第4話 勉強する神としない神
中間試験まで、あと一週間。
神名翔の家――ごく普通の一軒家のリビングには、
教科書やノート、プリントがこれでもかというほど広げられていた。
テーブルの上はもちろん、床にまで資料が散乱している。
その中心で、天空神が腕を組み、珍しく真剣な表情で問題集を睨んでいた。
人間界で学生として生活する以上、
彼女もまた中間試験からは逃れられない立場にある。
「なあ神様、ちょっとはちゃんと勉強しろよ」
ソファに座り、ノートをまとめていた翔がため息混じりに声をかける。
すると天空神は、ぱっと顔を上げ、満面の笑みを浮かべた。
「見て、翔! 今ペン回し、三回転できたよ!」
「勉強しろよ!! 試験は大事なんだぞ!!」
「まあまあ、そんなに怒らなくても……」
「てか神様!
あんた、どうやって世界創ったんだよ!
そんな知能で!!」
「ちょっとそれ失礼すぎない!?」
天空神は勢いよく立ち上がり、胸を張る。
「バカとか言うけどね、私は天界じゃ大ベテランなんだから!
そもそも世界を創ったのは、五大神として“基礎”を作っただけであって!
言語とか文化とかは、人間が勝手に作ったのよ!
私は知らなかったの!!」
「開き直りにも程があるだろ……」
その時だった。
ふすまが**バンッ!**と勢いよく開く。
「うるさいっつーの!!」
現れたのは、寝起きそのままのパジャマ姿の聖夜神だった。
髪はぼさぼさ、目は半開き。完全に不機嫌である。
「朝から勉強とか、人間くさすぎ!
神様がそんなことしてどうすんの?」
「いや、あんたも神だろ!!」
「だから言ってんの!
こんなくだらない試験で評価される世界なんて、
いっそ滅びちゃえばいいのに!」
「怖っ!!」
聖夜神はそのままソファにドカッと座り込み、
置いてあったお菓子をむしゃむしゃと食べ始めた。
「ていうかさぁ、
あんたもこの家に出入りしてないで、ちゃんと住む所見つけなさいよ」
「いや、あたし家っていうか神社が家代わりだから。
あそこの中に住んでるよ。
まあ帰るのは三日に一回だけど」
「半分住んでるじゃん……」
翔はこめかみを押さえながら言う。
「それはそれですごい図々しいけどさ……
で、勉強は? しないの?」
「一言余計ね。
するわけないじゃん。
そもそも私は学校行ってないし、
神に学力なんて必要ないし!」
「へぇ……」
天空神がにやりと笑う。
「負けるのが怖いんでしょ?」
「は? 何言ってんのよ。
あんたこそ必死すぎるでしょ!」
「だって、これで私の方が頭良かったら――」
天空神は胸を張り、得意げに宣言した。
「神としても!
人間としても!
とっても優秀だもんね〜!!」
「はぁ!?」
こうして翔は、
二柱の神による幼稚な張り合いに毎日のように巻き込まれ、
勉強どころではない日々を送っていた。
その夜。
勉強の合間、天空神が小さくくしゃみをすると、
聖夜神の体がふわりと宙に浮いた。
「ちょっと天空神!
あんたのくしゃみで人が浮くのやめなさいよ!」
「ごめんごめん。
でも、少しは緊張感持てってことかな?」
「うるさい!!」
家の中は、今日も相変わらずにぎやかだ。
翔は呆れたように肩をすくめながらも、
この騒がしくて騒がしくて――
それでもどこか温かい日常に、
小さな幸せを感じていた。
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