1話:呪われたゲームソフト
ふと思い立ち始めて小説というものを書かせて頂きました
全くの初心者故に文章が乱雑でお見苦しい点などあればご容赦を
感想やアドバイスなど頂ければ幸いです
なんとか最後まで書ききることを目標にコツコツやっていくのです
これはとある数奇な運命を辿る少年の話
物語はある田舎の学校から始まる
その日転校生の紅林マサヤは後悔していた。
今回の学校ではクラスに上手く溶け込むことに失敗し。
いじめられっ子というポジションを押し付けられてしまったからだ。
マサヤが転校してきたとき、そのクラスには既にいじめられている生徒が居た。
前の学校では細かな揉め事やからかいなどはあったものの、目立ったいじめはない学校に通っていたマサヤはその少年を不憫に思った。
そしてそれとなく先生に。
「いじめられている子が居るようなので対応して欲しい」
と報告したのがそもそもの間違いだったのかもしれない。
その様子をどこかで見ていたのだろう。
次の日クラスの不良達に校舎裏に呼び出されたマサヤは。
「告げ口野郎!」
などと因縁をつけられ、三人がかりで殴るわ蹴るわ、暴力とは無縁の平和な学校ばかり通っていたマサヤには信じられない出来事であった。
そしてボロボロの服で教室に戻ると、みんな示し合わせたかのように見て見ぬふりである。
そもそも教師の指導力がここまで低い学校とは思わなかった。
この学校では不良達の方が権限は強く。
その不良達を告発するようなことを教師に告げる行為が悪なのである。
そのような状況であるからマサヤに手を差し伸べる人間は誰もいなかった。
昨日までいじめられっ子だったリョウタまでもが、目をそらし、自分は何も関係ない、僕のせいじゃない。
まるでそんなことが書いてあるような顔をして下を向いていた。
マサヤはため息をついて。
「まあこれもしばらくの辛抱か…」
などど呟き席についてハンカチで口元についた血を拭った。
家庭の事情で転校を繰り返してきたマサヤはきっとこの学校も長く通うことはないだろう。
それならば、せめてあのリョウタがいじめられなくなっただけでよかったじゃないか。
なんてことを思いながら都会とは違う、広く大きな窓の外をただ眺めていた。
そんな時教室のドアが空いて一人の少女が登校してきた。
もう次は午後の授業が始まるタイミングである。
あの少女は誰だったろうか。
まだあまり顔と名前が一致しないマサヤだが、彼女はここ数日では一度も登校してきていなかったと記憶している。
少女はこちらを見て微笑むと、自分の席まで来て挨拶をしてきた。
「おはよう、あなたは転校生かしら?わたしはハルカっていうの、立花ハルカよ、よろしくね、病気でしばらく休んでいたのだけれどわからないことがあったらなんでも…。
あら、ねえ、あなた血が出てるじゃない!どうしたの?」
と言って鞄からバンソウコウを差し出してきた。
「いや、ちょっと転んでさ、それより僕にはあまり話しかけない方が……」
話を聞いているのかいないのかハルカと名乗る少女はマサヤの顔に可愛らしいキャラクターのプリントされたバンソウコウを貼りつけてくる。
その様子をみてクラスメイト達はざわざわと騒がしくなる。
(これはマズイな、かなり目立っているかもしれない…。)
休んでいてクラスの事情がわかっていないのだろう、きっとこの子のためにもあまり関わらない方がよさそうだ。
たかがほんの数ヵ月の辛抱なのだから。
(そう僕が、僕が我慢すればいいんだから……)
先生がやって来て午後の授業が始まった。
隣の席に腰かけた少女はこちらを見て口元のバンソウコウを貼った位置を指差し微笑んでいる。
少し顔を赤らめうつ向いていたマサヤはそれをクラスの不良が睨んでいることに気づいてはいなかった。
放課後になり、玄関の下駄箱の前にはまた不良が待ち構えていた。
「おい、ちょっと付き合えよ」
なんて嬉しくもない誘い文句でマサヤの腕を掴み校舎裏に連れ去ろうとしてきた。
(なんだこの町の不良は、何か他にすることはないのかよ…)
とても付き合いきれないと、マサヤはその手を振り払い上靴のまま校門に向かって駆け出した。
追いかけてくる不良達、逃げるマサヤ。
走る早さはほぼ互角だった。
距離は離れも縮まりもせず、そのまま一キロは駆け抜けただろうか。
このままだと先に息が切れて限界がきそうである。
マサヤは必死に考える、確かこの先の繁華街に入れば建物が多かったはずであると。
(そこまで行けばどこかに隠れられるかもしれない)
マサヤが逃げ込んだのは商店街の外れにあるかなり古い雑居ビルだった、階段を駆け上がる、かなり息があがっている。
(どこか隠れられそうなところはないだろうか……)
四階まで一気に駆け上ったところでマサヤは潰れた店舗に目をつけた。
なぜか自動ドアは生きてるらしく、吸い込まれるように店内に入る。
耳を済ましたが不良達は下の階を探しているらしく四階まで上ってくる気配はない。
マサヤは息を整えると店内を見渡す。
「ここは、ゲーム屋なのかな?」
店内には百円を入れるタイプの古いビデオゲーム機。
スロットマシンの台。
更にこれは怪しげなピエロの人形とジャン拳をするゲームだろうか。
現代っ子のマサヤにはなにをするのかもわからないゲームがたくさん並んでいた。
更に奥に行くとこちらは家庭用ゲーム機の販売も兼ねてるらしく、カウンターの中のテレビになんとも言えない着色の小豆色に塗られたレトロなゲーム機が繋がっている。
「これ、見たことあるぞ、ファミコンっていうんだっけ、確かカセットを差し込むんだったよな、さっき自動ドアが反応したってことは電源は生きてるんだ、どうせすぐには出られないんだし、試しになんかやってみようか」
テレビをつけてみると案の定放送は入らないが電源は入るようだ。
ショーケースの中にはお馴染みのオーバーオールを着た配管工の兄弟のゲームから、誰でも知っている国民的アニメを題材にしたゲームまで一通り揃っていた。
中でも一際目を惹いたのがソフト全体が血にまみれたような特殊な塗装がされているソフト。
『Bloody Quest』
「ぶらっでぃくえすと? なんだか聞いたような名前だけどよくある人気作品のパクリなのかな…」
とりあえずこれにしてみるかと、マサヤはフーフーと端子に息を吹き掛けてからカセットを差す。
「確かファミコンをやる時はこうする決まりなんだよな、あれ、なんだこれコントローラーが小さいな、ボタンも少ないし、しかも本体と有線で繋がってるのか」
始めて触るファミコンに戸惑いながら、近くにあった椅子に腰掛けスイッチを入れた。
ピコピコした電子音に血が垂れたようなドットの表示で
『Bloody Quest』の文字。
『NewGame』を選ぶと名前の入力画面になる。
「これは主人公の名前か、じゃあ、マサヤでいいか…」
マサヤは本名でRPGをやる派であった。
名前を入力しスタートボタンを押す。
その瞬間、マサヤは強烈な目眩に襲われ、視界は一面の闇に閉ざされ、耐えきれないほどの体の重さを感じマサヤの意識は奪われていった。
夕暮れの西日が差し込む雑居ビルの一室
そこにはテレビとゲーム機だけがただ残されていた。