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火酉堅固の人生集 12歳 夏の日の出来事 4

どうも、相も変わらず思いつきで上げてます。

火酉堅固の人生集 12歳 夏の日の出来事 3の続きです。

特に盛り上がる要素もなく、話が進んでいます。

猫神なんて言葉が出てきましたが、現在放送中の某猫神様とは全く関係ありません。たんに、猫的な神様という意味です。

こんなお話に興味を一つでも抱いていただければ頬が緩みます。

それでは・・・・。

火酉堅固の人生集 12歳 夏の日の出来事 4


 自宅の玄関を確認する。

 そこには、きれいに整頓されて置かれている靴が五足あった、

 一足は母親、他四足は下の弟三人と、ちぃ姉の靴である。

 それらの情報から、家の中の状況をざっと想像する。

 仲良し三兄弟の弟たちはきっと二階の部屋にいるはずだ。中学校と小学校では夏休みの登校日の日にちがずれているらしく、今日は朝からずっとゲームをしているはずである。ちなみに、僕の部屋も二階にある。移動する際、廊下や階段で弟たちと鉢合わせする可能性が高いので、もっともやっかいな位置だ。

 次にちぃ姉の行動を探る。ちぃ姉の行動は結構簡単だ。

 ちぃ姉は僕と同じ中学を去年卒業して、今年は高校生になっている。高校生にも残念ながら登校日があるらしいが、寄り道した僕と違い、すでに帰宅済みらしい。

 もう一つ上の姉とは打って変わって、ちぃ姉はよく母親の家事手伝いをするしっかり者だ。故に、学校から帰ってきたばかりのこの時間、ちぃ姉は家事の手伝いをしている。

 どうだ。完璧だ。

「アホウが・・・小僧、もうちっとよく考えた方がよいぞ。今、何時じゃと思っとる」

 なんどき?・・・ああ、何時ね。

 僕はざっと、空を見上げて太陽の位置を確認してみる。

 太陽は、最後に神社で見上げてみたときより傾いていた。

 もう少し傾けば、空に赤みがまして夕陽になるくらいに・・・。

「そう言えば・・・」

「うむ。気付いたか」

「昼飯、食べてないや」

 中学校の投稿日は、半日で終わるため当然給食がでない。

 その下校時に色々あって、昼食のことをうっかり忘れていたのだ。

 僕のお腹は、夕飯時を前にして、今にも鳴きそうだった。

「ばかもん!そう言うことではないわ!何か匂わんか?」

「に、匂い?」

 そっと、玄関から先の廊下に向けて鼻を近づかせて嗅いでみる。

 確かに、なにかしらの匂いが鼻孔を刺激する。

「サンマじゃな、旬にはまだ早いがなかなか香ばしい。他にも白味噌の味噌汁に、ふむ・・・具はワカメとネギ、ジャガイモにナスじゃな」

「なぜ、お前が夕飯のおかずどころか、味噌汁の種類や中身の具まで知っている?」

 理由は知っている。なぜならこいつは・・・。

「これでも、猫じゃからな・・・」

 期待通りの答えを返してきた。

 猫なのだから、鼻が敏感なのは当たり前なので、さして驚かない。

「じゃなくて勘じゃ」

「え?・・・勘?猫に勘なんてあるのか?」

 第六感とか、人間だけが持つ感覚じゃなかったんだそれ・・・。

「小僧、猫をバカにするのも大概にしろ。いずれ猫神様から天罰を受けても知らんぞ」

「猫の神様ねぇ・・・」

 きっと猫神様とやらも、こいつみたいに手先が器用で、それでもって手には大判を持ってるんだろうな。御利益はやはり商売繁盛なのだろうか・・・。

「どうでもいいが小僧、なぜ早く家にあがらん?落ち着いた所に移動すると言って、家にまで来たのはお主じゃぞ。それがいつまで玄関におる。いい加減、小僧の両手に収まっているのは窮屈で仕方がないぞ」

「うちの家族は、人数が多いせいか何でも大騒ぎするんだよ。猫なんて連れてきたら、それだけで一晩中大騒ぎだ。お前、もしも弟たちに見つかったら、一日中追っかけ回されるぞ」

 黒猫はそれを聞いた途端、目を輝かせてこう言った。

「ふむ。それは元気な童じゃな。ワシはこう見えても、やぶさかではないぞ?」

「いや、お前、いいのかよ?人の言葉を喋るってことバレるんじゃないか?」

「・・・ん?何故バレて不都合がある?」

「・・・え?いや、だって普通大騒ぎにならないか?喋る猫だぞ。それが世間に知られれば、一躍お茶の間の人気者か怪しい研究室のモルモットだぞ?」

「小僧よ。今までお主はそんな目にあった猫を知っておるのか?」

「いや、ない」

 こんな変な猫に遭ったのは今日が初めてだ。

「ならば、それが答えじゃろ。猫が一匹喋ったところで人の世はどうとでもならん。それにワシは、喋っておるわけではない。伝心しておるだけじゃ」

 伝心・・・以心伝心するみたいなものだろうか。

「にゃぁ~~~」

 唐突に黒猫は大声で鳴いた。その鳴き声はどう聞いても人の言葉には聞こえない。しかし、それと同時にこいつはこう言っていた。

「理解したか?小僧」

 先ほど、こいつが叫んでいるときにも同じことがあった。猫の鳴き声とは別に、人の声が届いているのだ。それが耳へなのか、直接頭に届いているのかはわからないが。猫と人、二種類の声がするのは確かだった。

 ・・・って、バッカヤロー!

「誰?ケンちゃん帰ってきてるの?」

 台所から、声と共に、玄関へ向かってくる足音が聞こえてきた。

 黒猫が大声を出すものだから、ちぃ姉に気付かれてしまったのだ。

「ほれ、言った通り、台所には人がおっただろう」

「言ってねぇだろ!そんなこと」

「にゃぁ?」

「そうじゃったかのぉ~?」

 僕は黒猫の顔に左手を覆わせて、その二枚舌を持っている口を閉じさせた。

 そして急いで玄関を回れ右して、家の外に飛び出・・・。

「なにしてるの?」

 ・・・そうとしたが、時すでに遅かった。ちぃ姉は、すでに玄関に到着していて、僕の背中に話しかけている。

 僕は、とっさに両手のお荷物だけでも外に放り出し、ちぃ姉に気付かれないよう静かに玄関のドアを閉めた。

「いや、なにも・・・ただ、猫がうちの玄関に侵入しようとしてたから、追い払っただけ」

 この言い訳なら、例え黒猫を見られていても問題ない。

 しかしよく考えれば、人語を介する所を聞かれなければ、いや、伝心?されなければ、ただの猫なのだから、そんなに神経過敏になる必要はないかも知れない。

 頭でも打ってないといいが、猫だし大丈夫だろう。

「え?やだ~。サンマの匂いにでも釣られちゃったのかしら」

 おいおい、合ってたよ。

「あ、今日はサンマなんだ。お昼食べるの忘れちゃったから、今から楽しみだよ」

「え、そうなんだ。なら、早めに夕飯にするようお母さんに言おうかしら、お父さんたちはまた遅くなるらしいし」

「そうしてもらえると、ありがたいや。あ、でも味噌汁の具にジャガイモはあまり入れないでね。あと、できればナスも・・・」

「うん。わかったわ。・・・って、好き嫌いは良くないわよ。ちゃんとみんな均等に入れます」

 ちぃ姉は少しむっとした表情で叱ってきた。

「あはは、そりゃ、ごめんなさい」

 まったく・・・と、言いながらちぃ姉は玄関から振り返って台所へ戻っていく。

 僕は、靴を脱いで玄関からあがると、ちぃ姉の後ろを少し距離を開けてついて行った。

 ちぃ姉が台所へ入る直前、僕はおもむろに玄関を振り返る。

 玄関のドアはしっかりと閉じていた。

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