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5-1 ずっとスタンド・バイ・ミー(その1)

第2部 第25話です。

今話から第2章になります。

宜しくお願い致します<(_ _)>



<<ここまでのあらすじ>>

養成学校を卒業して三年が経ち、キーリ達は順調に冒険者としての実績を積み上げていた。そんなある日、仲間と祝杯を上げていたフィアはスラムの少年エーベルと少女ユーフェと出会った。

盗みを働き何とか生きている彼らを雇い、フィアは自宅の世話を任せる。同時に孤児である彼らと、家族と縁遠い自らを重ね合わせフィアは二人に家族としての情を抱いていく。

エーベルとの気持ちのすれ違いに悩みながら、三人は本当の家族のように心を通わせていったが、雨の日、エーベルはスラムの盟主でありギースの育ての親であるギュスターヴの手下に殺害されてしまう。

怒り、悲しみ、スラムに乗り込んだフィア達。キーリとギースはギュスターヴを捕らえ、フィアは殺害の犯人・シーファーと激闘の末に仇を討つことに成功する。しかし、エーベルを失った事はフィアの心に大きな傷を残したのだった。




 スフォンの街に夏がやってきて、過ぎていく。

 朝は過ごしやすく、昼間は汗ばむ程の暑さ。日本の夏を数多く過ごしてきたキーリにとってはこれでも過ごしやすいくらいなのだが、この国に住む人々にとっては十分茹だるような温度だ。

 夏のピークから晩夏に掛けて貴族や経済的に余裕のある平民は避暑へとスフォンを離れ、それなりに稼げる冒険者たちもこの季節は蒸し暑い迷宮内に潜ろうとはしない。皆、バカンスとばかりに他の街へ繰り出していったり、或いは故郷へと脚を向けていくため、商人としても旨味が少ない。自然とスフォンの夏は最も閑散とした季節であり、残るのは遊ぶことを知らない冒険者か、経済的に余裕の無い者、または普段から金遣いの荒い者といったところか。


「イーシュ! そちらに行きましたわよっ!」

「おう! 任せとけってんだ!」


 キーリ達はそうした数少ない冒険者たちの一人となっていた。

 この一ヶ月というもの、パーティ全体として迷宮へと潜ることを控えていた。迷宮に潜らずとも日々の鍛錬は怠らず体自体が鈍っていることはない。だが実戦の間が空いたことで感覚が鈍っていることは否めず、その遅れを取り戻すためにこの一週間は積極的に迷宮へと潜り続けていた。

 階層はやや深層。CからDランク上位のモンスターが当たり前に出てくるエリア。最初は久々の強敵相手に苦戦を見せていたが、一週間の間に感覚と連携をほぼ完全に取り戻した彼らはモンスターを圧倒していく。


「キーリさん、横から来ますっ!」

「あいよっ! 分かってる!」


 キーリとアリエスの前線組が攻撃を仕掛け、カレンとギースが彼らをサポート。その隙にすり抜けてきたモンスターに対してはイーシュが持ち堪えて時間を稼ぎ、後方からシオンが補助魔法を行使しながら全体を俯瞰し、適切な指示を各人に飛ばす。全員が油断なく、危なげなく戦っていた。


「フィアさん! そっちに一匹行きますっ!」

「……」

「フィアさんっ!!」


 シオンに大声で怒鳴りつけられ、フィアはハッとして顔を上げた。その瞬間、ゴーレムが彼女に向かって硬い拳を振り下ろしていた。何の準備もしていなかった体が動くはずもなく、フィアは思わず眼を閉じた。

 だが誰かが間に割って入り、何かがぶつかる音が響いた。


「キーリさんっ!」

「おおおぉぉぉらぁぁぁぁっ!!」


 掌で受け止めたキーリがゴーレムの腕を掴み上げる。筋肉の上に血管が浮かび上がり、叫び声とともにゴーレムを放り投げて壁へ叩きつけ、ゴーレムの右腕が肩から千切れ飛んでいった。その様子をぼんやりとフィアは眺め、しかし次の瞬間、彼女の体が横に引っ張られた。


「お嬢様、大丈夫ですか?」


 抱きかかえられたフィアの頭上からレイスの落ち着いた声が届いた。

 彼女が立っていた場所では、背後から迫っていたオークの鼻っ柱をギースが蹴り飛ばし、ナイフを突き刺していた。そこに止めとばかりにカレンが矢を突き刺し、聞き苦しい悲鳴を上げたオークの喉をギースのナイフが斬り裂いていく。他の場所でもモンスターの死体が転がり、いつしか戦闘は終了してしまっていた。フィアは呆然とその様を見ていたが、すぐに顔を青ざめさせた。


「す、すまな――」

「馬鹿野郎がっ!」


 立ち上がって謝罪を口にしかけるが、それもギースの怒鳴り声でかき消される。歯をむき出しにし、怒りを顔全体に滲ませたギースがフィアに詰め寄り、その胸ぐらを思い切り掴み上げた。


「ギースっ! 止めなさいっ!」

「謝ってすむような問題じゃねぇんだよっ! これで何回目だっ!? 気ぃ抜いておっ死ぬのはテメェの勝手だがな、テメェがくだらねぇヘマすりゃこっちまで危なくなるんだよっ!」

「すまない……」

「ギース様、手を」

「……ちっ」


 レイスから促され、ギースも冷静になったか彼女から手を離す。青い顔のまま俯き、悔恨に表情を歪めたフィアを見るとそれ以上責める気にもなれず、また責めてもどうしようもないと頭では理解できている。だが苛立ちは治まらない。

 ギースは思いっきり自分の頭を掻き毟ると足元の石の欠片を蹴飛ばして怒りを発散し、これ以上彼女に詰め寄らないようにフィアに背を向けた。


「注意しておいて良かったですわね」

「ああ……といってもなぁ」


 アリエスの安堵の声にキーリは応じ、だがギースと同じく頭を掻いた。

 今みたいにフィアが戦闘中にぼぅっと意識を離してしまうのは初めてではない。この一週間、幾度となく繰り返されてきた光景だった。

 決して動き自体が鈍っているわけではない。キチンと出来ている時は以前と変わらず判断も的確であるし、剣も魔法も申し分ない。むしろ前よりも強くなっているくらいかもしれない。

 だがふとした時に、フィアの意識が目の前の戦闘では無い何処かに向かってしまっていた。明らかに集中が途切れ、思考が完全に明後日へと向かい何も見えていない。低階層ではほぼ初撃で戦闘が終わってしまうために顕現していなかったが、深層に向かうに連れて露わになる機会も増えていっていた。


「……とりあえず今日は上に戻りましょう」

「すまない……」


 シオンが心配げにフィアを見上げてそうメンバーに伝える。今までは何とか仲間でフォローをできていたために事なきを得ていたが、このままでは彼女だけでなく他のメンバーも危険に晒してしまうだろう。

 そうした判断をしたシオンだが、フィアは顔色悪いまま謝罪の言葉を繰り返すだけだ。いたたまれなくなった彼女はメンバーの顔を見ること無く背を向け、肩を落としてやってきた道を引き返していく。傍にレイスが寄り添っているが、彼女にさえ顔を背けてしまっていた。


「大丈夫かよ、フィアの奴……」

「あれが大丈夫に見えますの、イーシュには?」

「そうは見えねぇけどよ……」

「……重症だな」

「そうですね。何とかしないと……」


 歩いて彼女の背中を追いかけながらキーリとアリエスは顔をしかめ、シオンも痛ましい想いで心配そうに見つめる。


「やっぱりまだ……エーベルくんの事が尾を引いてるのかな……」

「それ以外考えられねぇよ。随分可愛がってたもんなぁ、フィア」

「だからってああも気ぃ抜かれたんじゃ溜まったもんじゃねぇだろうが」ギースが舌打ちをして、厳しい眼差しを向けた。「もう一ヶ月だ。いい加減持ち直してくれねぇとこっちもフォローしきれねぇ。それに……今のまんまじゃフィアは死ぬぞ」


 ギースの言葉に全員考え込む。フィアの身が危ないのは既に全員が察している。今はまだサポートが間に合っているから事無きを得ているが、早くなんとかしなければいつ取り返しのつかない事になるか分からない。


「ギースくんの言う事は分かるけど……でもフィアだって乗り越えようとしてるんだよ?」

「ンなこと俺だって分かってるっつぅの」

「ですけれども……こういうのは本人の努力だけでどうにかなるものでもないですわよ」

「本来なら時間が解決してくれるんだが……」


 精神的なものだけに、以前の彼女に戻るまでどれだけ時間が掛かるか未知数だ。迷宮に潜る事をまた当分辞めさせるべきだろうが、それはそれで彼女は気に病むだろうし、休んだから治るものでもない。キーリも、日本に居た時には教養として大学で心理学をかじった事はあるが、実践で役に立つ類でも無いし、生兵法は余計症状を悪化させかねない。


「……ちっ、とりあえず俺は先行してくる。今のフィアとレイスじゃ、モンスターが近づいても気づくかどうか怪しいからな」

「なら俺も行くぜ。どうせ俺の頭じゃまともな案なんて浮かんでくるわけねーし」


 そう言い残してギースとイーシュは前へと駆けていく。二人が通り過ぎる際にチラリとフィアの様子を伺ったが、そのまま声は掛けなかった。


「……はぁ、しかし本当にどうしたものかしら」

「確かにもう一ヶ月ですし、もしこのままだったら引退……」

「止めてよ! 今はまだ無理かもしれないけど、フィアならきっと乗り越えてくれるって私は信じてる」


 シオンが最悪の未来を口にしかけ、カレンが声を張り上げて遮る。配慮を欠いた自分の発言にシオンは「すみません……」と力なく謝った。


「まあそう責めるなって。シオンだって別にそんな事を望んじゃいねぇんだし」

「……うん、そうだよね。ごめんなさい、シオンくん」

「いえ、僕の方こそすみません。確かに気分は良くないですよね」

「しっかし……マジでどうしたもんかねぇ……」

「こういう時こそワタクシ達が何とかしてあげたいのですけれども……今は妙案が浮かびませんわ」

「何もかも忘れて思いっきり遊び回ったら気が紛れるかと思って、私も前に一緒に街のお菓子屋さんを回ったりしたんだけど、ダメだったし……」

「酒でもダメだったしなぁ……」

「あの時は大変でしたね……」


 謹慎処分を食らっていた間に飲み明かした時の事を思い出し、キーリとシオンは揃って溜息を吐いた。

 いつも通りシオンの店を貸し切っての飲み会でのことだった。フィアの中で溜まっている想いを酒の力で吐き出させようとし、皆で寄ってたかって奮発し高い酒を飲ませたのだがそれがまずかった。

 確かに色々と溜まっていたのだろう。勧められるがままに杯を飲み干したフィアは会が始まって三十分もしない内にすっかり真っ赤になったのだが、途中からひたすらに泣いてばっかりであった。静かにさめざめと泣いて酒をあおって酔いつぶれて。少しして眼が覚めたらまた泣いて飲みつぶれる。それを繰り返し、なのに苦しさを決して吐露しようともせず、ただ自分を責める言葉ばかりを呟く。アリエスやカレンが宥め、懸命に励ましもしたのだが結局、本格的に寝入る最後まで泣き続けていた。

 翌日には重度の二日酔いでベッドの上だったらしいが、しかしそれで少しは楽になったようで、レイス曰く「久しぶりに笑顔を見られた」とのことだった。だが、ここ最近の彼女を見る限りでは根本的には重い凝りが奥底に残ってしまっているのは明白だった。


「フィアさんって人を責めない代わりに自分に厳しいですからね」

「もちっと楽に生きりゃいいのに、真面目すぎるっつうかなんつーか……まあ、だからこそ信頼できるんだが」

「思い切ってもっと長く休ませるのはどうですかしらね? キーリの言う通り時間が解決してくれるかもしれないですわ」

「でもアリエス様、それだと気を紛らわす事も無いですし、余計悪化しませんか?」

「なら――」


 迷宮の中を出口に向かって歩きながら四人で意見を出し合う。侃々諤々(かんかんがくがく)と意見を互いにぶつけ合うが、やはりこれと言った妙案は出てこない。


「――やっぱりよ、この街に居るのがあんまり良くねぇんじゃねぇかって思うんだ」

「そうですね……ユーフェちゃんも傍に居ますし、特にこの街はエーベル君との思い出もあるでしょうから尚更忘れられないのかもしれないですね」

「スフォンを出て他の街に拠点を移しますの?」

「別にそこまでする必要はねぇだろ。季節も季節だし、どっか旅行に出かけるだけでも――」

「あ、そうだっ!」


 突然、カレンが声を上げた。両手をパチン、と叩き合わせ、大きな声が迷宮に反響した。その声を聞いたレイスが後ろを振り向き、カレンは彼女に向かって手を合わせて「ゴメンゴメン」とばかりに肩を竦めた。


「何かいい考えでも思いつきましたの?」

「えっと、いい考えかどうかは分からないですけどぉ……」


 三人を手招きし、特に必要は無いのだが何故だか小声で自分の考えを伝える。彼女の案を聞いた三人は三様に考える仕草をして、案を検討してみる。


「俺は悪くねぇと思うぜ。どうせこのまんまじゃ待つしか出来ねぇんだしな」

「僕もいいと思います。良くなるかは分かりませんけど、少なくとも悪くはならないでしょうし、多少なりとも気分転換にはなると思いますよ」

「ワタクシ個人としても一度行ってみたいと思ってましたし、良いんじゃありませんこと?」

「よし、なら決まりだな。なら――」







「というわけで、私の故郷に旅行に行きましょう!」


 迷宮内で話し合って二日後。突然自室にやってきて宣言したカレンに、フィアは眼を丸くした。


「……旅行?」

「はい! 世の中みーんなお休みムードなのに私達だけ街と迷宮を往復する毎日なのはどうかと思います! 皆揃っての旅行も学生時代にユルフォーニくんの別荘に遊びに行ったきりですし、ここは思いっきりみんなで遊びに行って日頃のストレスを晴らしましょう!」

「えっと……」

「田舎ですけど村の人はみんないい人ですし、少し標高も高くて涼しいから避暑にはもってこいです! ていうか、私が村の皆にフィアさん達を紹介したいんです! だから行きましょう!」


 グイグイと勢い込んで誘ってくるカレンにフィアはタジタジ。ふんす、と鼻息を荒くして瞳でいかにも「楽しみです!」と訴えかけてくる彼女にフィアも異論を挟めずにいる。が、顔を近づけてくるカレンを「ちょ、ちょっと待ってくれ」となんとか制した。


「誘ってくれるのはありがたいが……今は少しでも迷宮に潜って感覚を取り戻したいんだが」

「それも大丈夫です! 山の中なんで弱いですけどモンスターもちょくちょく出てきますし、少し遠いですけど歩いていける距離にちょっとした迷宮もあります! フィアさんのリハビリにはちょうどいいと思うんです!」


 たじろぐフィアの両手をがっしりと掴み、いよいよ引く気配は見せない。しかしここまで彼女が迫ってもやはりフィアは気乗りしなかった。

 この一週間で分かった事。間違いなく自分はメンバーに迷惑を掛けている。集中が足りないのは危機感が足りないからだ。もっと、もっと強いモンスターを前にして自分を追い込まなければいけない。


(全力で生きて、そして死ぬのだ)


 耳の奥底でシーファーの声が鳴り響いた。そうだ。全力で生きなければ。全力で強くならなければ。もう、過ちを犯さないためにも。

 俯き、意識が内面にばかり向かっていたフィアは気づいていなかった。彼女の手を、悲しそうに顔を歪めたカレンがギュッと強く握りしめていたことを。


「……やはりすまないが――」

「おーい、こっちは準備できたぜー!」


 フィアはもう一度断ろうとした時、もう一度フィアの部屋の扉が開いてイーシュとギースが入ってくる。イーシュの手には紙が握られていて、それをヒラヒラと揺らしてカレンに見せた。


「あ、イーシュくん! 依頼してくれた人は?」

「表で馬車に荷物を積んでるってよ。昼過ぎには出発するって言ってたぜ」

「分かった。ありがとー。じゃ、他の皆にも伝えておいて」

「ああ、今聞いたぜ」


 ギース達の後ろから今度はキーリとアリエス、シオンの三人がやってくる。三人共両手いっぱいに袋を抱え、キーリに至っては背中、そして頭の上にも紙袋を乗せて風神魔法でバランスを取って遊んでいる。全く無駄な魔法の使い方だ。アリエスはチラリと見て溜息を吐いた。


「すごい量だね……」

「そりゃな。前にシンの別荘に行った時より遠いし、行商馬車の護衛をしながらだからな。時間も掛かるだろうし、携帯食ばっかってのもうんざりだからな。道中で料理でもしながらのんびり行きゃいいかって思ったんだよ」

「イーシュさんのリクエスト通り、お酒もいっぱい買いましたから」

「お! さっすが、シオン」

「甘いお菓子も買い込んできましたわ。これで野宿もきっと楽しいものになりますわよ。あ、もちろんこれはワタクシの奢りですわ」

「やったぁ! アリエス様、大好きです!」


 どさどさとフィアの目の前に積まれていく荷物。紙袋から野菜が一つコロリと転がり落ちていき、フィアの前で止まった。皮にハリのある瑞々しい果物である。それをキーリは拾い上げると、自身の荷物袋に放り込んでいく。フィアは半ば呆然としながらキーリを見上げた。


「まさかとは思うが……もしかして、今日出発するのか?」

「そうだぜ?」


 何を今更、とばかりにキーリはとぼけて見せた。他の全員もフィアの疑問を不思議がるように首を傾げる。


「……聞いてないが?」

「今聞いただろ? ほれ、さっさとお前も準備しろって」

「だ、だが急に言われてもだな……」

「ご安心ください、お嬢様」彼女の後ろからレイスの声が聞こえた。「既にお嬢様のお荷物は準備できております。いつでも出発は可能でございます」


 振り向けばレイスがいつも通りメイド服姿で立っていた。その両手には鞄が下げられており、傍のユーフェがぼんやりとした視線をフィアに向けている。彼女はメイド服姿ではなく、きれいな白いワンピースを着ており、大きな麦わら帽と可愛らしいサイズのリュックを背負っている。まるで何処か良家のお嬢様といった風情だが、手には相変わらずいつものくたびれたヌイグルミが握られていた。


「行かないの……?」

「うっ……」


 微かに悲しそうな眼差しをユーフェから向けられ、罪悪感に言葉が詰まる。八の字に眉を歪め、助けを求めて仲間に困った顔を向けるが、返ってきたのは全員から無言で顔を横に振る仕草。


「わ、私だけ残るというのは……」

「認められるわけありませんわ」

「リーダーが来なくてどうするんだよ」

「いつまでも駄々こねてねぇで、とっとと着替えてきやがれ」


 最後の抵抗も虚しく一蹴され、ガックリとフィアは肩を落とした。そしてユーフェに頬をつんつんされてようやくノロノロとした動きで武具を取りに動いたのだった。




お読み頂きましてありがとうございました<(_ _)>


お気に召しましたら、お気に入り登録、ポイント評価、ご感想等頂けると幸甚でございます<(_ _)>

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