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1-1. 終焉のプロローグ(その1)

初稿:19/06/28


<<<登場人物紹介>>>


教皇:ワグナード教皇国のトップ。なんかを企み中。

エルンスト:教皇国出身の元英雄。鬼人族の村でユキを誘拐した。








 ワグナード教皇国・皇都ロンバルディウム


 大神殿最深部




 コツ、コツ、と革靴の底が床を叩く音が静かに響く。歩く廊下は暗く、両壁に規則的に取り付けられた白い照明が男の姿を薄っすらと照らしている。

 銀フレームのメガネを掛け、白い髪をオールバックになめつけた男は神父服の裾を揺らし、やがて一つの大扉へとたどり着くとその歩みを止めた。


「教皇様にお会いしたい」


 神父服の男――エルンストがそう告げると、扉の前に立っていた双子の姉妹が恭しく一礼し、左右の大扉の取っ手を掴んだ。

 ギィィィ……と重厚な扉が音を立てて開いていく。エルンストが中に入るとすぐに再び扉が閉まった。扉からはまっすぐにカーペットが伸び、両脇に一定間隔で置かれた照明が高く天井へと立ち上っている。彼は足元から部屋の中央に伸びるそれを見通すと、その歩みを再開させた。

 部屋の中央には玉座。四角いスペースを足元からの照明が照らし、その姿を浮かび上がらせている。白く長い髪を持った性別の判断に窮する容姿のその人は、手にした真っ赤なワイングラスを傾けると口元を穏やかに緩めた。


「ただいま戻りました」

「おかえり、エルンスト。ご苦労さま」


 グラスの中の液体をくるくると回しながら部下を労う。エルンストは一段高くなったその玉座のスペースへ登ると軽く黙礼した。


「状況はどうだったかな? と言っても、その様子だと特段の問題は無いようだけれど」

「はい。当初の想定とほぼ同じペースで進んでいます」

「そう。今はどれくらい溜まっているんだったかな?」

「現状で七割程。それ自体は想定より少ないですが、ペース自体は上がっています。このまま放置しておけば完全に溜まり切るのも時間の問題でしょう」

「うん、ありがとう。しかし……待ち遠しいね」


 グラスの中身を一口飲むと、教皇の口からはどこか色気のある吐息が漏れる。


「待ち遠しい時間が長いほど、成就した喜びは何事にも代えがたいものへと昇華するでしょう。それに、これまでの時と比べれば残された時間もほんの僅か。静かにここでお待ちになるのが良いかと」

「分かってはいるのだけれどね……それが中々に難しいんだよ」


 そうは言うものの、教皇の表情に焦りらしきものは見当たらない。頬杖をついてグラスの中身を眺めながらそこに映る浮かんだ笑みに眼を細めた。


「まあ分かったよ。それと、彼女の様子はどうだい?」

「お姫様でしょうか? 彼女なら現在もお部屋でお休みになられています」

「対策に綻びは?」

「兆候は見られません。闇神の能力も教皇様が編まれた光神魔法によってほぼ完全に封じることができておりますので」

「そう、ならば良いんだけど……彼女は少々お転婆だからね。それに賢い。目覚めるのはまだ先だろうけど、機嫌を損ねておイタをさせないよう丁重に扱ってね?」

「承知しております」


 表情を崩さないまま腰を折ったエルンストは、姿勢を戻すと教皇に背を向けた。

 教皇は彼が扉の向こうに消えるとグラスに残っていた中身を飲み干す。吐息がグラスの上っ面を撫で、暗闇が広がる天井を見上げた。


「後、少しか……もう少しで全てが終わる。そうなれば……君は自由だ。だから待ってておくれ」





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