11.くるりの決意
シングルループを跳んだ後のくるりの頭の中には、亮太のある言葉が鳴り響いていました。
――アクセル。
それは、私にダンスの喜びを教えてくれた愛犬の名前でした。
そしてダンスを練習しながら、見る人を楽しませる嬉しさを私は学んだのです。
たった一人の観客から始まった私のジャンプは、こんなにも多くの人を楽しませるまでに成長しました。
だから私は思います。
跳ばなきゃいけないジャンプなら、跳べばいいんじゃないかと。
アクセルは前向きの左足踏み切りで、左回りに回るジャンプです。でも、今の私の膝の状態では跳ぶことができません。
――だったら右足踏み切りで回ればいいんじゃないの?
私ははっとしました。
これはまさに、小学生の頃から練習していたジャンプそのものだったからです。
――氷上ではやったことはないけど、今ならできるような気がする。
このジャンプには高さが必要です。
なぜなら、他のジャンプよりも半回転多く回らなくてはならないからです。
だから私は、リンクを斜めに広く使うことを思いつきました。
リンクの角に到達した私は、対角線の角に向かって加速します。
「おい、何をするんだ、くるり! 無茶はやめろ!!」
亮太が何かを叫んでいるような気がしましたが、それを私は力に変えていきます。
――観客第一号くんだって、心配して見てくれてるんだから。
それにこれは、天国のアクセルに届けるジャンプです。
私たちを守ってくれた愛犬。左脚に重傷を負いながら、アクセルは跳びました。私だって負けてなんていられません。
――アクセル、そして亮太。私跳ぶからしっかり見ててね。
最高速度に達した私は、前向きのまま左足を振りかぶり、前へ左足を大きく蹴り出しました。そしてその勢いを利用して、右回り気味に高くジャンプします。
風景がスローモーションのように流れていきます。それはもう観客席に手が届くような、そんな感じがするくらい私は高く跳んでいたのです。そして――
「行っけぇぇぇぇぇーーーーっ!! 回れぇぇぇぇぇーーーーーっ!!!!」
私は渾身の力を込めて、左回転に体を回しました。
気がつくと、私は無事に右足で着氷していたのです。