無明の闇へと至る分析
「お前は苦労なんてしたことない」
そう決めつけたのは昭和に生まれたことを宣う人
しかし、彼は気づけない
誇りに溺れていることに
「苦労してきた年数が違うのだ」
倍以上に離れた年をどうやれば埋めれるのか
どうやっても埋められないのは自明だろうに
「仕事なんてつまらない」
それは、熟練する努力を怠ってきたからじゃないのか
「こんなところは嫌だ」
自分の人生の主人に
楽してなろうとするからだ
そのための努力を払わないものが
自分の人生の主人ではなく
奴隷として生きている
「オレは悪くない。あいつが勝手にやったことだ」
舌の誤用をして、他人の心を傷つけていることを
なぜ無視するのか
「そんなものあるわけない」
古来にして偉大なる詩人の言葉を知らないのか
――邪悪な者はごう慢さゆえに調べようとしない
――邪悪な者は苦しんでいる者の後を追う
――邪悪な者は利己的な願望で自らを賞賛する
――邪悪な者のが歩む道は栄える
――邪悪な者のその舌は難儀と有害とに満ちている
――邪悪な者の腕はついには折られる、と
宣い溺れ逃げ出した者に
当てはまっているのは
どういうことなのだろうな
それらの言葉から弾き出される未来は
邪悪な者は腕を折られることが許されているのであり
栄光が無くなるということだ
切られた縁は再び繋がることはない
いくら繋げようとしても徒労に終わる
勝手に切って勝手に繋ごうとした報いではないか
「オレの未来は安泰だ」
心にて歩む道は照らされていると思うのか
歩んでいる本人ですら
思いがけないことで苦難に合うものだ
望むも望まざるも
暗闇は嬉々として呑み込もうとやってくる
誰も逃れることすらできないんだよ
例外など存在しない
「………………………」
どうやら刈り取られたようだ
邪悪な果実はかじった瞬間は甘く感じても
食べていくうちに苦味を強く感じていくもの
そのような果実を誰が食べたいと思うのか
その反面、善良な果実は
かじった瞬間も食べ続けても
甘く感じて美味いもの
人はみな、善良で満ちた甘い果実を食べたいものだ
自らを驕ったとしても
甘い果実にはなれないものさ
――さて、これらの散文を読んだ方々はどう思ったのかなんて
書き手は知らないものだ
勝手に推理することはできるが
わざわざ無粋を述べることはないだろう
まぁ驕り宣った者の行く末なんて
聞きたいとは思わないだろう
なに、興味があるのかね
仕方ない、なら語ろうか――
信じていたものが真実に覆され
ごう慢さがもたらした恥辱をその身に受け
新たな地からも優越から来るコンプレックスゆえに
排された容赦による言葉の刃に差し突かれる
自らが重ねてきた業のゆえに
その報いを苦さとともに刈り取るしかないのだから
上手く生きてきたつもりでも
積もりに積もった邪悪さが滲み出て
無明が支配する暗闇に
引きずり込まれて救いはない
不敬な態度を脱ぎ捨てていたなら
そのような報いは受けなかったであろうに
本当に残念なこと
されど、それを選択していたのは
彼自身に他ならない
それが分析し推測された事実
推測であるがゆえに外れることがあるだろう
しかし、すべては積もり積もった業
それを重ねていくか
心を入れ替え、脱ぎ捨てるか
その二つしか道はない
無明の暗闇の奥底へと堕とされたなら
炎に燃え盛る硫黄の輝きが
苦痛とともに照らすまで
盲目の内に歩むしかないのだ――
《終》