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「大切な時間」

運命の出会いから 恋に落ちてしまった幸と寛人。自分自身に初めて素直になれた事で 寛人への思いが加速する幸。だが 病魔に襲われている寛人との限られた時間は刻々と進んでいる。

出会って恋に落ちてしまった幸と寛人。

恐らく最後の恋であろうと覚悟し、それでも幸への思いを打ち明けた寛人は (自分の人生を精一杯生きていこう。幸と少しでも ともに過ごせる時間が続いて欲しい)と心が結ばれた後に思っていた。

深く息を吸い込み 星の広がる夜の空を見ながら(必ず幸せにするよ・・・幸。)そう心を決めた。

(がんばれ 俺!!幸を幸せにするんだから。)


初めて素直になれた自分に驚きながら幸せな気分に浸っていた幸。

(ヒロの病気が良くなります様に・・。)と夜空を見ていた。(でも、ヒロの病気は治らない・・・。あとどれだけ生きていられるのだろうか・・・)現実にかえって少し不安な気持ちになった幸だが(明日また ヒロに逢いに行こう 今はそんな事を考えるよりもヒロと少しでも一緒にいられるようにしよう)

その日の 夜空は美しくも悲しい輝きをしていた。


「ヒロ!!」幸が寛人の病室にきた。

病室には 寛人の母親らしき女性がいた。

「幸 来てくれたの? 紹介するよ 俺のお袋。お袋 幸だよ。俺の彼女」

「こんにちは あなたが幸さん?寛人から話を聞いています。こんな息子だけどお願いしますね。」

深く 頭を下げて優しい顔で幸に話しかけた。

「はじめまして。桂木 幸です。こ こちらこそお願いします。」

少し 戸惑いながら素直に幸が挨拶をした。

「まあ 素敵なお嬢さんだ事。寛人には勿体ないわね。」優しく微笑んで寛人の母が話す。

「ひどいな~。大切な一人息子になんて言い方だよ。」

寛人は 少しふざけて母に話した。

「邪魔者は退散しますか。幸さん後はよろしくね。あなたにあえて嬉しかったわ。」

「はい それではまた・・・。」幸は寛人の母に深くお辞儀をした。

寛人の母は とても嬉しそうに病室を後にした。


「幸 外へ行こうよ。」寛人が話す。

「うん 今日はとても天気が良いものね。」幸は嬉しそうに言った。


「お袋が喜んでくれてさ。紹介しろってうるさかったんだ。」寛人は話す。

「びっくりした。でもとても優しい お母さんだね。」幸は感じたままを話した。

「俺の家 母一人、子一人なんだ。」寛人が身の上話を始めた。

「俺が3歳の時 親父が病気で亡くなったんだ。それ以来 お袋働きながら必死で俺を育ててくれたんだ。大学は奨学金で入ったけど 高校生の頃から バイトしてお袋の助けが出来ればって思って来たんだ。お袋は 愚痴一つこぼさない人だから、かなわないよ。いつまでたっても。それなのにこんな病気になっちゃって。やっと お袋に親孝行できるって思ってたのに・・・。」少し間を開けて 寛人が話し始める。

「俺の病気を知った時 お袋1度だけ泣いたんだ。その時なんて言ったと思う?」

「え・・・。お母さんが泣いた?1度だけ?現実は哀しい事なのに?」幸は言った。

「ごめんね。ごめんね。って泣くんだ。何がごめんねなの?って聞いたら、なんて言ったと思う?」

哀しい表情で寛人が続けた。

「元気な体に産んであげられなくてごめんね・・。って泣くんだ。お袋のせいじゃないのにさ。でもそのあと お袋は泣かなくなったんだ。いつか理由を聞いたら。お前の命が短くなって泣いている場合じゃないって。お前に心配をかけるんではなく 母さんの笑顔を忘れないで欲しいから泣かないって言うんだ。参ったよ 正直。」寛人はとても優しく悲しい顔していた。

「・・・お母さんはヒロがとても大切なんだね。私はまだ親になってないからわからないけど。そんな気がする。」幸はヒロにそう答えた。

「そうだろうな。俺 どれだけ親不孝なんだろう。これからお袋に楽させてやろうと思っていたのに・」ヒロはとても辛そうに話していた。

「だけど 俺はマザコンではないぞ。断じて!!」ヒロは明るい表情でふざけて話した。

「え~ 結構マザコンじゃない?」と幸もふざけて話し その場が明るくなった。


「私は 元気なだけ幸せなのかな?家庭は結構複雑だけどね。」幸は自分の事も話し始めた。寛人に自分の事を話してきちんと向き合おうと思ったからだ。


「幸のこと話して。」寛人がそう言った。

「私は 実の母親が早くに亡くなって 親戚の家で姉妹育ててもらったの。でもね 古い仕来たりの家で 年功序列?ってやつで。私が一番身分が下なの。今時でしょう?」幸はその先を話す事にためらっていた。

「へえ~ 古い仕来たりって事は 良い事でもあるんじゃないの?躾だとか」寛人はそういった。

「・・・そう考える人もいるけど。何をするにも一番年下だから最後。食事もみんな手をつけてからしかダメだったし。家事手伝いは10歳位からしてたかな。あと 叱られるのも半端じゃなかったかな。子供心に自分は生れなかった方が良かったって思ったくらいだから。」

「何 そんなにきつかったの?」寛人は優しく幸が話しやすいように問いかけた。

「うん。母が亡くなったのは私のせいだって物心着いたときから言われてた。あんたさえ生まれなければお母さんは死ななかったのに。ってね。姉妹で喧嘩しても 最後は”人殺し”って言われたかな。だから 母が生きてくれてたら普通の家庭に生まれたらって良く泣いてたな・・・」幸は幼少の頃を思い出して辛そうな顔をして話していた。

「ひどいな・・・。幸が生まれた事は 亡くなったお母さん嬉しかったと思うよ。自分の子供が可愛くない親なんていないさ。それにしても、辛かったね 良く話してくれたね。」寛人は優しく幸を抱きしめた。

「・・ありがとう。聞いてくれて。」幸は少し泣き声になりながら寛人に甘えていた。

「幸って泣き虫なの?辛かったね でも今は俺と出会って幸せでしょ?」寛人は無邪気な笑顔でそう言った。

「また 色々話してね。俺幸の事もっともっと知りたいから。」寛人がいった。

幸は小さくうなずいた。


この時 幸は自分の生い立ちを寛人に話して。正直に向き合おうと決意していた。

また寛人も お互いの事をもっと知って沢山の時間を過ごし 幸を守ろうと強く決意した。





お互いの事を知りあう事から始めた二人。正直に向き合う事が大切だと再認識し二人の距離はまた近くなった。今は小康状態を保っている寛人には幸と普通に話して向き合う事が何より大切な事だと気づいていたから。病状が悪化するたびに幸が苦しむ事になる事が何より不安な寛人だった。

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