第24話 核
ピンク髪の堕天使――メアが、狂気を帯びた瞳で天空神を睨みつける。
「核の……お前さえ殺せば……! 私は……生き残れるのよ!!」
血走った視線。
言葉に滲むのは使命感ではなく、ただの恐怖。
天空神は眉をひそめる。
「核……って、どういう意味だ?」
「……言うな!」
頭の奥に直接響く声。
さきほど失神していたはずの融合堕天使の片割れが、意識だけで制止した。
「メア。余計なことを口走るな」
「でも……でもっ! もう限界なのよ! 私が殺さなきゃ……処分される!!」
「……処分?」
天空神はわずかに目を細める。
言葉の端々から浮かぶのは、敵の“焦り”。
(処分される恐怖に縛られている……?
じゃあ背後にいるのは……こいつら以上の存在だ)
メアは、追い詰められたように叫んだ。
「あなたは――この世界の核なの!!
地球が一度滅んだとき……最後に残った人間!
その魂を創造神が拾って……新たな世界の中心に据えた!
だから……あなたを壊せば……!」
「……!」
一瞬、頭の奥に鋭い痛みが走る。
霞む視界に、遠い記憶がフラッシュバックする。
瓦礫に埋もれた街。
ひとりだけ残された少女の影。
(……あれは……私の前世……?)
だが考える間もなく、メアが絶叫しながら突っ込んでくる。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
黒い翼が刃となり、天空神の胸を貫こうと迫る。
――その瞬間。
「やらせるか!」
横から光の奔流が走った。
平和神だ。
彼の放った光壁が、堕天使の突撃を防ぐ。
「天空神さん! 今の話……本当なんですか!?」
「……分からない。だが……あの女の目は嘘をついてなかった」
「じゃあ……本当にあなたは、この世界の核で……?」
天空神は血を拭い、低く笑った。
「確かめるのは後だ。今は――生き残る方が先だろう」
堕天使メアの瞳は、もはや正気を欠いていた。
「殺さなきゃ……殺さなきゃ……!
そうしないと……“あのお方”に……殺される!!」
その言葉に、平和神と天空神の背筋が同時に凍りつく。
(“あのお方”……? こいつらを捨て駒に使い捨てる黒幕がいる……!)




