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異世界憑依で運命をかえろ  作者: のこべや
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目が覚めると

ブックマーク、ありがとうございます。励みになります。


 目を開ければ、薄いレースのカーテンに覆われた天井とやたらふわふわと肌触りのいい布団の中であった。これがいわゆる女の子の憧れ天蓋付きのベットというやつかぁと感嘆して見上げていたがここはどこだろう? ボクの記憶にないのは当たり前だけど彼女の記憶にもない知らないベットの上というのはどういうことだ。

 えっとぉ~ ボクはどうなったんだっけ? 確か精霊術を暴走させたロザリアをなんとか落ち着かせて、その後現れた傷だらけのステラの傷を治して…。そのままマナ切れで気を失ったのか…


「そうだッ! ロザリアとステラは?」


 ボクは、二人の安否が気になり上半身を勢いよくベットから起こすが、グラリと体が揺れて、そのまま元に戻るように後ろに倒れた。幸いこれでもかというほど柔らかい布団だったので痛みはないが、何だろうこの倦怠感。だるい~~~。


「お嬢様ッ?! お目覚めになられたのですかッ?!」


 ボクがベットの上でモダモダしていると、薄いカーテンの向こうに人影がうつり。「失礼します」と一言かかるとカーテンがサッとあいた。 そこには、切り裂かれていない綺麗なメイド服に身を包んだステラが立っていた。


「ステラッ?! 無事だった…のですね」


 ボクは素の言葉遣いが出そうになり慌てて軌道修正する。ダメダメ、ボクはお嬢様、お嬢様。


「お嬢様ッ!」


 そんなボクには気にも止めず、ステラはボクの側までくるとその場で跪きベットから出ていたボクの手を両手で握りしめた。


「あぁぁ お嬢様 本当に生きていらっしゃるのですね」


 彼女はボクの手をそのまま自分の顔まで持って行くと愛おしそうに頬摺りする。その目から、大粒の涙が流れ落ちていることに手の甲を通じて感じられた。

 いきなり美人なお姉さんに手を取られて頬摺りされるなんてされたことないボクはそのまま固まっていた。

 うおぉぉ~~ 静まれボクのチキンハートッ ドキドキするなッ この状況で顔真っ赤って女の子としておかしいだろッ 平常心ッ 平常心ッ


「あっあっあの シュテラ…」


 でてきた言葉は噛みまくり。くぅぅ~ 無理ですゥ。


「もっ 申し訳ありません… つい…」


 ボクの挙動不審の態度をどう捕らえたのかわからないが彼女は慌てて手を離してくれた。それでもジッとボクを見つめる彼女の瞳からは涙が止まることはなかった。

 苦しい。申し訳ない。こんなに彼女が生きていたことに歓喜している人が目の前にいるのに、本当はレイチェルという少女は死んでしまったんですよなんて絶対言えない。絶対バレたくない。

 ボクは話しやすいようにベットから上半身を起こそうとすると、ステラがそっと背中を支えて柔らかで大きなクッションを背中の後ろに入れてくれた。いたせりつくせりですね。


「それでステラ ロザリアは? それにここはどこですか?」


「ここは 王城の客室でございます ロザリア様はお隣のお部屋でお休みになっておられます」


 ステラの話によると、あの後、気を失ったボク達を警邏中の兵士達に、王都にある侯爵家の別邸まで運んでもらう事になったのだが、なぜか行き先は王城であった。ボク達の報せを聞いた王妃様がそれはもう取り乱していたらしく、侯爵家には行かせず王城の客室に運ばせると、王家お抱えの治癒師にボク達を診せたのだった。王妃様 自分の娘でもないのに親身だなぁ~。

 診断の結果、命に別状もなくマナ切れを起こしているのでしばらく安静にしていれば失ったマナも回復し、元気になるということであった。さっきから感じてる体の倦怠感はこれらしい。しかし、ロザリアは思いのほかにマナを消費していたため、回復に時間がかかり、まだ目を覚ましていないようだ。

 よかった。この世界で目覚めていきなりヘビーな状態に巻き込まれたけどなんとかなったようだ。

 ステラに水を一杯もらうと、今は体を休めた方がいいとステラはボクをベットに寝かしつけ、ボクが眠るのを確認するとそっと部屋から出ていった。

 彼女が出て行った事を音で聞いたボクは閉じていた瞳を開けて体を起こす。部屋の中は暗く窓はカーテンでしまっていたため外は見えないが多分もう夜なのだろう。


「明かりが欲しいな…」


 ボクは明かりが欲しくて、こうファンタジーのお約束のアレを想像する。すると目の前にフワリとイメージ通りの光球が現れ、辺りをやさしい光で照らし出した。

 すごいッ これって精霊術だよねッ この世界ではこんなにも身近で簡単にできてしまうモノなんだ。

 ボクはうれしくなってフワフワ浮いている光の玉をいろんな角度からマジマジと凝視する。あまりにも光を見過ぎて目が痛くなったのはお約束だ。

 明るくなった部屋をボクは見渡してみる。さすが王城の客室は高そうなモノがいっぱいあるなぁ。小市民のボクには価値なんてわからないけど触ろうという度胸はない。そんな中、枠を綺麗な金地の模様で象った大きな姿鏡があった。ボクは、ベットから抜け出すとその鏡の前に立った。

 この世界にきて初めてこの体の少女。レイチェルと対面する。

 流れるように腰まで伸びたプラチナブロンドは光に照らされキラキラとしていた。もう少女ではないと主張するようにスラッと伸びた四肢。その割にはちょっと垂れ目がちの大きな蒼い瞳と小さな鼻筋。ぷっくりと膨らんだ唇はまだあどけなさを残していた。少女から大人に変わる瞬間。そんな美しさを彼女はもっていた。

 改めてこれが今の自分なのかと確認するようにボクは鏡に映った顔をいろんな角度に向きながら鑑賞した。

 はっきり言おう。可愛い。もし自分でなかったのならおつき合いしたいぐらいだ。いや、高嶺の花すぎて声もかけられないだろうな。

 おっとそんな事より練習だ。何せさっきから立っているポーズが肩幅に足を開けて、手を前に組んだ出で立ちである。組んだ腕の上になにやら柔らかいモノが乗ってきたのはなんだか新鮮だったがとても、お嬢様である彼女にはあってない姿であった。

 ボクは教本を思い出してスッと立ってみる。うん、似合っている。ボクはそのまま体をずらしながらいろんな角度で変なところはないか立ち姿を確認していく。

 あまりに似合っているからなんだかちょっと楽しくなってきたボクは、その場で淑女の歩きをしてみたり、椅子を持ってきて淑女の座り方を練習してみたりといろんな事を試してみた。

 どれもこれも彼女は様になっていたため、つい調子にのってアレをやってしまった。小首を傾げながら鏡に向かってニッコリ微笑んでみる。

 可愛い。自分で言うのもなんだが破壊力ハンパないなぁ~。これはウルウル上目遣いなんかはもはや凶器に近いかもなぁ~。

 そんな事を考えながらニコニコしながら鏡を見ていると―――。


「あざとい」


 そんな声が聞こえたかと思ったら鏡に映ったボクの後ろに見知った者の姿が映った。


「なっなっなっなっ なっちゃんッ?!」


 後ろを振り返るとそこには、赤と黒を基調にしたゴシックロリータ調のドレスを身に纏い、長い黒髪をツインテールにしたなっちゃんが立っていた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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