第1夜 星の王様ひみつのおしごと
きらきら
星の王様は、夜になると、そっと玉座を抜け出します。
ひとりで、静かな空のすみっこへ向かうためです。
そこには、今日うまく笑えなかった人の光や、がんばりすぎて曇ってしまった小さな星のかけらが、ぽつんと落ちていました。
王様はそれをやさしく拾い上げ、指先でそっとこすり、ふうっと息を吹きかけます。
すると、曇っていた光が、すこしずつ澄んでいきました。
「言わなくていい。でも、あなたは今日をちゃんと生きたのだ。」
王様はぽつりと空に言いました。
その声は夜の奥へゆっくりと溶けていきます。
王様の胸は、ちくりと痛みました。
星を磨くたびに、その星がかかえていた気持ちが、ほんの少しだけ王様に流れこんでくるからです。
それでも王様は手を止めません。
涙のあとでも、ため息の影でも、ひとつひとつ丁寧に磨いて夜空へ返します。
――そのとき、王様の頭の上を、ぴゅんと小さな光が走りました。
王様は気づきません。
けれど、その光は、まるで王様を見つけたように、ゆっくりと軌道を変えました。
夜のおしごとを終えるころ、王様は見上げた空に静かに告げました。
「強さとは、誰にも知られぬまま積み重ねた夜の数で決まるものなのだ。」
その言葉は、今日もがんばりすぎた誰かの胸に届くように、星たちのあいだを静かに流れていきました。
星たちはきらりと光り、まるで王様の言葉に応えるように瞬きます。
王様は背すじを伸ばし、その光をじっと見守りました。
胸のいたみはまだ残っていましたが、それこそが王さまとしてのしるしなのだと知っていたのです。
そして王さまは、そっとつぶやきました。
だれかのかなしみを、そっとあたためながら歩くこと。
それが、星の王さまのほこりなんだと。




