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3-1. スフォンでの再会、そして……(その1)

初稿:19/07/13


<<<登場人物紹介>>>


キーリ:女顔の闇神魔法使い+アホみたいなパワーを持つ剣士。パーティではアタッカー役。

カレン:凄腕の弓使い。矢と同様に料理でも凄まじい力で食った人間の胃袋を破壊する。

ギース:パーティ斥候役。とりあえず舌打ちしないと落ち着かない。

シオン:めでたく新パーティリーダーとなった。パーティのみならずギルドを含めた愛されマスコット。





 レディストリニア王国・スフォン





 迷宮内の開けた空間でオーガが数体、肉を貪り食っていた。

 それらが食しているのは人間――ではなくオークであった。鋭い歯で豚に似た頭にかじり付き肉を引き裂く。血が滴り落ち、それすらも美味だとばかりに舌先で舐め取っていき喉を潤す。

 低い唸り声を上げ、白い眼を細めて満足そうである。彼らはニヤリと仲間同士で醜悪な顔を歪め合うと、再び食事へと集中し始めた。


「――、――」

「……■■■?」


 そこに何か、囁くような空気の揺れが起きた。オーガの一体が食事を止めて顔を上げてのっそりとした動作で周囲を見回す。が、彼らの食事を妨げるようなものは何も無かった。

 低く唸りながらオーガが食事を再開する。

 だが――遥か遠くから飛来した一本の矢がその頭部に深々と突き刺さった。


「■■■、■■――っっ!!」


 その一本を皮切りに次々と矢が飛来する。風魔法が込められたそれはライフルのように旋回し、淀んだ空気を切り裂いてオーガたちを貫いていく。

 オーガたちが雄叫びを上げる。ダメージを負ったものの致命傷には至らず、その屈強な体はダメージなどなかったかのような動きで更に押し寄せる矢を、手持ちの武器で叩き落としていった。

 どっしりと構え、来る敵を迎え撃つ体勢。彼らの鋭い視線が注がれる中で、地を這うような低い姿勢で独りが矢の飛んできた方角から広間へと飛び出した。

 両腕に短剣を握り、加速。細身の体から伸びる長い脚を回転させ、オーガたちの懐へとギースが飛び込んだ。


「■■■■っっっ――!!」


 棍棒が強かにギースに向かって振り下ろされる。えぐい音が地面を激しく揺らし、しかしギースの体は直前で宙へと舞い上がっていた。


「――しっ!!」


 限界まで体を捻り、その反力を目一杯脚に乗せた蹴りがオーガのこめかみを捉える。魔素によって強化された肉体。そこから繰り出された一撃に、オーガの一体がたたらを踏んだ。

 シュタッと軽やかに着地。そこに別の個体がギースめがけて武器を叩きつけてくる。

 しかし。


「させねーよ!!」


 遅れてやってきたイーシュが背後から飛び出し、両手の剣を使って巧みに受け流した。


「■■■■■っっっ!!」


 咆哮を上げて何度も何度も武器をイーシュに叩きつける。ただの人が受けるには強烈すぎる打撃だが、イーシュは苦もなく受け流し続け、やがてニッと笑って叫んだ。


光精霊の輝きホーリー・ブライトネス!!」


 重ねた剣の交点から眩い光が溢れ出す。薄暗い迷宮内で輝くその光は強かにオーガたちの瞳を焼いて、悲鳴を上げながら眼を押さえて仰け反った。

 そこに。


「――頭がお留守だぜ?」


 キーリが高く跳躍した。

 身の丈ほどもある大剣を振り上げ、迫る。体ごと回転させ、巻きつけるようにして無防備になったオーガめがけて叩きつけた。

 瞬間、頭部が爆ぜる。グチャリと音を立てて潰れ、そのまま剣がオーガの強靭な肉体を真っ二つに斬り裂いた。

 半分になった体が左右に別れて倒れ、断面から魔素の粒子となって迷宮へと還っていく。まず一体、と着地したキーリが体を起こすと、ギースが相手をしていたもう一体もカレンが放った風の矢に次々と頭部を貫かれて絶命していった。


「■■■……!」


 仲間が呆気なく倒されたのを見て慄いたか、残った一体がキーリたちに背を向け慌てて迷宮の奥へと逃げ出していく。

 だが。


「……■■っ――!?」


 すぐにその一体が何かに弾き飛ばされた。仰向けになってキーリたちの方へ転がっていき、足元に転がったそれをキーリが見れば、首の骨が不自然な向きに折れ曲がっている。

 そして、暗い通路の奥からやってきたのは――


「ジェネラルオークっ!?」


 通常のオークよりも二回りも大きい肉厚の巨体。その上には頑丈そうな鎧と兜を身に着けている。そんなBランクに位置づけられる強大なモンスターが、オークを五体引き連れてやってきた。

 先頭でやってきたジェネラルオークは、倒れたオーガの傍にやってきて見下ろすと、その太い足でオーガの頭を容易く踏み潰した。


「■■■■■■■■■――っっっっっっっ!!」


 オーガによって食い散らかされたのは彼の部下だったのか。怒号とも慟哭とも取れる大きな咆哮を上げ、震える空気によって天井から塵が舞い落ちてくる。そしてその腹いせをしようというのか、ジェネラルオークたちは一斉にキーリたちを睨めつけた。


「ちっ……またトンデモねぇ野郎が出てきやがったな」

「どうしよう……ジェネラルオークだけでも大変なのにオーク五体とか……!」


 弓を構えながらもカレンのこめかみから冷や汗が流れる。睨みつけてくるジェネラルオークの圧をなんとか受け止め、だがジリジリと後退していく。


地精霊と水精霊の遊戯ノーマック・ウィンディ・コース!」


 そこに男性にしては甲高い声が魔法を紡いだ。するとジェネラルオークたちの足元が一気にぬかるみ、瞬く間に膝下までが泥に浸かって身動き取れなくなっていった。


「シオン!」

「落ち着いていきましょう! 今の僕らならジェネラルオーク一体くらい倒せるはずです!!」


 後方で警戒にあたっていたシオンが前線に進み出て仲間たちを励ます。その叱咤にカレンやイーシュも落ち着きを取り戻して、顔つきが変わっていく。


「まずはオークたちを切り離します! キーリさんはジェネラルオークの足止めを! イーシュさんたちは急いでオークたちを倒してください!」

「了解したぜっ!!」

「■■■っっ!!」


 シオンが指示を飛ばす中、その脚力を活かして真っ先にジェネラルオークがぬかるみから抜け出した。

 それを待っていたシオンは、地面に手をつけると予め構築しておいた魔法を放つ。


地を掘る精霊(クラッシュ・ウォール)!」


 魔法が壁を伝い天井へ。狙いの場所に達すると天井の壁が次々と崩れていき、未だ泥沼でもがいているオークたちへと降り注いでいく。

 分断されたジェネラルオーク(指揮官)とオークたち。キーリはシオンにサムズアップを送ると、ジェネラルオークに力任せに切りかかっていった。


「おらぁぁっっ!!」

「■■■■っ!」


 大剣とG・オークの篭手がぶつかり合う。ただのオークであれば腕ごと叩き切られているところであるがさすがはG・オークと言うべきか、キーリとの力比べにも容易く負けはしない。

 低い唸り声を上げながらキーリの顔ほどもある大きな拳を叩きつけてくる。キーリはそれを上半身だけを反らして避け、伸びた腕を片腕で掴むと勢いを利用して投げ飛ばした。

 数百キロはありそうな巨躯が軽々と宙を舞う。硬い地面に叩きつけられたG・オークだが、ダメージは小さくすぐにその体をむっくりと起こした。

 G・オークが醜悪な顔をしかめる一方、キーリは鼻を鳴らしてみせる。そして相手が自分を視認しているのを認めると、キーリは大剣を背中の鞘に戻し、口端をニヤッと吊り上げると「かかってこい」とばかりに指をクイッと曲げた。


「……■■■っっっっっっ!!」


 キーリの挑発が伝わったのだろう。G・オークは一際大きい咆哮を上げると、他のメンバーには見向きもせずにキーリに向かっていく。

 ブンブンと腕を振り回す。大振りではあるが、その速度は凄まじく並以上の冒険者ではかわすのもやっとだろう。しかしながらキーリはその全てを涼しい顔で、あくび混じりに避けていった。

 振り抜かれたG・オークの拳が壁に激突する。打撃の威力で硬い壁があっさりと砕け散っていき、力任せに壁ごと薙ぎ払った礫が散弾となってキーリに降り注ぐ。

 オークに比べて柔らかい人間であれば一撃でも当たれば致命傷になりかねないが、キーリは自身の前に黒い影を発生させ、それらが全て黒い空間へと吸い込まれていった。

 かと思えば、G・オークの背後にも同じ様な影が突如として生まれ、飲み込まれた岩の散弾がG・オーク自身に突き刺さっていった。

 さらに。


「背中ががら空きだぜ?」


 キーリもまた影の中からスッと現れる。声に反応してG・オークが振り向くが、その直後にキーリの蹴りが吹き飛ばした。

 巨躯が地面をえぐりながら滑っていく。G・オークの顔が苦痛に歪み、それでも体を起こすが、その眼に飛来してきた矢が突き刺さった。


「■■■■■■っっっっっ――!!」

「おまたせ、キーリくん!」

「なぁに、ちょっち遊んでただけだからな。たいして待ってねぇよ」


 悲鳴を挙げるG・オークを一瞥し、次弾を番えながらやってきたカレンにキーリがウインクして応える。


「むしろ思ったより早かったぜ?」

「へへっ! キーリにばっか美味しいところを持っていかれちゃたまんねぇからな」


 遅れてイーシュ、ギース、そしてシオンがやってくる。彼らの後ろには、すでにオークたちが転がっていて、体から魔素の粒子が立ち上っていた。


「――で、後はG・オーク(こいつ)を料理すりゃおしまいってわけだな?」


 ギースが足元のG・オークを見下ろす。それだけなのだが、G・オークはただの人間に恐怖した。自分に比べて矮小なはずの人間。餌となるべき存在。そのような存在に見下されたのだが、屈辱よりも恐怖が勝った。


「なら――とっとと終わりにするぞ」


 そう言ってギースは手にした短剣を握る。そしてG・オークめがけて勢いよく振り下ろしたのだった。





お読み頂きありがとうございました<(_ _)>

引き続き宜しくお願い致します<(_ _)><(_ _)>

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