幸せのはじまり
自分の気持ちに気付かない幸だったが 寛人との再開で幸せへの第一歩を踏み出せた。きっと この時が幸と寛人にとって一番幸せなシーンであったかもしれない。
殆どが ノンフィクションの作品です。感情移入してしまい中々先に進めないので
じっくり気長に読んで下されば幸いです
寛人の病気の事実を知った幸は、今までにない感情であふれていた。
(逢いたい、でも逢って何を話せば良いのだろう・・・)
毎日 そっと寛人の病室を見ては逢う事もしないで戻ってしまっていた。
そんな日々が何日か続いた。が 幸は勇気を出して寛人に逢いに行った。
(どうしよう、何を話そう・・・。そうだ謝ろうこの前の事を!!・・・でも何をどう話そう)
沢山の思いが幸の中で蠢いていた。寛人と初めて話したベンチでまるで落ち着きのない様子で悩んでいた。
「この病院には小熊さんがいるのかな?」
寛人の声に幸は心臓が止まる程の驚きと嬉しさがこみ上げてきた。
「こ こ こんにちは!!っていうか 何なんですか?いつもいつも!・・そんなにからかって面白いですか?」
幸は動揺を隠そうと必死に平静を保とうとしていた。
「この前はしかめっ面。今日はうろうろ熊みたいで。あんた本当に面白いな。」
寛人はまた 林檎をかじりながら笑っていた。頭の帽子が病気の深刻さを物語っていたが、相変わらずの口調で幸は少し安心した。
「あれから見かけなかったけど、どうかしたんですか?病院で帽子被っておシャレなんですね。」
幸は 自分で何を言っているのか、何を話せば良いのか分からなくて必死で出た言葉だった。
(あ~バカバカ。何言ってるんだろう私。謝ろうって思ってるのに・・・。)
「あはは、病院でおシャレしても仕方ないだろ?俺の病気がハゲおやじにしたんだよ。ほれ!」
寛人は帽子を取って 坊主頭を幸に見せた。
「・・・ごめんなさい。私、あの・・・そんなつもりじゃ」
幸は言葉を失ってしまった。
「気にしないで。風呂入ってドライヤーかけずにすむから楽だよ。」
寛人は相変わらずだ。
「いえ この前失礼な事を言ったと思って。その・・」
幸は何を話せば良いか分からなくなってしまった。
「俺 赤崎寛人20歳独身。よろしくな」
「桂木 幸で・・す。18歳。よろしく・・です。」
幸は 恥ずかしいやら嬉しいやら・・良く分からない感情で一杯になった。
「幸って言うんだ。これから幸って呼んで良い?どんな字を書くの?もしかして 幸せの幸」と寛人。
「悪いですか、単純な名前で。っとにどうしてこんなに失礼な人と話してるのかしら。」幸はうまく話せない自分に腹が立っていた。
「なあ 俺の彼女になってよ。随分前から幸の事見てたんだ。いつかこの子と話せるようになったら良いなって。あ もしかして彼氏いる?かわいいもんな幸は。でも俺 惚れちゃったんだよな~。だめ?」
寛人があまりに突然に告白?とやらをするので幸は硬直寸前だった。
「・・・えっと。・・その」
幸はどうしたら良いのか分からなく上手く話せない。
「そっか~。やっぱ彼氏いるんだ。あ~俺ってやっぱついてないや。・・そっか。」
寛人は幾分さびしそうにそういった。
「あの!彼氏いないです。こちらこそお願いします!」
幸は自分でも(何言ってんだろう私)と思いながらも言葉が勝手に出ていた事に自身が驚いていた。そして不思議に幸せな気持ちになっていた。
「やった!!神様ってやっぱいるんだな。俺今日人生で最高に幸せだ~」
無邪気に喜ぶ寛人をみて心臓が飛び出さないかと心配するくらいドキドキしていた。
「あの 赤崎さん」幸が話そうとした時
「ダメだよ。ヒロって呼んでよ。夢だったんだ。~ん、彼女ができたらヒロって呼んでもらうの」
はしゃいで寛人が話した。
「・・じゃあ。ヒロ・・この前」
幸が話そうとした。
「~んん。幸せ~。ね、ね もっかい呼んで!!」
寛人が抱きしめてきた。
「あ、あ、あの・・。この前 ひどく突っかかってごめんなさい!!」
真っ赤になってこの前の事を幸は謝った。
「何?何かあった?」寛人が答える。
「え、この前ヒロの病気の事知らずにひどい事言ったと思って気になっていたから・・・。」
「あ~。幸せだな~。やっぱり幸って最高だな!!そんな事真面目に考えてくれるんだもんな」
「結構悩んでいたのに。ひどいヒロってば!」
「やっと 普通に話してくれた!!」
幸は(この人は 私が緊張しているのを分かって緊張をほぐしてくれようとしたんだ)と気づいた。
「あの、明日も逢いに来て良い?」幸は優しい表情で話した。
「明日も逢ってくれるの?楽しみだな」寛人は穏やかな笑顔で答えた。
「私、まだよくわからないけどヒロと一緒にいたいなって・・・思ったから」
幸は素直に話した。
「うん。やっぱり 幸は素直なんだね。それで良いんだよ。」
寛人はとても優しい表情で答えてくれた。
「明後日 私退院なの。退院した後も逢いに来て良い?」
幸は(私って結構大胆!!)と思いながら素直に話していた。
「もちろんだ。逢いに来て!!とお願いしようと思っていたんだ。嬉しいな!!今日から俺 幸せ街道まっしぐらだ。じゃ 今日は俺病室に帰るよ。もうすぐ投薬の時間だから。また明日な!!」
笑顔の寛人が病室に帰っていった。
幸は 自分が結構大胆である事に気がつき驚いていた。
興奮の中 ふと我に返って(私、ヒロの事が好きになっていたんだ。だから気になっていたんだ。・・・
でもヒロは重い病気で長くはない。私 大丈夫??)
自分の病室に戻ろうとして無菌室をのぞいたらそこにヒロの姿はなく 一般病棟に彼の姿はあった。
緊急事態はとりあえず回避できたのだと 幸はほっとした。
この先 幸にとって 哀しくも大切な恋物語がはじまった事、駆け足で過ぎ去ってしまう大切な人との思い出、その悲しみに前向きに立ち向かう事が彼女のその先の人生に大きな影響を与えることは間違えのない事実である。
二人の出会いから 次の苦しみの中での精一杯の恋を是非お楽しみください。
中々 自作を投稿するのに時間がかかっていますが 長くお付き合い下さい。