第12話 借りたのは過去の欠片
開会式が終わり、校庭に歓声が戻る。
翔は応援団の列の中に立ちながら、遠くにいる花登と陽の姿を見つけていた。
視線は合わない。交わす言葉もない。
──でも、あの頃は3人で並んで笑ってたんだよな、なんて。
翔は胸の奥が重くなるのを感じていた。
「翔!次、借り物競走だって!走者に選ばれてたぞー!」
中村の声に肩を叩かれ、我に返る。
「うそだろ……!?俺、よりによってアレかよ!」
配られたカードには、信じがたい文字。
『ケンカ中の友達を連れてこい』
「……は?」
先生が言う。
「借り物競走の“変則枠”!カードの指示どおりに人を連れてこい!」
ざわつく生徒たちをよそに、翔はトラックを飛び出して走り出す。⸻
最初に向かったのは、花登。
「花登!悪い、競技でお前が必要なんだ!」
「……俺は出る競技じゃないけど?」
「“借り物”って書かれてたんだよ……『ケンカ中の友達』ってな」
翔は真正面から花登を見据える。
花登は一瞬、目を伏せた。
「……クソみてぇなカードだな」
それでも、無言で立ち上がる。
翔と並んで走りながら、今度は陽を探す。
「陽!」
「……今、俺を呼んだ?」
「そうだよ。お前も“借り物”対象だ」
翔がカードを見せると、陽は皮肉っぽく笑う。
「教師もイベントも……残酷なほど、空気読まないね」
「でもさ……このまま、ずっと無視したままでいいのかよ」
陽は黙っていたが、翔と花登が並ぶその姿を見て、わずかに表情をゆるめる。
「……わかったよ。走るだけなら付き合ってやる」
⸻
そして、3人で走る。
ぎこちなく。誰も何も話さない。
けれど、観客席の生徒たちはざわつき始めていた。
「え、あの3人って……?」
「最近口きいてなかったよね?」
「仲直りしたの……?」
ゴールが近づいたとき、翔がバランスを崩す。
リュックの重さと、緊張で足が絡まった。
──そのとき。
「バカ、しっかりしろよ!」
花登が腕を引き、
陽が肩を支える。
そのまま3人、勢いそのままゴールイン。
一瞬、歓声と拍手が巻き起こった。
「……助かった」
翔が小さく言うと、花登はそっぽを向きながら、
「お前、昔からドジなんだよ。そういうとこ変わってねぇな」
陽も苦笑して言う。
「そうやって自分1人で何とかしようとするの、昔からだよな。……変わらないな、翔は」
その言葉に、翔は少しだけ笑ってうなずいた。
3人の距離が、ほんのわずかに近づいた──そんな気がした。
「そういえばあのカードって誰が書いたんだろうね?」
「確かにー委員会の人しか書いてないんでしょ?あれは半分反則みたいなもんでしょー」
ザワザワしている人集に天空神はにやりと口角を上げたのだった。
お気ずきだろうか。
そうです箱に入れたのは天空神です。
神力で紙ごと箱の中に瞬間移動させました。
そして翔に取らせたのも天空神です。
1本やられましたね




