下ろすよりもマサヤの接近が早い。

 マサヤは姿勢を低く保ち盗賊の足を切りつけ駆け抜ける。

 足の筋を切られた盗賊は立っていられなくなり、倒れ込んだ頭を踏み砕かれる。


 すぐさまマサヤは男の大斧を拾い見張り台の上に片腕で軽々とブーメランのように放り投げる、足場の狭い見張り台では逃げる場所もなく盗賊は真っ二つに切り裂かれ、ボタリと無機質な音を立て地面に落ちた。

 更に地面に落ちていた槍を拾ったマサヤはもう一人の見張り台の上の盗賊に槍を投げるフリをする。

 予想通り見張り台から飛び降りた盗賊の着地点に改めて槍を投げる。

 高所から着地したばかりの盗賊は当然かわすことができない、胸に大穴が空き血を吐いて倒れた。


「あと四人か…。」


 その四人の盗賊は依然網に絡めとられたままもがいている。

 とっておきの策だったようだが後のことまでは考えていなかったようだ。

 マサヤはため息を吐くとかがり火に使われている松明を網に向かって放り投げる。

 網に火がつくがそれでも盗賊は抜けられない。

 盗賊達のおぞましい悲鳴が上がるがそこでマサヤは見ることをやめた。


「これで見える範囲のは全員か、オーランさんとシロは大丈夫かな…」


 そう心配そうに呟くと、マサヤは砦内の一際大きな屋敷へと目を向けた。



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