第四章 強制徴税術式
「やれッ! お帰り願いなさい!」
ヨウコの金切声が合図となった。四人の黒服が、サブマシンガンの銃尻を鈍器として、あるいはナイフを抜き放ち、四方から同時にコイズミへ殺到する。
だが、コイズミは動じない。「マタイ」を右手に保持したまま、彼は予備動作なしに地を蹴った。
「……徴収、開始」
最初の一人の喉笛に、鋭い掌打が突き刺さる。男が声を上げる間もなく、コイズミは流れるような動きで二体目の腕を絡め取り、その関節を不自然な方向に跳ね上げた。骨の砕ける乾いた音が室内に響き渡る。
「な……ッ!?」
ヨウコの瞳が驚愕に見開かれる。残る二人が背後から組み付こうとした瞬間、コイズミの体が独楽のように回転した。重力を無視したような円運動から放たれた回し蹴りが、男たちの顔面を正確に捉え、彼らを壁まで吹き飛ばす。
わずか数秒。
部屋には、呻き声ひとつ立てられずに転がる黒服たちの山が築かれていた。
コイズミは乱れたネクタイを直すこともなく、静かに息を整えた。その構えは、現代の格闘技とは明らかに一線を画す、冷徹な美しさを湛えている。
「ば、馬鹿な……。私の精鋭たちが、こうも簡単に……」
椅子から崩れ落ちそうになるヨウコを見下ろし、コイズミは低く呟いた。
「古代徴税術 格闘術式・庸」
「な……なんですって?」
「古代より伝わる強制徴税術……『租・庸・調』。そのうち、労働の代わりに体で支払わせる『庸』――転じて、徴収を阻む者に肉体の苦痛をもって報いる、実力行使のための技だ」
コイズミの瞳に、冷たい炎が宿る。
「お前たちが国に納めるべきは金だけではない。その身に刻まれた罪の重さ、この術式で一分一厘残さず、叩き出してやる」
絶望に顔を歪ませるヨウコの前に、コイズミは「マタイ」のシリンダーをゆっくりと回転させながら、死神のような足取りで詰め寄った。




