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魔境に雪が降って来た。
本格的な冬の到来だ。
出入り口も本格的なドアを作った。
防寒対策のため、毛皮もちょっぴり多めです。
数日前から、パラパラ吸っていた雪も、本格的に降ってきて一面銀世界になる。
俺はツリーハウスの上に積もった雪を下し、一息ついた。
雪を積もらせすぎると雪の重荷で家が押し潰れるっと言うのは異天の知識で理解した。
そんな時であった、一匹のドラゴンを見たのは・・・。
そのドラゴンは背に人を乗せていた。
そして真っ直ぐこっちに向かっていた。
厄介事はやめてくれよ・・・。
「君!君はこの家の子か!?」
ドラゴンに乗ったまま、問いかけてきた。
美人な女性だな。
少しまな板だが・・・。
「そうだけど?」
「主と話したい」
「要件は?」
「は?」
「俺が主だけど、用件は?」
「君が?」
「あっそ、じゃ帰りな。」
そう言って家に入ろうとしたが、
「待たれよ! 済まなかった! 私の名は竜侯騎士のアリーシュ・ファルバートと申します! 済まないが我が騎士団が休息する為の場を貸して頂けないだろうか?」
「オイオイ待てよ・・・こっちは一人で冬を越す分しかないんだぞ!」
「食糧等はこっちが持参している! 少しばかり温まる場所が欲しいのだ」
「対価は何を払う」
「金か?」
「あほか、こんな場所では金なんぞ価値はない。他に何がある」
「それは・・・。」
「この辺りの事は知っているか?」
「知っているが?」
「その情報が対価で良い、何せ此処に捨てられたから疎いだよ・・・」
そう言ったら、顔を顰めた。
「それは・・・」
「おい・・・良いのか?時間が無いのじゃないのか?」
「解った、それで良い」
そう言って、空を駆けあがった。
暫くして、十数名の騎士団が訪れた。
その中の数名か重症者である事が解った。
少しばかり家の温度を上げた。
扉を開けて騎士団を迎える事にしたが・・・
数人の重傷者内の一人がとてもヤバい状態だ!
すぐに飛び上がり騎士団の中に入った。
「詳細は不要! このまま家に入ってください。」
そう言って、重傷者に魔力を流した。
体全体の痛覚を麻痺させるのに時間が掛かるが、そんな余裕は無い。
「痛覚を麻痺していますが、一部のみです! 我慢してください!」
内臓に刺さった骨を魔力で引き抜く、
その瞬間、悲鳴が上がった。
内臓から血が噴出しない様に魔力でリカバーした。
骨は骨で再生をし、不要となる血は短剣で皮膚を切り裂き取り出した。
一連の手術を行う間に家にたどり着き、手当てを終えた。
他の重傷者の骨や内臓の治療を行った。
一通りの治療が終わり、後は本人の気力次第になった。
「幼き主よ、感謝する。」
竜侯騎士団の団長、アシュレット・ファズ・ズロウズと言った。
「こっちとしても、欲しい情報があるし、対価さえ払ってくれたらいいよ。」
「確か、この周辺の情報だと言ったが・・・。」
「正確にはこの魔境の森の出口が知りたい。」
「君はどうやってここに・・・。」
「騎士団長さんそれは秘密だ。」
「・・・わかった、ファルバート!地図を持ってこい!」
「はっ!」
*
地図で位置を、コンパスで方向を見て、魔境の出口を示してくれた。
ここから出るために必要な情報の一つが手に入った。
治療していた団員は、一晩寝て意識を回復した。
毎朝の雪かきのため外に出ると、騎士団の皆さんは雪をかぶっていた。
雪の中でのテントって何の罰ゲーム・・・。
「よろしいのか?」
「言うな!黙って食え!」
囲炉裏を使って鍋を御馳走した。
あまりにも寒そうにしていたから、見るに見かねて鍋を作った。
「代わりに御宅らの食材を寄越せよ。」
「それはもちろん!」
それどころか、一部の団員が狩りをしてきて生肉を提供してくれた。
「一つ頼みたい事があるんだが・・・。」
「此処を使わせてくれと言う事か?」
「そうだ。」
「条件が一つだけある、俺の事は他に明かさないと言う事だ」
「理由を聞いても?」
「理由を聞いたら貴方達は俺を殺さなければならなくなる・・・」
「・・・やはり貴方様は・・・。」
「お互いのために、ここは不問にしてくれ」
「解りました。約束を守りましょう」
「カギは作ってない、俺が此処から離れた時は自由に使え」
「ありがとうございます。」
此処に来てから四日後。重症だった人たちの傷も癒え、彼らは一先ず本拠地の城塞都市に戻ると言う事で俺は彼らを見送った。
因みに、ドラゴンかと思ったけど、話に寄るとドラゴンではなくワイバーンと言う事でした・・・。
だって初めて見たもん!