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火酉堅固の人生集 12歳 夏の日の出来事 7

意味不明なことになってきた気がしますが、このまま突っ切ろうかと思います。

こんな話に興味を持っていただければ幸いです。

では・・・。

火酉堅固の人生集 12歳 夏の日の出来事 7


「やれやれ、話のコシを折ってくれたの~駄犬が」

「む、むねん。こうなれば腹を切るでござる。介錯を!」

 いや、そんな純真無垢な目で訴えかけられても御免被ります。

「駄あほ。そんな状態でできるか」

「ならば舌を噛むでござる。あむ、あむ」

「つき合ってられんわい」

 犬は舌を噛もうとして何度も空振っている。

 当たり前だ。犬の歯は人間の歯のような並びになっていない。舌を噛もうとしたって上手くいくはずがない。

 ・・・というより、舌を噛んで自害しようだなんて犬を初めて見た。少なくとも、そんな奇特な犬はテレビ番組でも見たことがない。世界のギネスブックにはのっているかもしれないが、倫理的にそれはありえそうもない。しかしひょっとすれば、数ある人類の歴史の中で僕が初めての目撃者なんじゃないか?だとすれば、犬は自分の舌を噛めないという考えはただの思いこみかもしれない。これは議論の余地がありそうだ。

 ・・・・・・。

 まあ実際、噛めてないのだけれど・・・。

 犬はまだ自分の舌を噛むことにチャレンジしていた。

 見た目の風貌といい、言葉遣いといい、性格といい、こいつを訓練したという奴はよっぽど時代劇が好きなんじゃないだろうか。

「小僧!こいつは無害そうじゃから無視して話を再開するぞ」

 その無害そうな犬に、僕は右手を噛まれてケガをしたんだけど・・・。

 僕の右手は、手の平と甲の部分にガーゼを当てて、その上を包帯できつくぐるぐる巻きにしている。

 応急処置として、間違っている可能性は大きいが、とりあえず、効果として血は止まっている。心なしか、手の指先が青くなっているが大丈夫だろう。

 ちなみに、あまり具体的に言うと、うるさくなりそうなので簡潔に言うが、余った包帯は犬に使用して動けなくしている。

「まず、小僧の現状の説明じゃ。これに関してはこ奴の登場で半分は理解できたと思うが、改めて説明するとじゃな。小僧は大猫様の孫娘の婿に選ばれたと言ったが、まだ完全に決まったわけではないのじゃ」

 そこら辺からして説明不足な気がする。しかし、これ以上話を延ばすのは勘弁なので黙って相づちを打った。

「うむ。知っての通り、小僧の命を狙う輩がおる。実はそやつらこそ、元々の婿候補じゃったのじゃ」

 と言うことはなに?僕は猫に暗殺を依頼されて殺されかかったということ?どこのB級映画の設定だろうか。しかも、猫が犬に依頼って・・・。

「奴らは婿に選ばれたお主を消せば、再び婿候補に戻れると思っておる。思っておるはずじゃ。昼間の騒動を覚えておるか?」

 騒動と言うと、忘れもしない。心身共に、猫の爪や牙でひっかき回された昼間のことだ。

 ・・・そう言えば、あの時ボロボロになった服は全部この黒猫のせいにしたのだった。頬のひっかき傷の件を踏まえ家族に、特にちぃ姉に説明したときは玄関先で黒猫にやられたと言ったのだ。たった一匹にあそこまでやられたと言うのは少々恥ずかしい言い訳だったと思う。

「あの時、小僧を襲った猫共はいずれも婿候補にすらなれなかった雄猫達じゃ。あやつらぐらいであの騒ぎになったのじゃ。当人達が黙っとる道理はない!」

 ・・・・・・。

「えっ?何だって?」

「言っている意味がわからんか?」

 意味も何も、なんで僕が猫に襲われる理由があるんだ?

「小僧・・・貴様は事の重要性をまだ理解しとらんようじゃな。もっとよう思い出してみい」

 その言い方だとあのとき僕がやったことが原因ってことらしい。

 あのとき・・・猫に襲われる寸前の僕の行動。

 賽銭箱の裏にいる三毛猫の背中をさすった。

 それだけだ。

「あ、あんなことが理由なのか?猫に触っただけで婿候補だなんて・・・無茶苦茶過ぎる!」

「もっともじゃ、ただ触っただけでそうなるなら。世の中の猫好きな人間は全員婿嫁候補じゃ」

 嫁になる可能性もあるのかよ・・・。

「ただ触っただけ・・・で、そうならないなら、なんで僕だけ?」

 いや、ただ触っただけじゃない。

 あのとき僕はあれを持っていた手で触った。あれは今でも僕のズボンのポケットにある。

 ズボンの右側のポケットに左手を突っ込みそれを取り出す。右手が使えないので取り出すのにもたついたが、あれは最後に見た状態のままポケットに入っていた。

 ボロボロのお札・・・。

「ふむ。理解できたか?」

「・・・これが原因なのか?」

「如何にも」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・おい・・・」

「なんじゃ?」

「如何にも・・・じゃないっ!なんでこれが原因になるんだよ!説明しろ!」

「小僧ぉ~、昼間のやりとりを覚えとらんのか?」

「覚えてるけど・・・今いち納得できない。僕はこのお札がどんなものなのか、はっきりとしらない。そんな曖昧な状態で理解するのは無理だ」

「ワシもそのお札の事について、ようは知らん。だが効用については確信を持って本物といえる。そのお陰で娘の容態が良くなったんじゃからな」

 お札の効用・・・忘れかけていたが、猫に対してだけ涼しくさせるとかなんとかだった。

 簡単には信じられない。確かめるすべもない。なぜならこれは僕が触ったって全く涼しくならないのだから。

 実験して猫の反応を調べるなんてことをやったって、しょせんは言葉の通じない相手だ。たまたまそれっぼい反応をしても、気のせいかもしれないし、ああやっぱりそうなんだって思いこむぐらいのことしかできない。そもそも、猫が涼しげになる反応を見たのは一回しかないんだ。それ以外の二回は何の反応もしなかったじゃないか。つまり、どうやったって半信半疑な仮定にしかならない。

 理解しろと言う方が無理だ。

 だけどここは理解した振りをしてでも話を進めるしかない。

「・・・ただ、お札に触れて・・・涼しくなっただけで?」

「なんじゃ、良く理解しておるではないか」

 猫はそう言ったつもりはないんだろうけど、それは皮肉にしか聞こえなかった。


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