第7話 バイト頑張っちゃうぞ!神様
「んー、でも私ひとりでも、意外と回れますよ!」
境内を見渡しながら、天空神は自信ありげにそう言った。
参拝客の列、掃除が必要な拝殿、事務所に溜まった書類――
普通なら人手不足を嘆く状況だ。
「……ほんとかい?」
叔父は半信半疑で、眉をひそめる。
「はい! こういうの、得意なんです!」
にこっと笑いながら答える天空神に、叔父はしばらく考え込んだ後、困ったように頭を下げた。
「いやぁ~、助かるよ。ありがとう、宙さん!」
「待ってください!」
その空気を切り裂くように、來人が声を上げた。
叔父の前に一歩踏み出し、必死な表情で訴える。
「その量をひとりでこなすなんて、無理があります!」
「それに、人件費がかかるからって、他の人を雇わないのはやめましょうよ!」
額にうっすら汗を浮かべ、食ってかかるような勢いだ。
その様子を見た天空神は、ふと何かを思い出したように目を瞬かせた。
そして――何も言わず、突然動き出した。
「見てください、叔父」
「……ほう」
叔父が驚いたように目を見開く。
天空神は箒を手に取ると、境内を軽やかに駆け回り、落ち葉や砂埃を瞬く間に片付けていく。
動きに無駄がなく、足取りも軽い。
掃除が終わるや否や、今度は事務所へ。
帳簿を確認し、書類を整理し、参拝客の呼び声が聞こえれば即座に売り場へ向かう。
「いらっしゃいませ〜。お守りはこちらですよ」
笑顔を絶やさず、会計も説明も完璧だ。
その速さに、來人は口をあんぐりと開けたまま固まっている。
「……なんということだ……」
叔父は思わず呟いた。
「神職歴二十年、完敗じゃ……」
「たしかに……」
來人は唖然としたまま、天空神を見つめる。
「あの子がいれば、他の人いらないかもしれない。なんだ、あのスピードは……」
⸻
「どうでした?」
一日の業務を終え、天空神が首を傾げて聞く。
「ありがとうございます! 師匠!!」
叔父と來人が、ほぼ同時に深々と頭を下げた。
その日から二人は、天空神のことを
**「師匠」**と呼ぶようになった。
⸻
翌朝――
「おはようございます、師匠……って、あ! 翔くん!」
境内で聲をかけられ、翔はきょとんとする。
「え? あの人、なんで神様のこと“師匠”って呼んでるの?」
「神様、何かしたの?」
「んー……わからん」
天空神は首を傾げるだけだった。
師匠と言われるのはちょっと嬉しい天空神であった。




