AOI 第58話
夜に久しぶりに、ちえちゃんに電話をかけた。ちえちゃんも春期講習中。お弁当を持って通っているみたい。周りは同中ばかりなので楽しそう。話をしていると、顔が浮かんできて、遠い記憶の感覚になって、懐かしくなってしまった。ちえちゃんが、
「さっちんの事、何してるかなぁって話しに出たよ。」
と、話してきた。私は、私の事などと思って、びっくりしたし少し恥ずかしくなった。
「何話してるの?」
と、聞き返すと、
「同じ塾だったら良かったのにね、とか、
さっちんの塾みんな知ってたりね。」
と、話していたみたい。ちえちゃんが、続けて、
「塾どう?」
と、聞いてきたので、
「漢字テストの居残りしてる。」
と、話したら、
「居残り?」
と、聞いてきたので、
「毎日。」
と、言ったら、ちえちゃんが笑った。それと、知らなかった事で、私が通っている塾に、何人か同中の男の子がいるらしい、私は、それを聞いて、
「えーっ。」
と、大きい声を出してしまった。名前は?と聞いたけれど、まったく聞き覚えのない名字だった。きっと同じクラスになった事なかったんじゃないと教えてくれた。行き帰りのバスでも一緒にならないし。へー、同じ中学いたんだ。制服だったら気づいたのになと思った。
「仲良くなった子できた?」
と、ちえちゃんが、少しちょっとだけ間が空いて、
「たまたま、隣に座ってきた子、1人だけね。その子も同じ中学の女の子が居ないみたい。」
と、言うと、ちえちゃんは、
「へーーー」
と、長い、へーが続いた。その長さが、少しあんまり良く思われていないのかなと感じた。なぜかわからないけれど。私は、違う話に変えようと、部活の寸劇の話をしだした。ちえちゃんは、はじめは、そう言えば、毎年やってるねと声が高くなったように聞こえた気がしたけれど、すぐに、また、へーっ、がやってきた。話が続かないっ、あっ、
「ちえちゃん、春期講習終わったら、駅前のミスド食べに行こう。」
と、口から出た。ちえちゃんは、声が高くなって、
「行く行く絶対行く、CMの食べたい。」
と、すぐに、
「私も!」
と、言った。毎日一緒に学校へ行っていた、ちえちゃんに早く会いたい気持ちと怖い気持ちがあった。別な塾に通う事に、後ろめたさを感じている。今の塾に、楽しさを感じている事にもだ。新しい事に浮き足立っている私を、見られたくない気持ちがする。一緒なら、こんな気持ちにはならなくて良かったのに。はじめにわかっていた事なのに、今まで頭の片隅にたたんであった気持ちが、また開きはじめてしまった。