第0話 とある少年の第一印象 滄
正直、一目惚れだった。
性別を聞かされて愕然とした。
それはないでしょう、神様……などと嘆いてみても、男に一目惚れしてしまった事実は消えない。
そして困ったことに、彼――ウィルは良いヤツだった。何かとトロくさく、同年代の子供たちにはバカにされがちなボクに対しても、他の皆へのそれと変わらぬ態度で接してくれる。
あと、名前についてもだ。
ジェイド、というのはよくある名前で、この村だけでも5人もジェイドが居て、更に困ったことに、ジェイド=ヴィオラですらもう一人居るのである。しかも同年代に、だ。だから区別するために愛称がつけられるのだが、もう一人のジェディはともかく、ボクにつけられたジェイというのはあまりにひどくはないだろうか。
だったらもうジェイドで良いじゃないか。大人のジェイドは誰それのお父さん、という風に呼ばれるんだから。最後の一文字をとったせいでなんだか間の抜けた響きになってるよ。
などと思ってはいても、主張することのできない弱虫なボクを、彼はジェイド=ヴィオラ=テミさん、とフルネームで呼ぶことで区別してくれた。
ボクを呼ぶ、その声がとても綺麗で、何度でも呼んでほしいと思ってしまう。
だが男だ。
本当に、なんでアレで男なんだろうか。
せめて友達になれたら、そう考えて、
いや『せめて』って何だよ、と自分にツッコミをいれるボクだった。
びーえる? いいえ、断じてびーえらない。