火酉堅固の人生集 12歳 夏の日の出来事 5
火酉堅固の人生集 12歳 夏の日の出来事 4の続きです。
前書きですが、余り書くことが思いつきません。
話に矛盾がないかどうかが心配です。
こんな話に興味を抱いていただければ感謝の極みです。
それでは・・・。
火酉堅固の人生集 12歳 夏の日の出来事 5
「おい小僧!よくも放り出してくれたなぁ!この炎天下で身も茹だるような外に!今に天罰が下るぞ小僧ぉ!!」
・・・とか、なんとか言って、怒られるかと思ったが、黒猫は意外にも冷静な口調だった。
「うかつな行動じゃったことは詫びよう。小僧のしたことも、まあなんじゃ。水に流してやろう」
あの後の経緯はこうだ。
夕食の前、ちぃ姉は僕に二階の弟たちを呼ぶようお願いすると、台所からあるものを持ってそそくさと台所を出ていった。
どこへ行くのか気になった僕は、玄関から外に出ていくちぃ姉の後をつけた。そうすると、玄関から出たすぐのところでちぃ姉は座ってある奴に話しかけていた。
「し~~っ。みんなには見つからないように食べてね。うちの家族、みんな動物好きだから、見つけると大騒ぎしちゃうの。特に弟たちに見つかると大変よ」
一部始終を見るまでもなく、ちぃ姉が誰と話していて何を食べさせているのかがわかった。
夕食に余る予定の、余分なサンマをあの黒猫に食べさせていたのだ。
「ふふっ!隠れて食べてね。じゃね」
ちぃ姉は玄関に戻りドアをきちんと閉めると、玄関の前で様子を見ていた僕を見つけた。
ちぃ姉は少し速めの口調で
「早くみんな呼んできてちょうだい!」
と言うと、そそくさと台所へ戻って行った。
そして現在、夕食を終えた僕は、他の家族に気付かれないよう、玄関のドアから黒猫を招き入れ、自分の部屋へと連れて来たのだ。
どうやら、ちぃ姉のおかげで黒猫の機嫌がいいらしい。
また大声で癇癪を起されないかと内心憂鬱だったが、この様子なら杞憂のようだ。
ちぃ姉に感謝である。
「小僧の家族はなかなかに良いサンマを選んで買ってくるのじゃな。最近、余所の近所で盗んで食べたものとは二味も違う美味さじゃった」
そんな感想を言われても僕は、母親やちぃ姉がサンマを選んで買ってきてるなんて知らない。
僕が、あの二人と一緒に買い物へ行くときも、別に特別なことはしていない。ただ、やけにタイムセールの時間帯に詳しいことがあったりするのは確かだった。僕の選んだ野菜がいつの間にか棚に戻されていて、より瑞々しい野菜にすり替えられていたということも何度かあるぐらいだった。
しかし、それぐらい他の家の主婦でも普通なんじゃないのか。
「それは、さておき。小僧、ここから本題じゃ」
今の話題にはさして意味はないとでも言いたげに、黒猫は雰囲気を変えて話しかけてきた。
僕は、ゴクリと唾を飲み込む。
今まで、そんなに深く考えなかったが、いや、考える暇がなかっただけだけど・・・。
「よいか。小僧。実はな貴様は・・・」
人語を介する猫。
それも、口じゃなくて、伝心?で言葉を伝えてくる猫。
普通に考えても、これは明らかに・・・。
・・・そのさきの言葉は、こいつの話を聞いてからにしよう。
ひょっとすれば、ただ僕の知らない世界があった。それを今知った。 日本という国の外に、海があり、他の国があった。それと同じ。ただ、それだけの話しになるかもしれないのだから。
自分の中で答えを出すのは、まだ早い。
「我が町内の大猫様の孫娘の婿に選ばれたのじゃ。心して喜べ」
・・・・・・・・・・・・。
・・・うん。異常だ。
言うが早いか、速攻で僕は自分の中に答えを見いだした。