第26話 旅行
「翔!!ただいまー!」
元気よく玄関の扉を開けると、翔がこちらを振り返った。
「大丈夫だったのか?」
「うん!なんでもなかったみたい!」
安心したように微笑むと、翔がふっと真剣な顔になる。
「ちょうどいいな」
「? なにが?」
「忘れたのか? 明日から夏休みだぞ」
「えぇ! 夏休みぃ!?」
思わず声を裏返す。
⸻
その頃、天界――。
緊急会議の場には重苦しい沈黙が流れていた。
「……どうしますか? 天空神に、やっぱり知らせるべきでは……」
進言した平和神の声は震えている。だが上座の神は首を横に振った。
「いや、まだだ。いきなり真実を告げれば、混乱を招きかねない」
低く重い声が広間に響く。
すると、別の神が机を叩きつけるように声を荒げた。
「……くそっ、あの野郎め!」
水晶玉がかすかに揺れ、さらに場の空気は沈んでいく。
会議に集った神々は、誰もが理解していた。
――事態は、もう後戻りできない。
⸻
「どこか行きたいところとかあるのか? バイトもあるだろうけど」
翔が訊ねてくる。
「アトランティス!!」
「……すぅぅぅ。ごめん神様、それは無理かもしれん」
「なんで?」
「アトランティスって幻だろ?」
「何言ってるの? アトランティスはアトランティスランドのこと! 天界で大人気の遊園地だよ!」
「んー……でもそれ、天界だろ? 俺は無理そうだわ」
「じゃあここがいいな!」
「……たしかそこって、白神山地?」
「そーなの! 天界で今めちゃくちゃ話題なの! とっても幻想的なんだって!」
「じゃあそこに行こう。日程を決めような」
「うん! 翔は大丈夫なの? 学校とか」
「安心しろ、俺は帰宅部だ」
「もったいないわねぇ」
突然、背後から声がして振り返る。
「うわーっ!! びっくりした! 聖夜神じゃん!」
「白神山地に行くのね」
「うん!」
聖夜神はふっと目を細めた。
創造神の言葉を思い出す。
――天空神がこの街を離れる時、必ず護衛を一人つけろ。それを君に頼みたい、聖夜神。
「しょうがないわね。私も着いて行ってあげる」
「おー」
「なんだそのやる気ない返事は!」




