表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
色彩の無い怪物は  作者: 深山 希
第二章 無彩色の楽園と蒼紅の旅路
169/267

閑話 家族として

 別れは済ませた、と。


 変わらぬ笑みを浮かべたままで、彼はこともなげにそう言った。


 逢いたくない、わけがないだろう。と、こちらがそう考えることさえも否定するように、平静に。それは装うふうですらなく、ごくごく当たり前に、本心からそれで良いのだと言っているとしか思えない態度で。


 同情や憐憫はおろか、共感さえも拒絶する。


 ルビアであれば理解できるのだろうか。

 アルならば想像がつくのだろうか。

 彼が特別だと呼ぶ、たったふたりの友達ならば。


 壁、と呼ぶほどわかり易いナニカがあるわけではない。それは目には見えず、触れてもそれとわからぬほど柔らかな、けれど絶対的な断絶――無彩色の隔たりが、其処には確かに在った。

 でなければ、自分を探してくれている友達と逢えないというのに、心配されるようなことは無い、などという言葉が出てくるものか。


 彼は、わたしたちには、弱音のひとつも吐かない。


 此処の皆を大事にしてくれているのはわかる。


 けれど、それは、順番がつけられるものなのだろう。アルやルビアのように、他の誰とも比べられないような存在では、ないのだろう。


 心の奥深くになど、そう簡単に立ち入ることはできないとわかってはいるが、それでも悔しいとは思う。いや、もっと単純に腹が立つ。

 彼にとって自分たちが……自分が、ただ魔女に託された護るべき者に過ぎないということが。


 恋愛感情を向けてほしい、などと思うわけではないけれど、初めから対象外なのは気に入らない。いつぞやの、女の子だけで集まった時にも出た話だが。


 わたしは、ただわたしとして見られたいのだと思う。保護対象のひとり、ではなく、他の誰とも違う、一個人として。


 味方にすら弱さや脆さを見せない彼の在り様は、なるほど、王としては理想的なのかもしれない。


 けれど泣き言のひとつも聞かせてもらえないというのは、家族のひとりとしては寂しいし、哀しい。

前回の補足。蛇足じゃないといーなー。

ルナが泣いて、サニーが呆れて、アニーが怒ったのは、だいたいこういう理由。

誰の視点かはご想像にお任せします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ