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四話 初トレーニングマッチ

夏の某日、市内のチームとトレーニングマッチが行われることとなった。


呼ばれたメンバーは・・・。

#1 GK アルベルト クラッテ U-15

#12 GK クルト ディーゼラー U-14

#2 DF ブルクハルト トラップ U-15

#3 DF ホルガー シュルツ U-15

#4 DF グンター ヴォルム U-15

#5 DF レオ オブファーマン U-14

#6 DF エリーアス ツィナー U-15

#7 MF フリードリヒ .ツァイトラー U-15

#8 MF ハイノ ケオネ U-15

#9 FW アウグスト ボラート U-15

#10 MF マリウス グスタフス U-14

#11 FW ラルフ ズィッツ U-14

#14 FW ゲラルト シューベルト U-14

#15 MF ヤーコプ ギュンター U-15

#16 MF ミズホ イケダ U-14

ヘッドコーチ カール ユリシッチ

コーチ クラウス バウワー


元々14人で考えていたようなのだけど、練習でのぼくの動きやチームへのマッチングを考えてカールコーチがメンバーに加えてくれたけれど、最初で最後かもしれないという緊張感があった。

それはマリウスの「使えなかったら次ぎ呼ばれないぜ」的な発言(だったと思っている)から来ている。


対戦相手はベルリーナSCと言うチームで、会場に行くと・・・観客がいるんです。沢山・・・。

親かと思えば違うようで、その辺にいるおじいさんからサッカー関係者と一目でわかる人まで。


「ダイジョウブ。ダイジョウブ」

クラウスコーチの何の根拠もない声がけ・・・。

落ち着かないのは他にも原因があった。

ユニフォームがデカイ!

もう、長袖長ズボン!?

背番号が半分隠れている!!

走っているうちに脱げてしまいそう・・・。もういいや。やけくそだ。


アップをしているとカールコーチがスターティングメンバーを告げて、今日は全員使うと宣言した。

40分ハーフを時間が許す限りやるみたいです。ハイ。


時間が許す限りって言っても、終了時間を聞いていません。

ついでに全員使うって言ってもフィールド3人しか控えいないよ?

まず、倒れるね。暑いし。


~~~


1試合はゴリ押しの力技一辺倒。

マリウスがコントロールしようとしているけれど、何かちぐはぐだ。

でも、ゴールの予感と言うか、「行け~!!」と叫びたくなるような、攻めのスタイルでワクワクする。


ぼくなら何が出来るかな?


チームスタイルは個人の力が一番。

全員攻撃、全員守備。

シンプルだ・・・。


その中でぼくのようなタイプが入ると浮くな。

基本、ぼくは自分で何とかするタイプではない。


ぼくなら何ができるかな?


カツコがよく言っていた。

「楽しめよ~」って。

ぼくは、ここにきている人たちをワクワクさせるようなフットボールをしたい。

小さい子たちがぼくたちの試合を観てフットボールをしたくなるようなプレイをしたい。


そして、チームに勝利をもたらせたい。


あまり考えることはないように思えてきた・・・。

ぼくにできることなんて限られているんだと。


前半30分を過ぎて、残り10分でカールコーチから呼ばれてピッチに立った。

マリウスが近づいてきて4-4-2をやろうと言った。

ぶっつけ本番ですよマリウスくん・・・。

勝手にフォーメーション変えていいんですか?ってコーチからどこに入れとか、どうしろとか言われなかったよな~まあ、言われても細かいことわかりませんが・・・。


で、動き続けましたよ。もうこの1試合で終わるぐらいの気持ちで・・・たった10分だけど。


マリウスにプレッシャーがかかっていたのも成功した原因かもしれないけれど、残り10分はぼくの独壇場になった。


ダイレクトでボールを散らす。

トラップで相手を置き去りにする。

キープして相手をひきつける。


すべてのボールがぼくを経由していく。


そしてその中でぼくはボールロストしなかった。


ダイレクトで散らしながらもラインを上げることを要求し、センターバックすら相手陣まで上がっている。

たまにキープするからマッチアップしている選手もイライラする。だって、ボールを奪えないんだもの・・・。ちびっ子日本人から。


そこにマリウスが関わってくれた。

ぼくはノールックのパスを出して、集団から抜け出してもう一度ボールを要求する。

マリウスからのパスを即座に前線のラルフに浮かせてやわらかいパスを出す。

今まで、強く、速いパスを意識していたから味方もびっくりしただろう・・・。


その浮いている時間を利用してぼくはペナルティエリアに入る。

浮かせることでぼくでもシュートレンジに走り込める時間を作ったのだ。


相手のセンターバックもキーパーもぼくをケアしていない。

ラルフにグラウンダーのパスをペナルティマークを示しながら身振りで指示を出した。


理解してくれた。


ラルフは左足インステップで速いグラウンダーのパス。

ぼくの身長を彼なりに考えてたラストパスだった。


センターバックは左のラルフとマリウスに気を向けていたけれど、距離があったのでキーパーは反応した。

ぼくは左足でトラップするように見せかけてボールを浮かす。

トラップミスと思ったキーパーは一瞬動きが止まった。


なんたって、浮いたボールはぼくの頭の上を超えて・・・右のインステップでジャストミートのボレー。

キーパーは右手を出したけれど体重は左に乗っていたので動けなかった。


丁寧に流し込むのが普段のぼくのスタイルだけど、ドイツでのファーストシュートへのこだわり・・・。

観ている人たち、対戦している相手。何より、仲間たちへのあいさつを込めて振り切った。


ゴール


あれで外していたらやばかったよね。

でも、自信はあった。

ボールを蹴ることはどんな時も続けていたから。


少年団ではだれにも相手されずに壁に向かって。

ZAALザールでは練習の後に。

怪我をした後はひたすらリフティングを。

イメージしたところにボールを動かすのには自信がある。

そのボールを見なくてもどれだけ回転がかかっていて、どんな軌道でキックポイントに来るのか身に沁みついている。


「「「おお~~~!!!!」」」


観客席からも仲間からも雄叫びが聞こえた。

でも、一番吠えていたのはぼくなんだけどね。


ここでもぼくのフットボールは通用する・・・。


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