ちょっと休憩
ブックマーク、ありがとうございます。励みになります。
早速 ヒロインに手紙を送ることにした。どう書けばいいのかわからなかったボクは行儀作法の先生であるサリー監修の元で書き上げることにした。記憶が無くなって心配であった文字は全部ではないがなんとか書けていた。日本語だって全部も書けないのでよしとしよう。
手紙はいいのだけど、なぜか机に向かって手紙を書いていたボクの隣にぴったりと椅子をつけてロザリアが座っているのは解せぬ。近いって近い。
「あの ロザリア」
「もう書き終わりましたかお姉様? ところでどなたにお手紙を?」
そう言うことではないのだけど妹とはいえ女の子にぴったりくっつかれるとドキドキしてしまう。そんな内心悶えているボクの手元の紙をロザリアはヒョイと眺める。
「ユスティーヌ・フラダ男爵令嬢?」
小首を傾げる彼女はヒロインを知らないようだ。そのままロザリアは机の側に立ってボクの手紙の助言をしていたサリーを見上げるように聞いた。
「知ってるかしら?」
「はい お嬢様」
「ユスティーヌ様は元平民の娘ですが マナ保有量の高さに男爵様の御養女となられた方でございます 男爵様が大層お隠しになられていたみたいで今まで夜会などには参加なされていなかったと聞き及んでおります」
「へぇ~ 私が知らないわけね それにしてもマナ保有量が高いというのはいろいろめんどくさいのよね 同情するわ」
うんざりとした顔でため息を吐くロザリア。彼女も保有量は高いのでなにかと周りから狙われて、きな臭い環境なのだ。そんな苦労を共感しているのだろう。
そういえば、ヒロインはロザリアの名前は出していたけどレイチェルは知らなかったようだ。
できれば、この期にボクも知り合いぐらいにはなりたいなぁ。一度会いにいってみようかな。しかし、男爵邸に訪れるにはボクの方が爵位が上なので初対面なのにこちらが出向いては侯爵家の威厳にかかわるし向こうにしてみれば何事かと身構えてしまうだろう事でそれはできない。かといって向こうから来てもらうのも理由がないし気が引ける。
それよりもボクは今王城に厄介になっていたんだった。そろそろ領内に帰るなりしないといけないんじゃないだろうか。
ボクは書き終わった手紙をサリーに渡しチェックしてもらっている間に隣で思案顔のロザリアに聞いてみた。
「ロザリア 体の具合はどうですか?」
「はい お姉様 だいぶ起きていられるようになりましたわ」
一日の大半を睡眠で費やしていた彼女も普段通りに生活できるまで回復したようだ。
一息入れるため紅茶の用意をしていたステラに顔を向ける。
「そろそろ王城から出て領内に戻った方がいいでしょう」
「申し訳ありませんお嬢様 今 領内から護衛の兵を増員させております故 一度王都内の別邸に移り旦那様がお戻り次第領内にお帰りになられるのがよいかと」
何だか物々しくなっているけど、いろいろやらかしているから仕方がない。それでも王城から出て別邸に行くのならいいか。相手は王族だしいつまでもご厄介になっているのもなんだしね。
「では別邸の方に戻りましょう ロザリアもいいですか?」
「はい お姉様」
うん いい笑顔だ。あまりの笑顔に反射的に頭をなでてしまった。フワフワの髪の毛の手触りが気持ちいい。
「えへへっ」
屈託ない笑顔がまぶしい。なんだかいろいろあって彼女が子供っぽくなっているような。しかし、可愛い。ボクの妹超可愛い。
いかんいかん 変な道に迷い込みそうだ。ボクは彼女の髪に張り付く腕をなんとか引き離すと誤魔化すようにステラに話しかけた。
「王妃様に今回の事のお礼を言いたいのでわずかな時間でもお会いできるよう取りはからってください」
「かしこまりました」
腰を折って一礼するとステラは部屋から出ていった。その後を追うようにチェックが終わった手紙を出すためにサリーも出て行った。
しばしの沈黙。
しまった。ロザリアと二人きりだ。いや、正確には二人の侍女の代わりに王宮のメイドさんが部屋に待機して居るんのだけど。
何か話さないと。あぁぁ、女の子って普段から何話しているんだ? わからん。わかるわけない。ボクは男なんだからガールズトークなんて知るかぁ。
半ば変な方向に思考が脱線していったボクを余所にロザリアの方が何気なしに口を開いた。
「そういえば お姉様は殿下に会われたのですよね?」
用意された紅茶を手にとって一口、口に含む。
「えぇ お会いしました」
その問いの意図が読めないボクは素直に答えた。
「どんな方でしたか?」
おっ やっぱり気になりますか? 女の子だったら気になるよね。格好良かったもんなぁ王子。
「そうですね とても誠実で正義感が強く紳士的でお優しい方でしたよ」
べた褒めでどうだとロザリアの方に向くと瞠目した彼女の顔が見えた。
「気難しくて人を寄せ付けない雰囲気を醸し出した怖い感じの方のまちがいではありませんの?」
それは誰のことでしょうか? 二人して小首を傾げることになってしまった。
「まさかそのような方ではありませんでしたよ 傷ついた私を自分のことのように心配なさるほど責任感も強い方でしたし 歩けない私をわざわざ馬車まで抱きあげて運んでくださるほどお優しい方でした」
「だっ 抱きあげるゥッ!?」
淑女あるまじき声が部屋に響く。あれ? そこに食いつきましたか。
一拍 固まったロザリアは次の瞬間ギリギリと歯ぎしりが聞こえてくるぐらい唇をかみしめると。
「許せない 殿下といえども私のお姉様に……」
ただならぬ雰囲気を醸し出してブツブツとつぶやき始めた。
おや、殿下の印象がだだ下がりなのはなぜだろう。おかしいなぁ、見たまま感じたまま話したはずなのに失敗したか。
これ以上はやぶ蛇になりそうなので素知らぬ顔で紅茶に口をつけた事で彼女の最後のつぶやきは耳に入らなかった。
「……絶対に渡すものか」
そんな物騒な事を言っていることも気づかず、ボクは女の子の普段のすごし方をどうやって知ろうかとぼんやりと考えていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。




