番外夜 福神漬け大臣 VS らっきょ近衛騎士
ちょっとスピンオフ……。
――ほぼいつもこんな感じ――
福神漬け大臣は、今日も皿のはしに立っていた。
赤くて、四角くて、びくともしない。
自分から前に出ることはない。
でも、いなくなることもない。
そこへ――
ころん。
ころころころ。
ごつん。
白くて丸いものが、皿のふちに当たって止まった。
らっきょ近衛騎士だった。
つやつやで、やる気だけは多い。
らっきょ近衛騎士は、すぐに立ち上がろうとした。
でも、少しだけ転がった。
もう一度、立ち上がろうとした。
また少し転がった。
やっと胸を張った。
「ここは、カレーの皿だ。守るのは、私だ!」
言い切った瞬間、足をすべらせた。
ぐらっ。
福神漬け大臣は、すっと横に動いて場所をあけた。
何も言わず、ただ待っている。
皿は、なんとか落ち着いた。
「……前に立つなら、ちゃんと止まってください」
らっきょ近衛騎士は、ぴたりと止まった。
「止まった!」
次の瞬間、ころんと少し動いた。
「転がっています」
「……止まりながら転がっている」
「それは止まっていません」
らっきょ近衛騎士は、じっと考えた。
そしてできるだけ動かないようにした。
皿は、少し落ち着いた。
「守るって、強いな……でも、疲れるな」
らっきょ近衛騎士はぽつりと言った。
「強さは、我慢するだけじゃありません。
必要な場所では、立ち止まる勇気もいるのです」
福神漬け大臣が答えた。
らっきょ近衛騎士は少し後ろに下がった。
そのぶん、しっかり安定した。
福神漬け大臣は少し近づいた。
皿はもう、揺れなかった。
そのとき――
ぱく。
福神漬け大臣が、ゆっくり自分の位置を直す。
「今、なにをした?」
「……事故です」
「自分を食べたのか」
「ときどき、あります」
二人は同じ皿に立っていた。
形も、においも、立ち方も、ちがう。
でも、どちらも動かなかった。
そして、少しだけ分かった気がした。
守るとは、力だけじゃない。
立つこと、耐えること、そしてときどき休むことも、強さの一部だ――と。
――皿の上は、だいたいこんな感じだった。
でも、今日の二人は、少しだけ前よりかっこよく立っていた。




