第14話 騎馬戦編
ねー私の事忘れてない?(聖夜神)
「翔! 作戦会議開始!!」
昼のチャイムが鳴り終わるのとほぼ同時に、
グラウンドから戻ってきた俺の耳に、その声が突き刺さった。
「え、まだ昼休み入ったばっかじゃ……」
汗を拭く暇も、水を飲む暇もない。
運動会当日特有の、落ち着きのなさと高揚感が、教室の中にまだ残っている。
窓の外からは、
他クラスの応援練習の声、
笛の音、
スピーカーのテスト音が断続的に聞こえてくる。
そんな中で――
「作戦会議に早すぎるはない!
体育祭は戦争よ!」
妙に説得力のある言葉とともに、
俺はクラスメイトたちに囲まれ、教室の隅へと連れて行かれた。
そこは、
弁当を食べる生徒たちの喧騒から少し外れた場所。
だが、集まっている顔は全員、本気だった。
「まず今回の作戦は――
**“翔特攻型”**でいきます!」
誰かが宣言すると、数人がうなずく。
「……なんだその嫌な名前」
嫌な予感しかしない。
「翔が上に乗って、大将の帽子を直接奪う!
前に回り込んで、正面突破よ!」
「いやいや俺、そんなアクティブな役向いてねぇから!」
即座に声を上げるが、
「なに言ってんの!
翔はまぁ運動神経いいだろ!?」
「理論が雑だな!?」
午前中の競技での印象だけで、
人の能力を勝手に決めないでほしい。
だが、俺の抗議をよそに、
作戦はどんどん具体化していく。
誰かがノートを開き、
誰かが指で配置をなぞりながら説明する。
・後衛(騎馬の足)
→ 男子3人の筋肉トリオ
(汗だく、声でかい、頼もしさだけは満点)
・前衛
→ 身軽な女子2人
(なぜか天空神が混ざっている)
・上に乗る大将
→ 翔 + モブ男子
← 自然な流れで決定
「ちょっと待て!?俺、もう確定なの!?」
「今さら変更不可でーす」
「午後はもう騎馬戦だからねー」
運動会当日の“今さら感”が、
容赦なく俺の逃げ道を塞ぐ。
「敵は2組Aチーム。練習で、かなり強かった……」
誰かが声を落とす。
「相手の大将、剣道部のエースらしいよ。腕力、ガチでヤバい」
「正面からは無理だな……」
一瞬、空気が引き締まる。
「だから裏をかこう。翔、左右にフェイント入れて、一気に斜め上から帽子を狙え!」
「いや、できるかな、それ……」
炎天下、汗だくの状態でやるには、
難易度が高すぎる。
「できるできる!翔ならいける!信じてる!」
心配しかない三段構え。根拠はない。でも、その期待だけはやたらと重い。
昼休みの残り時間が減っていく中、
作戦会議は半ば強引に終了した。
⸻
そして午後。
太陽はさらに高くなり、
グラウンドの土は白く乾いている。
全学年の視線が集まる中――
騎馬戦、本番。
神が大将なら勝てる、
そんな誰か(確実に翔)の勘違いが原因で、天空神は、
見事に罠にかかっていた。
「なんで……
私が大将なの!?」
その声には、
遅れて気づいた理不尽さと、
全力で納得していない神の感情が、
これでもかというほど詰まっていた。
ふっざけんなよ!?誰だよ!!推薦したやつ!翔か!?翔なのか!?呪うわ(天空神)
※神ですよね?




