第二章:血税の回収(強制執行)
爆炎とともにひしゃげた扉の向こうから、獣のような咆哮が上がった。
「ガキが、なめてんじゃねえぞ!」
「殺せ! ぶち殺せっ!」
暗闇から飛び出してきたのは、金英社が「社員」として雇い入れている、暴力団上がりの構成員たちだった。手にはバット、そして抜いたばかりのドスが鈍く光る。
コイズミは「マタイ」を構えたまま、眉ひとつ動かさない。襲いかかる先頭の男が鉄パイプを振り下ろす。その刹那、コイズミは最短距離で踏み込み、銃を握った右拳を男の顎へと叩き込んだ。
グシャリ、という嫌な音が室内に響く。
「……まだ撃つまでもない」
コイズミは冷徹に言い放つと、崩れ落ちる男の体を盾にしながら、続く二人の腹部へ鋭い前蹴りを叩き込んだ。防弾仕様の革靴が、男たちの肋骨を容赦なく砕く。
通路を埋め尽くす怒号。しかし、コイズミの動きは極めて事務的だった。まるで、書類の束を整理するかのように、無駄のない掌底と肘打ちで次々と「障害」を排除していく。
「公務執行妨害。加算税の対象になると思え」
後方からドスを突き出してきた男の手首を掴み、そのまま逆方向に捻り上げる。悲鳴が上がる間もなく、膝蹴りが男の顔面を捉えた。鮮血がコイズミの紺色のスーツに飛び散るが、彼はそれを払うことさえしない。
倒れ伏す男たちの間を、悠然と、かつ迅速に通り抜ける。
彼の目的は、このビルの最奥にある「総務部」だ。そこには、金英社が隠し持っている二重帳簿、そして海外口座への送金記録が眠るサーバーがある。
「総務部へ向かう。……邪魔だ」
正面から向かってくる最後の一人を、コイズミは「マタイ」の銃尻で一撃し、昏倒させた。
血と硝煙が混じる廊下を、コイズミの足音だけが規則正しく刻んでいく。その先にあるのは、金英社の心臓部。45億円の「未納分」を、力ずくで引きずり出すための戦場だった。




