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3-2. スフォンでの再会、そして……(その2)

初稿:19/07/17


<<<登場人物紹介>>>


キーリ:女顔の闇神魔法使い+アホみたいなパワーを持つ剣士。パーティではアタッカー役。

カレン:凄腕の弓使い。矢と同様に料理でも凄まじい力で食った人間の胃袋を破壊する。

ギース:パーティ斥候役。とりあえず舌打ちしないと落ち着かない。

シオン:めでたく新パーティリーダーとなった。パーティのみならずギルドを含めた愛されマスコット。





「いやぁ……マジでちょっと焦ったぜ」


 倒したG・オークたちから魔素の粒子が立ち昇る中でキーリたちは素材を切り取っていたが、ふと上がったイーシュの安堵した声にみな顔を上げた。


「ジェネラルオークのことか?」

「決まってんだろ! いや、冗談抜きでやべぇと思ったって。スフォン(ここ)の迷宮も成長してるってのは知ってたけどよ、まさかあんな大物が出てくるなんて思わねぇだろ!?」

「Bランクモンスターだもんね」


 手を止めずカレンも同意し、その隣でギースが軽く鼻で笑った。


「ハッ、なんだ、ビビってたのかよ?」

「び、ビビってねぇよ! つか、そういうギースだって動揺してたじゃんか!」

「そら想定外だったからな。ビビんのとは違うんだよ」

「でも驚くのも当然だよ。この迷宮ランクはCだし、それだって王国内だとトップクラスにレベルが高いとこだもん」

「確認しないと断言できないですけど、たぶんここでBランクモンスターが確認されたのは初めてだと思います」


 シオンはオークから牙を切り取り、ふぅ、と額の汗を拭いながら立ち上がってキーリの方を向いた。


「……やっぱり、魔素濃度が濃くなってるのが原因なんでしょうか?」

「ほぼ間違いなくそうだろうな」


 キーリが頷き、ジッと地面を見つめる。

 キーリの眼にはハッキリと地中を這う魔素の流れが見えていた。そこかしこを川の様に流れる魔素。これまで幾つもの迷宮で確認してきたが、スフォンの迷宮はそれらと比べても特に流れが速かった。


「迷宮自体がデケェから成長はゆっくりみてぇだけど……着実にこの迷宮も深く、広くなってるな」

「どこだっけ……ええっと、そうだ、オーフェルスの迷宮みたいに迷宮核を潰してしまうってのはできねぇの?」

「できなくはねぇだろうが……」

「そうなるともう冒険者が潜る必要はなくなりますからね。街自体の経済が立ち行かなくなると思いますよ」

「そうなるとみんな困っちゃうもんね……」

「ちっ、この街の冒険者連中みんな雁首揃えておまんまの食い上げってわけか」


 そうなれば冒険者のみならず、この街で生計を立てている商店や職人たちがそろって職を失うことになる。現実的な解ではなかった。


「そっか、そりゃそうだよな」

「とにかく、早く街に戻ってシェニアさんに報告しましょう。上の階層でも手強いモンスターが出るようになってますし、被害が出る前に注意喚起と対策を練ってもらった方が良いです」

「だな」


 シオンの言葉に頷くと、みんな作業のペースを上げていく。

 G・オークの証拠となる巨大な牙やオーガの角など、重要な素材を手早く取り分けるとキーリの展開した影の中に次から次に放り込んでいく。そうして程々に片付いたところでギースが他のモンスターの接近を察知したため撤退、地上へと戻っていった。


「う――」


 一口に地上へ帰還する、といってもスフォンの迷宮はただでさえ広大であり、更には深く深くへと成長している。キーリたちは最深部へと達していたために戻るにしても丸一日を要し、彼らが再び太陽を見たのは帰還を開始した翌日の夕方前であった。

 迷宮から戻ってきた時はいつものことであるが、晴れた日の陽光は眼には毒だ。暗がりに慣れた瞳に夏の熱射が突き刺さり、キーリは眩むような日差しに顔をしかめた。


「夏だねぇ……」

「迷宮ん中の蒸し暑さも大概だけどよ、この夏の暑さもどうにかなんねぇかなぁ……」

「ちっ、どうにかなんならとっくの昔に誰かが何とかしてんだろ……」


 ぼやくイーシュにギースが悪態を吐くも、心なしかキレがない。夏の暑さにうんざりしながらも一同はギルドへと向かっていった。


 巨大なスフォンの街に似つかわしい巨大なギルドの建物。イーシュが勢い込んで扉を開けると、外の熱気とは百八十度違った涼しい風が流れ出す。それが汗ばんだ体を一気に冷ましていって、イーシュのみならず全員がホゥと安堵したような吐息を漏らした。


「あー涼しい(ずずじぃ)……」

「室内限定って言っても、これは堪らないよねぇ……いやホント、なんで今まで思いつかなかったんだろ……?」


 ギルド内を冷やしているのは、シオンが発明した冷風発生用魔法陣――いわゆるクーラーであった。水のミストを発生させる魔法陣と穏やかな空気の流れを発生させる魔法陣を組み合わせたもので、キーリたちの転生前の世界に比べれば冷却能力も低く、定期的に誰かが魔力を注入する必要があるものの、今日の様なうだる暑さの外に比べれば雲泥の差である。

 ましてここはギルド。魔力の補充人員に事欠かず、冒険者たちがこぞって魔力を注入して冷風を堪能していた。以前であれば汗臭さに満ち満ちていた屋内も今ではいつ来てもスッキリヒンヤリ。併設の酒場でも酒を呑むわけでもなく冒険者が突っ伏してだらけていた。


「報告前に俺らもちょっくらのんびりしてこーぜぇ……」


 そう提案しながらイーシュがふらふらと酒場へと引き寄せられていく。キーリとシオンは苦笑していたが、そこに突如呆れたような声が掛けられた。


「――全く、ワタクシがいない間に腑抜けてしまってるんじゃないですの?」

「うむ。この発明が優れているのは認めるざるを得ないが、この程度で堕落するようでは久しぶりに鍛え直しが必要なのであるな」


 聞き覚えのある特徴的な口調と声。まさか、と全員が振り返るとそこには良く知る二人がしかめっ面で立っていた。


「アリエス様っ!?」

「それにオットマー先生もっ!?」


 唖然として驚くカレンたち。アリエスはしかめっ面でイーシュを睨んでいたが、不意にそのニコッと笑って喜びを顕わにした。


「お久しぶりですわ。元気にしてまして?」





短くてスマソ<(_ _)>

引き続き宜しくお願い致します<(_ _)><(_ _)>

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