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ピエロ  作者: プラズマ
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戦闘2

「シャァァァァァァア!!」


右腕を庇おうともせず、弟は止血のみで戦闘を再開。多分怒りで痛みを抑えつけているのだろう、動きは先程と変わらない。


「シャァァ!!」


繰り出される斬撃。しかし、昌晃は右腕の時ほどの脅威を感じる事なく回避を行う。


が。


「チェストォォォォオ!!」


と、張り裂けんばかりの声量を込めて、兄の方が積極戦闘に切り換えてくる。しかも、早い。


「うぉ!?」


想定外の攻撃に昌晃も一瞬動揺する。するも、兄弟の攻撃が弱まる事はない。


「クソッやるじゃねぇかよ!」


今度は先程と違い完全に防戦一方。いきなりの戦闘スタイルの変化についていけない。


「シャァァァ!!」


「ふぅんっ!!」


受け、かわし、いなし、目まぐるしい攻撃か昌晃を襲い続ける。







「はは、やるじゃないか高木兄弟!?」


弟の腕を落とされた時は劣勢を感じた加賀であったが、逆転の状況に歓喜する。


「さぁて、じゃあコッチもだな……」


と、高木兄弟の状況変化に気を良くしつつ加賀は雪乃達の方へと視線を向ける。


「まぁ、理由は知らんがこの街で良くも組織が裏切れたモノだな?」


「………!」


加賀の問いに、刀を構え無言の雪乃と真理。しかし、加賀はそんな二人に余裕の笑みを浮かべながら、一歩また一歩と距離を詰める。


「無言か…まぁ良いさ……お前らの理由なんて知った事じゃないしな…」


更に一歩。その時不意に雪乃が口を開く。


「二年前のクーデターに、アナタは参加した?」


「はぁ?」


いきなりの質問。意味は解るが、訳は解らない。


「二年前?それがどうした?」


「こっちが質問したの、質問で返さないで…」


「はぁ?だからいきなり訳わかんねぇよ、それに今の状況解ってんのか!?」


刀を雪乃達に突きつけ、加賀が怒声を上げる。しかし、雪乃達に動揺する素振りは無い。


「このメス餓鬼がぁ…………!!」


雪乃達の目を見て更に苛立ちを募らせ、その瞬間。


「ブチ殺してやるよ!」


怒声と共に二人に襲いかかる。


「真理!!」


「解ってる!!」


雪乃へ向かい突進して来る加賀を正面に、雪乃が真理へ目で合図を送る。オーソドックスではあるが数の有利を生かし、二正面からの戦闘を仕掛ける。


「雑魚がぁぁ!」


勿論そんな事は百も承知の加賀。側面にまわる真理を無視して、正面の雪乃へと更にスピードを上げ突進。


「小細工なんてよぉ!」


真理の回り込みよりも数秒早く激突。刀がぶつかり合い、鍔迫り合いのまま、二人は昌晃達とは逆側へとなだれていく。


「雪乃!!」


「だ、大丈夫、このまま作戦通りに!!」


真理の言葉に応えながら、雪乃は更に数号刀を交わらせる。セーラー服の裾がはためき、緊張が辺りを支配していく。


「ガァァァァァアッ!!!」


上段、斬り返しからの下段。そのまま剣閃をひらめかせ横薙の一撃。加賀の攻撃は一刀づつ雪乃を追い詰める。


だが、そんな防戦一方ばかりではない、高木兄弟よろしくの呼吸で真理が加賀の死角から攻撃。斬撃が加賀の頬を掠める。


「!?」      


「嘘?!!」


「馬鹿が、テメェら程度の動き、読めないわけが無いだろ!」


口元に笑みを張り付かせ、加賀が雪乃と真理をあざ笑う。その間もバランスを崩した真理が勢いあまり廊下に倒れ込む。


「先ずはテメェだ!!」


加賀が声を荒げ刀の切っ先を真理へと向ける。そして一気に突きおろそうとした、まさにその時。


ギィィィィン!!


雪乃がスカートの中、太ももにあるナイフホルダーからナイフを投擲。間一髪のタイミングで真理を救う。


「真理!」


「雪乃!」


何とか態勢を立て直し、真理は雪乃の隣に立つ。


「チッ、芸達者だな……」


片手で刀を握り、再度二人とにらみ合う加賀。距離は数メートル、互いの間合いギリギリの所だ。


………


睨みあいを続ける両者。と、その時、再度。


「もう一度聞きます、二年前のクーデターにアナタは参加したの?」


グッと何かを押し殺すように雪乃が問う。


二年前のクーデター。しかし、その問いを聞いても加賀はあまり表情を崩さず。


「さぁな、てめぇが何に拘ってんのか知らねぇが、俺はその件とは無関係だ……まぁ、クーデター起こされて殺されちまう市長だろ?ロクな市長じゃなかったんだろ?」


ヘラヘラと薄笑を浮かべ、加賀が前市長を小馬鹿にする。


と。


「お前に何が解る…父様の何が?」


怒りに打ち振るえ、雪乃が言葉を絞り出す。


「はぁ?テメェは神城じゃねぇたろ?何………」


そこまで言って加賀が固まる。そして……


「偽名……か?」





「アニキィィ!!」


「おぅ!!」


加賀や雪乃達に気を向ける暇も無く。高木兄弟と昌晃は剣を交える。


「クソッ、兄弟揃ってうっとぉしい!!」


兄弟の斬撃を回避しながら吐き捨てる昌晃。が、次第に動きに馴れだしたのか、動きに余裕が見て取れるようになる。


「シャラァァ!!」


と、気合い一閃。弟の一瞬の隙をつき昌晃が反撃。上段からの一撃を回避し被せるように上段。放たれた剣閃は肩口に吸い込まれ、そのまま脇腹へと振り抜かれる。


「ギョボっ……」


言葉にならない悲鳴を最後に弟は吐血し、斬り口から鮮血を撒き散らし絶命する。


「弟!!」


「余所見してる暇ねぇぞ!!」


兄が弟に気をとられたのが最後。


視線を切った刹那、昌晃の斬撃が右腕を切断。兄はうめく間も無く、更に左足を切断される。


勝負はその一瞬で決する。


「グゥゥゥ…」


呻き声を上げながらうずくまる兄。既に戦闘継続は不可能。昌晃は刀身に付いた血を一振りして払い、加賀の方へ視線を向け走り出す。


勿論走ると言っても十メートル程。昌晃が接近すれば加賀も気づく。加賀はいきなりの状況変化について行けず、戦闘中だと言うことすら忘れて呆然としてしまう。


この時点で加賀、高木兄弟との戦闘は決してしまう。

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