第28話 マリネ
「ねぇ、リュミエ。さっきからずっと何か気にしてるみたいだけど……何か困ってるの?」
聖夜神が木の根に腰かけながら尋ねる。
すると水色の髪を揺らしながらリュミエは少しだけ迷ったように俯いた。
そして、小さく息をつく。
「……うん。本当は、森がどんどん弱ってるんだ」
「森が?」
俺と天空神が同時に声を上げる。
リュミエは真剣な表情で、木の枝に止まっていた青い蝶を指さした。
「“マリネ”っていう蝶の形をした化け物がいるんだ。
見た目は普通の蝶とあまり変わらないけど……あいつは森の養分を吸い取って生きてる。
花も、木も、水も、みんなあいつに食べられて、枯れていく」
「そんな……蝶が森を食べるなんて。でも聞いたことあるわ」
天空神が目を見開く。
「え?」
翔とリュミエがこちらを見た。
「今よりはるか昔蝶の化け物によって世界の森が壊され。この世界に森が無くなってしまったの」
「そんなことが、、、」
翔が驚いてるのも無理は無い。とても恐ろしい化け物だ。
「それにね、マリネが現れる前には、決まって“すごく大きな泣き声”が聞こえるんだ」
聖夜神が腕を組み、真剣な目でリュミエを見た。
「なるほどね……その“泣き声”が合図ってわけか」
「うん。森の奥からいつも聞こえるんだ。まるで誰かが泣いてるみたいに……」
リュミエの声は小さく震えていた。
「なぁ、それっていつ頃からなんだ?」
翔が尋ねると、リュミエは少し黙っていた。
「リュミエ大丈夫だ。俺たちを信用したくなけらばしなくてもいい。だけど教えてくれお前を助けたいんだ!」
「……200年前。あの日からこの森の木々が一気に枯れ始めたんだ。ぼくの仲間も、その時の泣き声を聞いたあとで――消えちゃった」
空気が一瞬、ぴたりと止まる。
聖夜神がそっとリュミエの肩に手を置いた。
「……もう大丈夫。私たちが来たからには、森を元に戻してみせる」
「本当……?」
「もちろん! 泣かせるヤツは私が泣かせ返すわ!」
どこかズレた聖夜神の発言に、翔が苦笑した。
「いや、物騒な言い方すんな神様……」
リュミエが思わず笑い、少しだけ表情が和らぐ。
けれど次の瞬間――
――“ウォォォォォォォォォォォォォォ……”
森の奥から、空気を震わせるような大きな泣き声が響いた。
「何この空気!!重いぃ、、」
翔は反射的に立ち上がる。
「……これが、マリネの泣き声か」
リュミエが青ざめた顔で頷く。
「うん……きっと、またどこかの木を……」
「行くぞ、翔!」
天空神が手をかざし、光の粒を集める。
「了解、神様!」
こうして――
森を喰らう蝶“マリネ”との戦いが、静かに幕を開けた。1つの疑問を残して。
リュミエは中性的な男の子です。




