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第6話 天空神さん、、赤点です

「タイトルにもある通り、私は赤点を取りました」


天空神は机の前に正座し、両手を膝の上に揃えたまま、やけに改まった口調でそう言った。

目の前には、答案用紙が何枚も並べられている。赤ペンで書かれた数字が、やたらと目に痛い。


「タイトルって……」


翔は半目になりつつ、答案を一枚ずつめくった。

思わず額に手を当てる。

回答用紙はまるで失点のパーティ会場。点数で胃が痛くなるほどに酷い。


「国語15点、数学I23点、数学α22点、地理85点、歴史83点」


なんとも偏りが酷い点数を翔は読み上げた。


「それより復習しよう。社会は赤点取らなかったけど、それ以外は全滅なんだからな」


「はーい……」


返事は素直だが、天空神の声は明らかに元気がない。

肩も心なしか落ちている。


「神様って、社会は得意なのか?」


「なんで?」


不思議そうに首を傾げる天空神に、翔は答案を指差した。


「いや、てっきりギリギリ四十点くらいだと思ってたんだけどさ。地理も歴史も八十点台だったろ?」


天空神は一瞬きょとんとした顔をした後、少しだけ胸を張る。


「……そうなの?」


「そうなの、じゃない。これはちゃんと伸びるぞと思ってな」

(たしかこいつ重力と天気を操るんだっけか?もしかしたらそれでかもな)

翔の声は、いつもより少しだけ柔らかかった。


「伸びる……?」


「ああ」


翔は小さく頷き、真っ直ぐ天空神を見る。


「決めた。神様は一個ずつマスターしていこう。ゆっくりでいい。ちゃんと伸びるさ」


その言葉が胸に響いたのか、天空神の瞳が一気に潤んだ。

唇が小さく震え、感情をこらえるようにぎゅっと拳を握る。


「翔……ありがとう!!」


声が裏返り、今にも泣き出しそうだ。


「そういえば翔テスト大丈夫だった?」


「神様に邪魔されたぐらいで俺が順位落とすとでも?もちろん今回は3位だぜ」


翔は4徹し、そのまま学校に登校したのだ。

翔があんなに焦っていたのは応用問題などを想定した模擬テストで7割しか取れなかったからである。当日ネガティブの化身みたいな言葉と態度はテストへの緊張と連続徹夜が招いた極限状態だったからである。通常前日には精神を安定させるために10時間睡眠を撮るのだが今回は徹夜で挑んだのが原因でもある。


しかし今回のほとんどが想定より簡単だったため翔は自信を取り戻した。


「へーすごいね!」


キラキラした天空神の眼差しが翔に降りかかる。

しかし翔はふと壁の時計に視線を移した。


「……そういえば今日、バイト十時からだろ? 行かなくていいのか?」


一拍置いて。


「えっ……」


天空神の顔色がさっと変わる。


「わああ! 本当だ!」

「遅れちゃう〜! でも勉強〜〜〜〜!!」


立ち上がって右往左往し始める天空神。

感情の振れ幅が大きすぎる。


「勉強なんて、いつでも教えてやるよ」


「……!」


天空神はぴたりと止まり、ぱっと振り返る。


「ありがとう!」

「じゃあバイト行ってくるー!!」


勢いよく部屋を飛び出そうとした、その瞬間。


「ちょっとちょっと! 天空神ちゃん、これ!」


翔の母が慌てて声をかけ、包みを差し出した。


「うちの正式な巫女服よ。今日、叔父さんから届いたの!」


白と赤を基調とした巫女服が現れた瞬間、天空神の表情が一気に輝く。


「翔母! ありがとう!」


服を広げて、くるりと一回転。


「なかなか似合ってるじゃない? 可愛いわよ〜」


「ありがとう翔母!!」


なぜか始まる即席ファッションショー。

翔はその光景を呆然と眺める。


「……盛り上がってるところ悪いんだけど、そろそろ行ったほうがいいんじゃないか?」


気まずそうに言うと、天空神はようやく我に返った。


「あっ、そうだった!」

「行ってきまーす!!」


慌ただしい足音が遠ざかり、家の中が一気に静かになる。


「……なんか、一気に静かになったわね」


翔の母が、少し笑いながら呟いた。




◇ ◇ ◇




「来ました! 叔父さん!」


境内に響く明るい声に、叔父が顔を上げる。


「やあ、(そら)さん。巫女服、気に入ってもらえて嬉しいよ」


「その子、新人?」


隣に立っていた青年が、少し距離を取りながら声をかけた。


背は高く、体つきは細身。

黒髪に落ち着いた茶色の瞳をしており、全体的に控えめな印象だ。


「そうだよ。少し前から働いてくれてる宙さん。高校二年生だ」


「よろしく」


來人が軽く頭を下げる。


「よろしく! 名前なんていうの?」


「三成來人だよ」


「來人くんか! それじゃ、質問してもいい?」


「なに?」


「私以外の巫女さん、いないの?」


その瞬間、來人の表情が曇った。

視線が一瞬泳ぎ、言葉に詰まる。


「……あ、うん」


叔父も同時に目を逸らす。

境内に、重たい沈黙が落ちた。


「……実はね」


叔父は小さく息を吐いてから話し始める。


「最近ここで働いてた巫女たちが、みんな辞めちゃったんだ。食中毒や事故、病気が続いて……“ここは不幸が来る”って噂になってね」


言葉の端々に、疲れと寂しさが滲んでいる。


「ちなみに……何人?」


天空神が気まずそうに質問すると、叔父が口を開けた。


「十人。巫女だけでね」


天空神は目を見開き、言葉を失う。


「じゅっ……十人!? そんなに一気に辞めていったんですか!?」


口を開けたまま固まる天空神。

來人は頭を掻き、叔父は遠くを見るような目をしていた。


「早く新しい子を見つけないと……!」


來人の声には焦りが滲む。


「……來人」


叔父は考え込むように、その言葉を受け止めた。


「早く見つけてしまえばいいのに……」


――おっと、失礼。

これは天空神の心の声だった。


過去1週間天空神が無意識に行っていた妨害行動集。

※全て翔の自室で行われています。

くしゃみで翔のシャーペンへし折り。

翔が勉強している横で聖夜神との大喧嘩。

翔が数学の勉強中に天空神が国語の質問をして集中力を妨げる。

翔に消しゴムバトルを仕掛けてくる。

大声で歌う。

聖夜神がせんべいとチップスをバリバリ勉強している翔の隣で食う。

室内で大音量でJPOPを流す。

くしゃみすると風圧が発生してプリントが全部飛ぶ

天空神が考え込むと天井が明るくなり、眩しくて文字が読めない。

翔が集中し始めた瞬間に「ねえ翔、今の私、賢そうじゃない?」って話しかける。

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