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出会い・・・恋心

現代社会の中でも沢山の恋愛模様があり皆それぞれに真剣に生きていると思います。どんな苦境でも真っ直ぐに前を向いて 自分自身と向き合い生きていく事が簡単なようで難しい世の中ですが、自分自身とそして愛する人と向き合って生きて行ってほしいものです。人生は一度きり、「だから自由に生きるんだ。楽しまなきゃ損。」そう思う方たちも多いかと思いますが、沢山 悩んで苦しんで。でもそのあとには必ず苦しみを乗り越えた後の成長した自分自身が大切になります。喜怒哀楽という言葉がありますが、喜びも怒りも哀しみも楽しみも人生を生きていく中で大切だと思いませんか。

新緑の頃 病院の中庭を歩いていた私に これから起こる沢山の出来事は、彼が私の人生を足早に通り過ぎて行く事など誰が想像できただろうか。自分に正直に限りある命を精一杯生きたあの人を・・・。


中庭の大きな木の下のベンチにふと一息ついていた時の事、

「そんな顔してたら 怖くて誰も近寄れないね。」と、さも得意げに林檎をかじっている一人の青年がいた。

「何ですか いきなり失礼ですね。どこの誰とも解らないあなたにそんな事言われたくありません。」そう言ってその場を離れようとした時だった。

「いつも難しそうな顔をして何か 悩みでもあるの?」と青年が近づいてきた。

「あなたに何がわかりますか?他人の顔色を見て そんなに楽しいですか?失礼します。」と私は怒って返した。

「生きていれば色々な事があるし 人生一度きりでしょ?楽しく毎日を大切に生きようと思わないの?君は若いし いくらでも楽しい事があるだろうに。」と青年が言った。

「大きなお世話です。生きている事が辛いことだってあるんです。あなたのように何でもハッピーに思える人がうらやましいですよ。」と私。

「俺 もうすぐ死ぬんだ・・・。」と青年が言った。

「・・・人をからかうのもいい加減にして下さい。」思いがけない言葉に一度は絶句したが 私はまたからかわれたのだと思いきつく言い返した。

青年は「人間いつ終わりが来るかわからないもんだよ。体調が優れないからバイトの疲れが出たんだろうと検査に来たら 余命6カ月だってサ。洒落にもなんないよ。だからあんたみたいな人見てると羨ましいし、悩んだり怒ったり悲しんだり喜んだりして 幸せなんだなって思うよ。」

私は 謝ろうと思ったがすぐには言葉にできずにうつむいてしまった。

ちょっとした不注意で肺炎を起こし入院中だった私には彼の言う言葉を素直に受け入れて謝る事が出来なかったのである。

私の名前は桂木かつらぎ ゆき現在高校3年生である。

複雑な家庭環境の中で育った私は、常に努力し成績も学年一番 スポーツでもなんでも人に負けることは無く 自分に自信を持って生きてきた。

翌年の大学受験を控えていた私にとって、今回の療養入院は将来を不安にさせるほど辛い事だった。

予想よりはるかに長い療養生活となって大学受験を控えていた私は、焦りと不安から苛つき一人になりたくて良くこの場所で勉強の遅れを取り戻そうとしていた。

彼はきっと私が一人でこの場所でいる事を何度か見かけたのであろう。

「明日もそこに来るんだろう?投薬の時間だから部屋に戻るよ。」彼はそう言うと院内に姿を消した。

私は謝れなかった自分に苛だちながら自分の病室に戻った。

病室に戻った私は(明日も?って事は明日彼に会えたら今日の事を謝ろう。)と初めて反省した。

翌日 青年に謝ろうと思い私は中庭のベンチに行った。でも彼は現れなかった。

翌日もその翌日も・・・。

私は 彼に謝りたくて病院内を探してみた。

ふと 眼をやった病室に彼はいた。無菌室だ。私は彼の病名が何かをその時初めて知った。

明るく自分の死を私に話した彼が残りわずかな命だと痛感した。

病室の名札を見て彼が赤崎あかざき 寛人ひろとという名前だと初めて分かった。すぐそばで母親らしき人の小さな背中が見えた。

私は自分自身が恥ずかしくなってその場を後にした。

彼の事を知ってから またあの大きな木の下のベンチに行って深く考えた。(なぜ彼は自分の死を受け入れて 明るく人に話せるのだろう・・・。自分が近い将来人生を終える事が怖くは無いのだろうか。)

私なら苦しくて自殺してしまうかも知れない。等と色々な事を考えていた。

(とにかく また明日彼の病室に行って様子をみよう。そして必ず自分が行った事を謝ろう。)

その時の私は すでに彼に対して芽生えていた恋心には全く気づいていなかった。

私の人生の中で彼の存在があれほど大きくなろうとは思いもしなかったのである。

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