零話 想いをひとつに
高円宮杯全日本ユースU-18サッカー選手権大会 決勝
U-17を中心としたスカイブルーのユニフォームを着た選手たちが円陣を組んでいる。
「まあ、このメンバーでやるのを4年待ったんだからな」
「俺ら一個下だけど勝ちにいくぞ」
「なんか、いつも上の世代と戦っているよな~俺ら・・・」
「でも、このときのためにフットボールをやってきたんだからな」
「まあ、格下なんて言われることないでしょうね」
「ジロー、アユム、マサオ、ツバサ、タイキそしてヤマト・・・U-17日本代表メンバーが6人も揃っているチームなんてそうはないぞ~」
「まあ、俺、高校では吹奏楽部だけどな」
タイキが笑いながら言う。
「それ言ったら、俺、天文部だぜ」
「グリークラブ・・・」
だれだ!?
「きたくぶ~~~」
ジローです。
「ディベート部」
マサオくんはしゃべりに磨きをかけたようです。
「俺、美術部・・・」
だれだよ・・・。
「マジ文化部の集まりだな」
~~~
ぼく(ミズホ)がドイツに行ってから1年目。
クラブではまともに試合に出ることはなかった。
それ以前に練習にも参加できず、黙々とひとりで走りこみや体幹トレーニングを続けていた。
それは技術が劣っているわけではない。
言葉がわからないことや周りの選手が大きいこと。何より1年のブランクでリハビリを兼ねていたからだった。
そんな時、U-16インターナショナルドリームカップがドイツの首都ベルリンで開催された。
ぼくはU-15日本代表の試合を見に行った。
そこにはかつてのチームメイトのジロー、ヤマトそしてマサオがいた。
トレセンで出会ったアユムもいた。
彼らはU-14ながらもスターティングメンバーとして試合に出ていた。
ぼくは声をかけれなかった。
彼らとの差を見せ付けられたこともあるけれど、まだサッカーを本格的に出来ていない自分に腹が立ったからかもしれない。
彼らは輝いていたから・・・。
~~~
「で、だ。ミズホ・・・お前がまた一緒にフットボールやろう!なんてい言うから俺らいろんなチームの誘いを断って・・・、高校で文化部にまで入って、去年 ZAALユースが出来るまで”あの”カツコの下で続けたんだぞ」
タイキは笑いながら言った。
「「「だよな~」」」
「”あの”カツコの指導の下だぜ~」
「何故かアユムまで来たしな~」
「なに考えてたんだ?」
「いや~ミズホと一緒にやりたくて~」
アユムも相当の変人だ。
「もう代表に選ばれなくなるかもなんて心配したよ~」
「ジローそんな心配していたのか?」
「それより高校いけるか心配しなかったのか?」
みんな嬉しそうに話している。
決勝の試合開始とは思えない雰囲気だ。
これこそZAALだ・・・。
「じゃ、ミズホの掛け声で行こうぜ!」
「俺らはZAAL!」
「「「お!!!」」」
ぼくは7番のユニフォームを着てピッチの真ん中に立った。
4年間この背番号は誰もつけずにぼくのためにとって置いてくれた重い番号だ。
嬉しい・・・。
ピーッ!
さあ、試合開始だ!
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ZAAL2~小さなフットボーラーの挑戦~ではドイツに渡ったミズホの4年間のチャレンジを書いていきたいと思います。
ZAAL~小さなフットボーラーの成長~を強引に終わらせましたが、またその世代の話に戻ることもあると思います。宜しくお願いします。