第1話 神様人間界に飛ばされる!?
週2.3回更新予定です。
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「……は? お前、五大神やめたいって?」
天上の宮殿に、創造神の呆れた声が響いた。
五大神——。
それは、5000年以上前から存在する太古の神である。
創造神:この世界を創った神にして、五大神の頂点。
天空神:重力と天気を操る神。
聖夜神:魂を統べる神。
大地神:自然の息吹をつかさどる神。
平和神:争いを鎮める神。
天界には、神と天使しか存在しない。
だが、「神」と呼ばれるのはこの五人だけだった。
「……はい、ちょっと……」
銀色の瞳を伏せながら、小さく答えるのは天空神。
「(この私と肩を並べるほどの力を持ちながら、彼女はどこか浮世離れしている。)
ふむ……ならば、“浮世”に行ってみるのはどうだ?」
創造神が神妙に呟く。
「君が五大神から抜けたら、浮世へ送る神力が足りなくなって、世界のバランスが崩れる。
それなら、いっそ今の崩れる前の世界を一度“見届けてから”でも遅くはないだろう。きっと浮世には何か壊したくない物が見つかるかもしれないぞ」
「え、えぇぇーーー!?いや私は別に人間界なんて、!」
「じゃ、行ってきなさい」
「え、ちょっ……ギャァァァァァァ!!!」
空から突き飛ばされた天空神の叫び声が、天界中に響き渡った——。
⸻
「ここ……どこだよ。適当なとこ飛ばしやがって……創造神めが」
創作神にこんなことを言えるのは、天空神だけだ。
「(さて、まずはこの“浮世”で自立しなければならない。
というわけで、バイト探し……というのをしなきゃならないらしい……)」
そのとき、近くの広場から騒がしい声が聞こえた。
「ん? なんか騒がしいな……おわっ!」
目に飛び込んできたのは、男子高校生同士の殴り合いだった。
——20分後。
騒動は収まり、それぞれが解散したようだ。
その中のひとり、傷だらけの男子生徒が、こちらに近づいてきた。
「うるさくして、ごめんね」
天空神は驚いた。
なぜなら、自分の存在が“視える”人間など、もういないと思っていたからだ。
(私が視えるとはな、、、なにか特別な血筋の持ち主か?)
顔にはいくつもの痣。鼻血もにじんでいる。
拳の痛みより、何かに耐えているような……そんな表情だった。
「お前、大怪我じゃないか。手当てしてやるよ」
そう言って、天空神はテキパキと動き出した。
「なんで喧嘩したんだ?」
彼の問いに、男子生徒はぽつりぽつりと語り始めた——。
⸻
その喧嘩は、単なる口論ではなかった。
そこには、深い感情のもつれと、長年積み重なった想いがあった。
翔と花登、陽は幼なじみで、幼いころから一緒に遊び、学び、たくさんの思い出を共有してきた。
でも、成長するにつれ、互いの考えや価値観がズレはじめた。
翔は「ずっと仲良くいたい」と願っていた。
花登は「妥協は成長を妨げる」、陽は「自分の正しさを認めてほしい」と譲らなかった。
意見の衝突が積もりに積もって、ある日ついに爆発。
翔は仲裁しようとしたが「どっちの味方だ」と責められ、結果的に孤立してしまった。
「……よくある話だな」
天空神はぽつりと呟いた。
「お前、名前は?」
「翔だよ。神名 翔。……手当て、ありがとう。なにかお礼、させてくれないか」
天空神は少し考えたあと、遠慮がちに答えた。
「……バイト探してるの」
「バイト? えっと……君、何歳?」
「16……(ってことに、しとこう)」
「それなら、ちょうどいいとこがあるよ。
うちの親戚が神社やってて、母さんが神社で仕事しとるんだ。今ちょうど巫女を募集してるらしいから働いてみたらどうかな?」
「巫女? ……待って、その神社の名前は?」
「矢原神社」
「そこって……まさか、アイツが祀られてる神社じゃない!?」
少し間を置いたあと、天空神は心の中で強く叫んだ。
「……でも、こんなチャンスめったにない! よし、行く!!」
——この間、1秒。
⸻
翔に連れられて神社に向かうと、そこには見知った姿があった。
「は? なんであんたがここにいんのよ、クソ女」
「こっちのセリフだよ。五大神の仕事ほっぽり出して、こんなとこに……」
この毒舌ぶり。間違いない。
「てめぇ……聖夜神か!!」
「そうよ、バカ女!だいたい仕事ほっぽり出してた訳じゃないわ!暇つぶしよ!」
「はぁ?ふっざけんな誰がお前の分まで仕事やってたと思ってんだよー!!」
天空神と聖夜神。
天界では“犬猿の仲”として有名なふたりである。
「おいおい……君たち、何者なんだ?」
戸惑う翔に、聖夜神がに言った。
「あ!翔久しぶりー!あぁこいつ?私と同じ五大神ー!ほんと嫌になるわー!」
「……って、おいこら!! いきなりバラしやがってこの野郎!!」
天空神は聖夜神の胸ぐらを掴んだが、もうごまかす余地はない。
彼女はゆっくりと、その名を口にする。
「私は天空神」
その瞬間。
彼女の物語は“ただの人間界滞在”では終わらなくなった。
——これは、巫女として働きながら
“壊したくないもの”を巡る、神様と不器用な少年との
いつか笑い話になる思い出のお話
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