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雪解け前の邪魔者を

作者: れじい

寒い。起きたくない。布団の中で縮こまって細やかな抵抗を始める。

でも、薄いカーテンから差し込まれる朝陽が邪魔をして二度寝することもできない。

仕方なく起き上がり、窓辺に立つ。

今日は雪が光を反射し、余計に眩しくて目を開けていられない。


部屋を出てキッチンに立つ。

まだ彼女は起きていないようだ。

朝は光が入らないダイニングはまだ薄暗い。


薬缶に水を入れ、コンロの火にかける。

戸棚からコーヒー豆を取り出し、豆をひく。


「どうしてこんなに苦いものを飲むの?美味しくないし、お茶でいいじゃない」


いつもそう言われるので、彼女がいないこの時間に飲むようにしている。

彼女のことは大切だが、この美味しさを共有できないことは寂しいと思ってしまう。

でも、それは向こうも一緒か。


ドリッパーにフィルターをセットし、お湯を注ぐ。

カップは黒茶色の液体で満たされていた。

飲むと、寒くて凍りそうな体が徐々に温まり、頭も冴えていく。


今日はどう過ごそうか。

まず、雪かきと食料の確認と、それから・・・。


扉が開く音が聞こえて後ろを振り返る。


「おはよう、グロリオ」

「ええ、おはようジオラス」


俺は寒くて凍えそうなのに、彼女は俺からしたら少し薄着に見える服装だった。


「寒くない?」


グロリオは俺の隣に立ち、冷えた薬缶に水を入れる。


「寒いわけないじゃない。あ、でも先に暖炉に火をつけた方がいいわよね」


僕がつけてもいいのだが、彼女は「これは私の仕事だから」と言って譲ってくれない。

それならもう少し早く起きてほしいと思う反面、朝のひと時を楽しむ時間が取れているのでよしとしている。


暖炉に火が灯ると、ダイニングは急速に温まる。

グロリオはお茶を入れて、俺の席の正面に座った。


「今日の予定は?」

「とりあえず、食糧庫に行けないからそこまでの雪かきと、食料の確認かな」

「グロリオは?」

「私は、この本の翻訳かな」


俺たちは未成年なので街で働いて暮らすのが難しい。

冬までは森で売れそうなものがあったら売り、冬はグロリオの翻訳活動で生計を立てていた。


「雪かき大変よね。一人で大丈夫?」

「大丈夫。それよりも頑張ってくださいね、先生?」


グロリオは片方の頬を膨らませる。


「凍えてても助けないんだから!」

俺は「はいはい」と笑いながら部屋の中に置いてあった雪かき用のスコップを手に取る。


外に出ると、思った以上に雪が積もっていた。

一面の銀世界をこれから崩そうとするのに少し罪悪感がある。


「よし!」と気合を入れてスコップを振るう。

やってもやっても終わりの見えない雪かきは本当に大嫌いだ。

手足は寒いのに、服の中は暑くてしょうがない。

なんとか家の裏の食糧庫まで道ができたが、人一人がなんとか通れるくらい狭い幅でしか雪を掻くことができなかった。


ひと段落したところで昼食を取る。

グロリオがスープとパンを用意していてくれたようだ。

疲れた体に栄養と温かさが行き渡る。


「仕事は進んだ?」

「進んだといえば進んだのだけど、ここの言葉をどう訳そうかと思って」

「どれどれ?」


そんな会話をしていると、何かの気配がした。


「ちょっと外の様子を見てくるよ」


急に立ち上がった俺をグロリオは心配そうにしていた。


「どうしたの?」

「ちょっと狼がね」

「そう・・・。」


俺は猟銃を片手に外に出た。

森の方から光る何かがこちらを見ている。

俺は迷わず、弾を打ち込んだ。


俺は狼の頭を掴む。


「困るんですよ。そんな物騒なもの持ってこられるとね」


俺の打った弾が当たった箇所から血が垂れていた。

白い雪も汚い赤色に染まっていた。


「うるさい、化け物のくせに!」


狼は生意気にも言い返してきた。

俺は狼に目を合わせようとするが、狼は目を瞑ったままだった。


「その目に焼き付けて帰ってくれ。ここには誰もいなかったと」


俺は無理矢理、狼の目を開かせた。

狼は瞳孔が開き、痙攣していたが、そのうち力無く倒れた。


俺は狼から金目のものを奪い、5、6人程度に雪をかけた。


「すごい音がしたけど、大丈夫だった?怪我はない?」

「ないよ、心配させてごめんね」


彼女とのこの生活を守りたいだけなのに、邪魔が多くて困る。


「ねえ、グロリオ。雪解け前にここを引っ越そうか。」


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